368話
凛達は走りながらも迫って来る魔物達を最低限だけ相手にしながら2分程進み、凛が後ろを見て溶岩が付いて来なくなったのが分かった為、皆に走るのを止める様に伝える。
「…あー、びっくりした。けど結果的に、中々スリリングな体験になって楽しかったね。」
『(こくこく)』
「…すまなかった。」
凛がそう話した事で皆から頷いて返事をされるのだが、火燐が申し訳なさそうな表情で謝罪した為、少しの間皆で火燐を慰めていた。
凛達はそれから5分程進むと、ソルヴェー火山の中程に進んだ様だ。
それまであった岩の道が途切れ、直径10~50メートル程の足場が辺りにぽつりぽつりとある位で残りは溶岩となってしまった。
そして魔物達も強さが増し、魔銀級の業火龍や、ファイアリザードが進化して炎を纏った鱗を飛ばせる様になったボルケーノリザード、ファイアバードが進化して青い炎となったブルーフレイムバード、クリムゾンスライムが進化して土属性が加わったマルーンスライムが現れる様になる。
それと、遠くで溶岩の表面を跳び跳ねていたり背鰭が見えたりするのだが、それらはボルカニックモーレイやボルカニックイール、ボルカニックボニート、ボルカニックシャークだった。
いずれの魚も6~10メートル程の大きさだったが、どうやらこの世界の魚は海だけでなく溶岩を泳ぐ種類もいる様だ。
魔物達は凛達に気付いて襲い掛かって来たのだが、今までは主に足場の上や空中で戦っていたのと変わり、空中や溶岩の中から攻撃を仕掛けると言った感じに変わった為、先程までの様に凛と美羽だけが先行して戦うと言うのが出来なくなってしまう。
凛達は戦い方を変え、ビットを最大の20基飛ばして魔物達を迎撃したり体をずらす等を行った後、美羽が指定した空間に無限収納を展開し、次々に倒した魔物達を回収していった。
「ただでさえ火山って事で難易度高いのに、周りが溶岩だらけで次の足場までが遠いって中々の鬼畜仕様だよね。」
「炎に適性があったり空を飛べる魔物とか精霊以外はな。氷や土魔法でも足場は用意出来るだろうが…数が多いこいつらを相手にしながらってのは普通だとまず厳しい。ようやく魔物を倒したってなっても、その死体の回収なんてまず無理だろうよ。」
ステラが複雑な表情を浮かべて魔物達が倒されていく様子を見ながら話すと、火燐は肩を竦めてそう話していた。
「意外な所に鰹がいた事は驚いたけど、これで鰹節を作れば和食の味が増すし、うな重とかフカヒレも良い素材の物で作れるね。」
『…!』
戦闘や凛がビットを操作して持ち上げる等して一通り作業を終えた後、凛はご機嫌な様子となってそう話した。
美羽達は凛の発言を受け、これから出て来るであろう食事に期待が膨らんだ様だ。
火燐は特に凛達の中で料理を楽しみに感じたのか、先程昼食を食べたのにも関わらず喉や腹を鳴らしてしまう。
その事で凛達の中で笑いが起き、火燐はしばらくの間恥ずかしいのを誤魔化す様にしてそっぽを向いていた。
それから少しして凛達は地上から2メートル程の高さでゆっくりと飛行する形で溶岩の上を進み始め、魔物達は次々と空中にいる凛達へ襲い掛かって来た。
そんな中、入口辺りから凛達の後方でずっと様子を見ていたファイアバードが少しづつ右方向に移動して来た為、凛はひとまず戦闘が終わったタイミングで何故付いて来るのかを念話で尋ねてみる事に。
ファイアバードは会話に不馴れな様子を見せつつ、こちらからは攻撃を仕掛けないので取り敢えずこのまま様子を見させて欲しい事を告げる。
凛はそれを了承し、再度先へ進む事に。
凛達はその後も宙を浮きながら、魔物達を迎撃して先を進んで行くのだった。




