367話
凛達は一通りワイバーンや火竜や岩スライムの回収を終えた後、そのままソルヴェー火山の中へと入る。
ソルヴェーの中は左右に広がる形で溶岩が流れてはいるが、一応先へは進める様だ。
足場となる岩の通路が真っ直ぐ正面に伸びていた。
『………。』
「すげー!火山の中ってこうなってるんだな!」
「地球のと同じかは分からないけど、きっとこんな感じなのかもね!」
『(くすくす)』
「はははは。」
「「?」」
凛達はソルヴェーの内部を見て感心した様子を浮かべていたのだが、アレックスとステラの興奮振りを見て可笑しくなった様だ。
不思議がる2人を他所に、凛達は少しの間ステラ達を見て笑っていた。
「ごめんごめん。2人を獣国にある霊峰エルミールへ案内したら、今みたいな反応を見せるのかなって思ったんだ。それじゃ、先を進もうか。」
一頻り笑った後、凛がそう言った事で一行は先を進み始める事に。
ソルヴェー火山内部は高低差や足場が飛び飛びになっている箇所はあるものの、基本的に真っ直ぐ伸びた岩の通路で出来ていた。
そして凛達の視線の先では、空中を飛んでいたり、溶岩の中や表面を川や海の様にして泳いでいる魔物の姿が見て取れる。
それらは空中を飛んでいる火竜とは別に、同じく金級の強さで常時炎を纏っている蜥蜴のファイアリザードや鳥の姿をした炎のファイアバード、スライムから銅級のレッドスライムを経たクリムゾンスライムだった。
それらを凛と美羽の2人が先行して炎系と水系以外の魔法を使い、魔物達を迎撃しながら先を進んで行った。
そのまま凛達は3分程ゆっくりと進むと、今度は少し広い場所の真ん中にいる、赤熱した赤い岩の様な塊に遭遇する。
その岩の様な塊はラーヴァゴーレムと言って、火鉱石を多く含む溶岩で出来た魔銀級の魔物だ。
しかしラーヴァゴーレムは現在待機状態にあるのか、10メートル程ある体を体育座りの様にしてコンパクトに纏めていた。
「…襲って来ないね。」
「通るのにちっと邪魔だが、わざわざ刺激してまで倒す程じゃないしな。警戒しつつ横を…ってさせるかよ。」
凛達は近付いたら動き出すかもしれないと判断したのか、ラーヴァゴーレムから2メートル程前の位置で少し待ってみる事にした。
しかし10秒程経っても動く気配がなかった為、凛が首を傾げながらそう話す。
火燐はふんっと鼻息を荒くした後、そう言いながら試しにラーヴァゴーレムの右へと移動してみる事に。
するとラーヴァゴーレムが頭を上げて右腕を伸ばして来た為、火燐はその腕を掴んだ後に軽く振りかぶり、そのまま100メートル程先の位置にラーヴァゴーレムを投げ飛ばした。
ラーヴァゴーレムは放物線を描いた後にドポォォォンと音を立て、その巨体を溶岩の中へと沈ませていった。
「…ったく、油断も隙もありゃしねえぜ。」
「…火燐。ゴーレムを投げ飛ばしたって事はさ、今発生した溶岩の波みたいなのがそのままこっちに来るんじゃ…。」
「…あ、やべ。」
そして音だけでなく(ゆっくりではあるが)波も立ててしまった為、少し苛立った様子の火燐以外の面々はラーヴァゴーレムが飛んで行った方を見ていた。
火燐は腕を組んで明後日の方向を向いて文句を言うのだが、凛が少しづつ近付いて来る溶岩を見ながら困った様子で話し、凛の発言で火燐は不味いと言いたそうな表情になる。
「皆、走れぇぇぇぇ!」
火燐がそう叫んだ事で凛達は焦った表情となり、一斉に奥へ向かって走り出した。
そしてそのまま走りながら、火燐は皆から文句を言われる事になるのだった。