365話
その頃のアレックスはと言うと、ユリウス、フィリップ、アーウィン、レイラ、朔夜、段蔵、それと昊とで死滅の森中層を探索していた。
しかし探索していると言っても皆で一緒に行動している訳ではなく、フィリップ達3人と朔夜以外は別行動を取っている。
アレックスは段蔵と、ユリウスは昊とでそれぞれペアを組んでおり、アレックスとユリウスから1キロ程離れた後方にて段蔵と昊が付いて行く形となる。
アレックス&段蔵、ユリウス&昊、朔夜達4人の3つのグループは5キロ位ずつ距離を取り、かつなるべく水平になる様にして森の中を進んでいた。
何故今回、この様な回りくどいやり方で森を進んでいるのかと言うと、骸がイクリプスドラゴンへ進化した際に得た『孤高の王者』と言うスキルを活用する為だ。
これは周りに仲間と認識している存在がいない事に加え、単独行動をしている状態だと身体能力が常時2割程上がると言う少々ぶっ飛んだスキルとなっている。
しかもその単独行動の判定は目に写らなければ良いだけと言う甘いものとなっている為、(元の状態となった骸の様に大きな魔物や空を飛ぶ魔物は多少不利ではあるが)火燐達の様な戦闘好きにはたまらないスキルの様だ。
火燐や猛は骸が凛の配下になった翌日にこのスキルの存在を知り、早速死滅の森へ向かってスキルの効果を確かめていた。
それから丞達に伝えた事で教育係の強化に充て、それから少し日が経った昨晩の歓迎会の場でアレックスへ伝える。
アレックスは火燐から話を聞いてすぐに凛の元へ向かい、翌朝ユリウスと一緒に死滅の森へ向かいたい旨を伝える。
そこを凛と話をしていた為に近くに居合わせていた朔夜がスキルについて相槌を打ち、追加でフィリップがリハビリをしたがっている事を伝える。
そして朔夜は自分達がアレックス達やフィリップを見ると告げた事で、今回はこの様な形になった。
その話をティナが少し離れた所で聞いていたのだが、自分も一刻も早く実践を行わないと、アレックスがどんどん先に行って間に合わなくなってしまうと判断し、今は死滅の森表層でリュファス達のサポートをしていたりする。
因みに、ユリウスが昊と組んでいるのは単にユリウスが犬好きだと言う事が関係しており、昊と初めて会った時から(アレックス、ナル、凛に次いで4番目に)仲良くなった為一緒に組む流れとなった。
それと、骸はクリムゾン達が配下となった事でスキルが無効化されてしまったが、その頃には既にドネグ湿原で自分を脅かす様な存在はいなかった。
骸はクリムゾン達とのんびり生きていくのも悪くないと思い、スキルの効果がなくなっても特に気にしない事にした様だ。
「はっはっはぁーー!やっべぇ、超ー楽しいぜぇぇぇ!!」
アレックスは早くユリウスと同じ強さになりたいからと言う事で、開始前にエナジー風味のブーストエナジーを飲んでいた。
孤高の王者とブーストエナジーの強化は足し算ではなく掛け算となっている為、現在のアレックスは神輝金級に近い強さとなっている。
それに加え、フランベルジュを用いた事で完全に無双状態となっており、かなりのハイテンションで戦闘を行っていたりする。
アレックスは3組の中で左側の位置にいるのだが、真ん中にいるユリウスにあまり近付かない様にしながらジグザグに走っている。
その事で魔物との遭遇率を増やし、自分に敵意を向ける魔物達を殲滅しては次に進んで行くと言う形を取っていた。
そしてアレックスが鬼気迫る勢いで進む事に怯えたのか、魔銀級の強さの業火竜やグリフォンが進化したアークグリフォン、タートルドラゴンがアレックスに下る。
それを段蔵が後から業火龍達の元へ向かってから凛に連絡を取り、ひとまずポータルを使って亜空間へ送る事になった。
「殿下、張り切っちゃってるねぇ。次は俺も殿下みたいにやってみるかな…っと。」
ユリウスは村正を肩に担ぎ、歩きながら前へ進んでいた。
ユリウスはサーチでアレックスがジグザグに進んでいる様子を確認した所だったのだが、そう言っている間にヘルハウンドが飛び掛かって来た。
ユリウスはそれを軽々とした様子で横に避け、隙だらけとなった所を斬り伏せる。
「おっ、どうやらやる気の様だな。良いぜ、纏めて相手してやるよ。」
ユリウスが倒したヘルハウンドの断末魔で周囲にいたヘルハウンド達がやって来た為、ユリウスは左手で挑発しながら話してヘルハウンド達の相手をし始める。
フィリップは今朝の黄金の林檎でひとまず若返り効果が打ち止めになり、見た目が50歳程となった。
しかしフィリップは勤務先が女神騎士団本部から女神教本山へ移った際にミスリル製の剣を返納しており、現在は自前の武器を何も所持していない状態となっている。
フィリップは先程の朝食の際に、凛や朔夜からリハビリを兼ねて死滅の森へ向かう事を告げられた為、訓練後にミスリルの剣を調達しようとして武具屋へ向かうとの返事を行う。
しかし凛が後で(朔夜では触れない為)アレックスに返して貰えば良いとの事で、フィリップへ白っぽい見た目で光属性を扱いやすくする光焔の片手剣を借し出す事に。
「ほっ。」
「はっ!」
「はあっ!」
フィリップは黒いズボンにシャツと言うラフな格好に光焔の剣を、アーウィンとレイラは鎧姿にミスリルの剣をそれぞれ携え、ユリウスが戦っているヘルハウンドと縄張り争いをしているオルトロスの群れと戦っていた。
3人が主にオルトロスと戦い、彼らに危険が及びそうな時は朔夜がフォローをすると言った感じでその数を減らしていく。
やがて全てのオルトロスを倒した事で、(ブーストエナジーを知らない為飲んでいない)アーウィンやレイラが安堵からかその場に座り込むのだが、フィリップは1番オルトロスを倒したのにも関わらずとても元気な様子を浮かべていた。
どうやら黄金の林檎の影響で体力と魔力が少しずつ回復しており、それに加えて武器の性能の違いもあった事が関係している様だ。
それからフィリップは朔夜と楽しげに軽く話をした後に先を進み始めてしまい、これにアーウィンとレイラは慌ててフィリップ達の後を追って行く。
その後もアーウィンとレイラだけは割とギリギリな戦いを行っては先に進むを繰り返した為、散策が終わる昼前には剣を杖代わりにする等して疲労困憊となってしまい、第1領地へ戻った際に客間を借りて寝る事になるのだった。