363話
美羽達は30分程寿司を堪能した後、今度はビュッフェ式のレストランへと向かう。
そこでは様々な物が食べ放題飲み放題(ただしアルコールは追加料金となっており、いずれも日本の物より味が少し落ちる)となっているからか、皿に目一杯乗せては完食し、再び調達しに向かうと言う者が多かった。
「ここは受付を始めてから1時間が経つまで、好きな物を選んで食べたり飲んだり出来るってお店なんだ。アルコール有りだと銅板5枚になるけど、アルコール無しだったら銅板4枚になるんだよっ♪」
『安っ!!』
「びっくりだよね。けどその分味は喫茶店と比べて少し控え目になってるから、レオン様達には物足りないかも知れないけど…。今回は試験的に建てさせて貰ったってマスターが言ってたよ。」
「成程な…。けど今さっき開店したばかりだってのに、既に客の反応は充分って感じもするがな。」
「あはは、確かに。」
美羽が説明を行うと、レオン一家が揃って驚きの声を上げる。
それが少しツボに入ったのか美羽とステラがくすくすと笑った後に美羽が説明の補足をすると、レオンは納得の表情で頷く。
しかし店内では凄い勢いで食べ進めていく客が多かった為、それらを見て複雑な表情となったレオンがそう言うと、美羽は苦笑いの表情を浮かべながら話していた。
一方、凛達はゼノン達がまだ朝食を摂っていなかった事もあって高級レストラン内にいた。
そこでゼノン達が食事を行い、人型となったシエルが美味しそうにオレンジジュースを飲んでいる中、凛は高級レストランと高級料亭は金級までの素材を用いた食事を提供する店だと伝える。
「離せ!儂を誰だと思って…。」
「あー…つい先程開店したばかりだと言うのに、もう早速誰か問題を起こしたのか…。」
「みたいですね。今回だけ特別にお咎めなしとしましょうか?」
「はぁ…すまないな。少し席を外して来る。」
ゼノンは火竜のステーキを食べながら凛の説明を受けていたのだが、少し離れた位置でトラブルが起きた様だ。
60代の男性が叫びながら、男性スタッフに両腕を捕まれて離れて行く所を凛達は目撃する事に。
ゼノンは頭を押さえながら話すと凛が肩を竦めてそう言った為、ゼノンは申し訳なさそうにして話した後、席を離れて後を追って行った。
それから2分程でゼノンが戻って来るのだが、どうやら先程の男性は出された料理が気に入った事で勧誘しようとして断られた為、逆上して男性スタッフに連れて行かれたとの事。
ゼノンがその男性に今回は見逃してやるが次はないと告げると、男性は焦った様子で高級レストランを後にした。
それと、凛達が建てた建物の従業員には黒地の燕尾服とメイド服を制服として支給しているのだが、その制服の両腕や背中、それと左胸の位置に世界樹を模した白い刺繍が施されている。
これは従業員が各店から外に出ても凛(またはホズミ商会)の関係者だと分かる様にしている為で、ゼノンが用意して帝都内や店の前にある注意喚起にも、凛が用意した刺繍と同じデザインのステッカーが貼られている。
凛達は高級レストランを出た後、次に高級料亭へと向かった。
ここでは懐石料理の他に、金級までの素材をメインとした肉・魚貝類・野菜それぞれのコース料理や一品料理、それとどら焼きや大福と言った甘味を注文する事が出来る。
「ほう…。箸とか言う物は使いにくいが、このハーピィの玉子焼きなる物も中々に美味だな。」
「本当ですね。それに美味しいだけではなく、気品がある様にも感じられます。」
「ありがとうございます。」
ゼノンとオリビアは箸の扱いに苦労しながらも、それぞれ初めて食べる玉子焼きに笑顔で感想を述べ、凛がそう言って頭を下げる。
「♪」
「「………。」」
シエルはハーピィの卵の茶碗蒸しを美味しそうに食べているのだが、ウェルズとニールの2人はシエルが変わった具材が入ったプリンを食べていると思った様だ。
2人も注文して一口食べてみたのだが、美味しいと思いつつも想像していた物とは全く違う味だった為、揃って戸惑いの様子を見せていた。
その後、凛達が中心から少し西の位置にある宝石店へ向かうのだが、そこで(既に店内を物色していた)メアリーがいた事でゼノンが呆れた様子となり、オリビアは苦笑いを浮かべる事に。
凛は中心から少し北、西、南の位置に3種類の店を構えたが、帝都は東側の入口からオーバ山等から鉱石が運ばれると言う事で、帝国城から少し東の位置に帝国の鍛冶ギルド本部が建っている事で東側には今の所出店はしていない。
それから少し離れた所に冒険者ギルド本部や商業ギルド本部が建っている事で賑わいを見せている為、凛はそう遠くない内にビュッフェ式レストランや公衆浴場と言った施設を建てるつもりではいる様だ。
それから凛達はお昼前になるまで、帝都やジラルドのあちこちの様子を見て回るのだった。