350話
その後、シャルルとシャルロットは凛の事をお兄様、サラとシーラはステラの事をお姉様と呼ぶ様になった。
そしてアレックスが一旦帝都に戻ろうと言う事になった為、凛達が行動し始めようとする。
しかしユリウスだけはレオンの元へ向かった後、悲しそうな表情となる。
「レオン様、ちょっと言いにくい事なんだが…。」
「…言うな、分かってる。帝都での獣人に対する扱いについてだろ?」
「!…ああ。帝都にいる獣人はほとんどが極貧層にいるか、奴隷や貴族に飼われてるってのが現状でな…。」
「俺も助けに行きたいんだが、そうなると最終的に国同士での争いに発展してしまいそうだからな。迂闊に手が出せねぇんだよ。」
「レオン様でもダメか…。」
ユリウスとレオンは難しい表情で話し合いを行っていたのだが、自分達だけでの解決法が見付からなかったからか悔しそうな表情となる。
帝国では能力のある人間や亜人族は優遇されるが、獣人は認められていない。
これは帝国を興した者達が自分達よりも身体能力が秀でていた獣人達に対する嫉妬から始まり、今では獣人の事を人の姿をしているだけの動物にしか過ぎないと言った歪んだ認識となってしまった為だ。
その為獣人が帝都に近付けば近付く程に獣臭いと揶揄されるだけでなく問答無用で捕縛、その後理由もなしに奴隷として売り出される事がよくある。
それもあって、レオンは獣国の者達に国の外は危険だから出ない様にと促してはいるのだが、獣人達は好奇心が強いからか獣国を出て王国や神聖国へ向かい、旅先で成り上がるなら帝国だと言う話を聞いて帝国に向かう流れとなる様だ。
そしてそんなユリウス達の一方で、シャルル達がおとなしくするから一緒に付いて行っても良いかと尋ね、凛と骸が軽く話し合った結果見聞を広めると言う名目で許可を出す。
これにより雫が付いて行く事になった為、引き続き領地に残る事となった朔夜は羨ましそうに雫を見ていた。
そして凛達は雫達を加えてポータルを潜り、帝都のレジスタンスアジトに戻って入口から外に出る。
「アイシャちゃん!!」
「お母様!?」
すると外に出て少し離れた位置に体格も身なりも良い女性が誰かを探している様子で立っていたのだが、凛達の中にアイシャがいる事が分かると、アイシャの名前を叫びながらその大きな体を揺らしながら走って来た。
これにアイシャも驚いたのか、そう叫んで女性の元へと向かう。
「…スー○ン・○イル?」
「…!」
雫はアイシャと話している女性を見てその様な事を呟くと、美羽は吹き出しそうになるのを堪えながら右の方を向く。
確かに雫の言う通り、その女性はス○ザン・ボ○ルに似た姿をしている。
「彼女はメアリーって言ってな、あまり似ていないがアイシャの母親でヴァレリー家の当主なんだよ。ここにいたって事は、自分とこの情報網を駆使したって所だろうな。流石、帝国内で『情報の魔女』って呼ばれるだけあるぜ。」
「…壁に耳あり障子にメアリー。」
「…!!」
「あ、まぁでも他には厳しいが、アイシャを含めて自分の所にいる者達には素直だし優しい面があるな。」
「…(壁に耳あり)正直メアリーの方?」
「ちょ、雫ちゃん!(メアリーさんを)弄り過ぎだよー!」
アレックスがアイシャの母親ことメアリーの説明を行うと、雫は更にそう呟いた事で美羽は必死に堪えていた。
しかしアレックスが説明の補足をした事で雫は少し首を傾げて呟いた為、美羽は堪え切れなくなった様だ。
そう叫びながら笑い出してしまい、凛や翡翠、楓もくすくすと笑っていたりする。
「…雫、お前って結構(ずけずけと)言うよな。」
「ん。褒め言葉として受け取っておく。」
これにアレックスは呆れた様子で話すのだが、雫はそう言ってむふーと鼻息を荒くしながら胸を張る。
「「?」」
そして少し離れた位置にいるメアリーとアイシャの2人は雫達の様子を見て、不思議そうな表情を浮かべるのだった。




