32話
「おー、竜に戻っても髪色と同じく綺麗な青色をしているんだね。ワイバーンの時は少し水色っぽくてそこまで強そうに見えなかったけど、格好良く進化出来たみたいで良かったよ。」
《マスター、報告します。藍火様が下位竜のワイバーンから上位龍の蒼炎龍へと進化致しました。通常でしたらワイバーンからの進化は上位竜の火竜となりますが、どうやら名付けの影響で稀な個体への進化に至った様です。》
「それでサファイアみたいに綺麗な青色をしているんだね。ふむ、蒼炎龍になった事で強さは金級中位にまで上がったみたいだ。」
「グォォッ!ガァァァァッ!(やったっす!これも主様のおかげっすよ!)」
凛は顎に手をやりながら藍火の状態や強さを見て、少し驚いた様子で話した。
凛はナビからの報告を受けてそう話し、藍火は万歳しながら喜びを露にする。
「藍火ちゃんやったねー♪」
「ああ、やったな。」
「ん。やった。」
「やったねー!」
「やりました…。」
「「(? どうして美羽ちゃん達はやったって連呼してるんだろう…。)」」
美羽達は嬉しそうにしたり頷いてそう言い、紅葉達は藍火に拍手を行っていた。
しかしエルマとイルマはまだ凛とリンクを繋いでいない為、藍火が何を言っている(藍火は吼えながら念話を行うと言う器用な事をしていたが)のかが聞き取れていなかった。
その上、2人は美羽達が立て続けに似た様な台詞で話す事を不思議に感じたのか、互いに顔を見合せた後に藍火の方を向き、内心そう思いながら首を傾げていた。
「(ぐぅ~)(…あ。)」
そんな中、藍火は万歳した状態でお腹が鳴った為、口を開けたままで硬直していた。
そして少し遅れる形で念話越しにそう呟き、それが切欠で凛達に笑いが起きる。
「ふふっ。そう言えば藍火は仲間になってからまだ何も口にしていなかったね。藍火、朝食を用意するから人の姿になって貰って良いかな?エルマ達に君の念話は届かないから通じていないみたいだしね。」
「(分かったっす。)」
凛は藍火にそう促し、藍火が頷いて念話で返事を行って人化を用いて人間の形態となる。
しかし人になった藍火はすっぽんぽんだった為、近くにいた美羽が慌てた様子となって凛の両目を自身の両手で覆う等して一悶着あったりする。
「これは昨日のオークキングのしゃぶしゃぶした肉をサラダに乗せてごまだれをかけた物なんだ。藍火はこのスプーンとフォークを使って食べながら、僕達の話を聞いててね。」
「分かったっす。…何これ美味っ!」
凛は先程の話の続きをする為、再び服を着させた藍火を自身の右に座って貰った。
そして右手で藍火の前に用意したごましゃぶサラダを指し示しながら促す。
藍火は返事をした後に1番上に乗っていたしゃぶしゃぶ肉を食べ、目を見開いてそう言った。
それから少しの間はごましゃぶサラダをフォークで寄せ、それをスプーンで掬って食べていた。
しかし途中から煩わしくなったのか、左手で皿を掴んでスプーンで掻き込みながら食べ進めていった。
「今サーチで調べたんだけど、紅葉達と同じく金級のオーガキングがオーガ達を纏めているみたい。紅葉達が今持っている武器だと厳しいかも知れないんだ。ひとまず紅葉と暁だけでも新しい武器を用意するから、少し待ってて貰って良いかな?旭達は進化したら用意するね。」
「勿論でございます。」
「勿論です。」
「「「(分かりました。)」」」
凛は考える素振りを見せながら紅葉達に話し、紅葉達が答えた事で武器の作製に取り掛かった。
20分後
凛は万物創造を用いての武器作製に慣れたのと、超効率化スキルを併用して時間の短縮を行った様だ。
凛はその場での作業を終え、簡単な手合わせをしていた美羽達の元へと向かう。
「新しい武器が出来たよー。先ずは紅葉から、この鮮緑色の鉄扇が風属性に特化してる『颯』でこっちの茶色い…樺色の鉄扇が土属性に特化した『圷』だよ。颯は疾風…早く動くって意味で、圷は本来なら低い土地って意味なんだ。でも紅葉にはこれからもこの世界の住人の筆頭として助けて欲しいなと思って、今回は縁の下の力持ちって意味で付けさせて貰ったよ。」
「ありがとうございます。大事に使わせて頂きます。」
「そして暁にはこの大太刀…『不動』を託す。これからも揺るぎない信念を持って、僕や紅葉に仕えて欲しいんだ。」
「勿体ないお言葉…。ありがたく頂戴致します。」
凛はそう言いながら30センチ程の長さで鮮緑色と樺色をした鉄扇を紅葉へ渡し、刀身の長さだけでも120センチ程あり、赤い鞘に収まった状態の大太刀を暁へそれぞれ渡した。
紅葉と暁はそれらを恭しく受け取る。
それから30分程経って紅葉達が準備を終えたとの事で、先に凛と美羽だけがオーガの集落に飛んで向かって行った。
それから10分程経ち、凛だけがポータルで屋敷へ戻って来た。
「オーガの集落から1キロ程離れた所にポータルを設置して来たよ。向こうで美羽が見張ってくれてるし、皆で一緒に行こうか。」
「「はい!」」
「「「(はい!)」」」
凛は屋敷の外に皆を集めてそう言うと、紅葉達は元気良く答え、火燐達は頷いて答える。
そして屋敷の入口の前に設置したままのポータルを使い、皆で美羽の元へ移動するのだった。