330話
凛達が朔夜達と合流してから3分後
凛を先頭に一行は駆け足で洞窟から脱出し、騎士達がいる湿原へと戻って来た。
「…ふぅ、どうにか無事に皆で脱出する事が出来たね。後ろに魔物達が付いて来てるけど、その前に騎士さん達の元に向かわないとかな。」
『マスター、お疲れ様です。』
「イオタ達もお疲れ様。イオタ達は後ろにいる魔物達の事に意識が向いてると思うんだけど、ひとまず武器を収めて僕と一緒に向こうまで来て貰えるかな?」
『畏まりました。』
その後、地上に出て20メートル程進んだ所で凛がそう言うと、左右の斜め前方や後方の位置から、空中に浮いている状態のイオタ達から声を掛けられた。
どうやらイオタ達は凛達が来る前に粗方魔物達の討伐を終えた様だ。
凛の前方にいる騎士達は武器を構えてはおらず、段蔵と共にこちらの事をじっと見ていたりする。
そしてイオタ達は凛達の後ろに魔物達が迫っている事がわかっているからか、武器を構えてすぐにでも攻撃出来る状態となっていた。
しかし凛がイオタ達を労った後にそう言った為、イオタ達は了承してそれぞれ武器を収めて凛達と一緒に、800メートル程先にいた騎士達の元へ向かう事に。
「アーウィン団長閣下、お疲れ様です。その…皆様普通にしていらっしゃる様ですが、団長の後ろにいるのは…ひっ。…魔物ではないのでしょうか?」
「お務めご苦労。君がそう言いたい事も分からなくはない。…が、それを言ってしまうと、君達の事を守って下さった段蔵殿や、こちらの朔夜様にも我々は刃を向けなければならなくなってしまうぞ。」
「? こちらの段蔵様には非常に助けられましたが…それはどういう…。」
「…お2人共、こう見えてドラゴンなのだよ。それも、私の後ろにいるイクリプスドラゴン殿よりも強い。」
『…!!』
それから凛達は騎士達の元へ向かった後に騎士の1人がアーウィンへ駆け寄り、恐る恐ると言った感じでそう尋ねて来た。
話の途中でイクリプスドラゴン達から視線を集めた事で怯んでしまうが、どうにか勇気を振り絞って言い切った様だ。
しかしアーウィンが少し複雑そうな表情で答えると、尋ねた騎士は不思議そうな表情を浮かべてそう話そうとする。
そこへアーウィンが被せる様にして説明を加えた事で、騎士全員が段蔵や朔夜を見て驚きの表情となって後退りをしたり、中には腰を抜かしてしまう者が出てしまう。
その為、普段驚いてばかりのアーウィンが騎士達を宥めると言う、なんとも珍しい光景を凛達は目の当たりにする事となった。
ザッザッザッザッ…
アーウィンが騎士達を宥めていると、洞窟が崩落した後も無事に動く事が出来たのか、洞窟からデスドラゴンやイクリプスドラゴン、ダークナイトアーマーやアーマーズアヴェンジャー、バンパイアロードやクイーンが姿を現し、それからも扇状に広がる様にして移動を行っていた。
「な、何だあの魔物達は…!」
「まだあんなにも…。」
「それにこちら(の魔物)程ではないにしても、俺達の手に負えない位強そうだぞ…。」
騎士達は魔物達が次々に洞窟の奥から姿を現してはこちらへ向かって来る様子を見て、後ろに下がる等して怯えた状態となったのか、あちこちからそう言った声が聞こえる様になる。
パンパン
「皆さん落ち着いて下さい。あの魔物達の相手は僕がさせて頂きます。すぐに済ませますので、皆さんはこのままお待ち下さいね。…ガイアコラプス。」
凛は2回拍手を行って騎士達の視線を自身に集め、そう言った後に後ろを振り向いて数歩歩く。
そして右の掌を上にする様にして目の前に持っていき、ガイアコラプスを発動させる。
すると掌の上にテニスボール程の大きさをした薄い茶色のエネルギー体の様な物が現れ、掌から少し浮く形でふわふわと漂い始めた。
ガイアコラプスは土系超級魔法で、茶色いエネルギー体を起点として半径500メートル程、上下に300メートル程の範囲に効果を齎すものだ。
そして発動させてから範囲内にいる者を障壁の様なもので閉じ込めた後、地面ごと持ち上げる形で少しずつ高度を上げて行き、やがて持ち上げた地面を砕いてから縦横無尽に暴れ回させ、中にいる者達を倒す魔法となっている。
「…行けっ。」
凛はそう言ってガイアコラプスを飛ばし、洞窟の入口のすぐ上の位置で魔法を発動させる。
その後、ガイアコラプスが発動した事で、凛の割と近くにまで来ていたデスドラゴンが障壁にぶつかり、その場から進めなくなる。
そして他の魔物達も同様に、次々に障壁にぶつかってはその場で止まっていった。
そして障壁から出ようとして前足や爪等でカリカリと引っ掻くのだが、そうしている内に茶色い障壁や地面等を含めた楕円状の塊が少しずつ高度を上げて行き、やがて高度50メートル程になった所でデスドラゴン達の足場となる地面に亀裂が入る。
それから地面は砕けて岩石となった後、砕けた岩石は魔法で硬度が強化された事で範囲内にいる魔物達を一斉に削り始める。
それから1分程楕円形の中で岩石が激しく動き回った後、最後の締めとして岩石がエネルギー体の元へと集まるのだが、岩石が集まった際に生じる圧力で巨大な爆発を起こし、ガイアコラプスは終わりとなる。
そして爆発が終わった後、そこにかつての洞窟の姿はなく、湿原と広大なクレーターだけが残ったのだった。