319話
「「あははははははっ!!」」
「「おっと。」」
「くっ!?」
「やるわね!…お前達、行きなさい!」
『………。』
バンパイアロードとクイーンは狂気を纏わせた笑みを浮かべながら両肘から先の外側に赤い刃の様な物を形成し、1番前にいたイオタ達を狙おうとして左側にいたバンパイアロードが右手を、右側にいたバンパイアクイーンが左手をそれぞれ振り下ろした。
そこへイオタ達の前に出た凛と美羽が玄冬とライトブリンガーでバンパイアロード達の攻撃を弾き、それと同時にそれぞれの赤い刃をパキィィンと砕いて素肌を露にする。
バンパイアロードはまさか自身の赤い刃が砕かれるとは思っていなかったからか驚きの表情となって呻き声を上げ、バンパイアクイーンはニヤリと口角を上げた後にそう言ってストリゴイ達を凛達にけしかける。
バンパイアクイーンの後ろにいたストリゴイ達は指示を受け、黙ったまま凛達の方へ向けて駆け出した。
バンパイアロードとクイーンは進化して『血操術』と言うスキルを得た事で、魔力の消費量にもよるが自身の魔力が込められた血液を凝固・分解・増殖する事が出来る様になった。
そしてバンパイアロード達はグールから吸血鬼になった事で体に血液が流れる様になり、操作する血液は慣れ親しんだ自らのものとなる。
「お、ならば妾が…。」
「朔夜はもう充分暴れた。」
「ぐぬ…。」
「だから…。」
『小さいのを含め、纏めて私が相手をしてあげる。』
『!?』
そう言って、朔夜が少し嬉しそうにして前に出ようとするのだが、朔夜の前にいた雫によって制されてしまった為、朔夜は悔しそうに声を漏らす。
そして雫がそう言いながら自分と同じ姿をした分身を4体呼び出し、バンパイアロードとクイーンの方を見てそう話した。
これにストリゴイ達は驚いたのか走るのを止め、雫と距離を一旦取って様子を見る事に。
「貴様!聞こえたぞ!小さいとは私達の事か!」
「私達よりもあんたの方が小さいじゃないの!」
『ふっ。』
「「貴様(あいつ)だけは絶対殺す!!」」
バンパイアロードは両手を真っ直ぐ下に伸ばして拳を握った状態で、バンパイアクイーンは右手の人差し指を雫達に指差しながらそれぞれ怒った表情で叫ぶ。
しかし雫達が揃ってバンパイアロード達を見ながら蔑んだ様子で鼻で笑った為、バンパイアロード達はそう言って雫達へと向かって行った。
バンパイアロードとクイーンが両手の赤い刃を用いて雫に攻撃を行うのだが、雫は分身を立たせたままにして本人だけでバンパイアロード達の相手を務め、カドゥケウスを用いてそれら全てを防いだ後に少し距離を取る。
そしてストリゴイ達は未だに雫を警戒して距離を取ったままだった為、雫は充分だと判断したのか全ての分身を解除して1人だけとなった。
「(分身が)消えただと?何だ、所詮そんなものか。」
「私達を相手にあんた1人で務まる訳がないものね。」
「ん。分身は元々牽制に使うだけのつもりだった。と言うか、貴方達程度なら私1人でも全然余裕。」
「何ー!!」
「何ですってー!!」
これにバンパイアロード達はこけおどしだと判断したのか、それぞれ赤い刃を出したまま得意気な表情で話す。
しかし雫は首を左右に振り、軽く微笑んで話すとバンパイアロード達は再び叫んで雫へと突っ込んで行った。
「なんか…うちのやつがすまねぇな。」
「いえいえ。雫がわざとあちらの2人を煽った風に感じましたし、貴方に敵意がなかった事が分かったからそうしたのでしょうね。」
「あいつらは俺の気まぐれで今の強さになったんだが、生まれてまだあまり経ってない内にあの姿になっちまってな。今じゃそれなりに古いこいつらよりも強くなってしまったからか、変に自信を持っちまったみたいなんだよ。一応俺の為とか言っちゃいるが、自分の力を相手に見せたいって所がな…。」
「…なんだか、昔の妾を見てるみたいで恥ずかしいのじゃ。」
雫達が激しい戦闘を行っている中、イクリプスドラゴンがのっしのっしと凛達の元へとやって来て申し訳なさそうに話す。
これに凛が笑顔で答えると、イクリプスドラゴンは申し訳なさそうにしたままバンパイアロード達の方を見て話す。
これに朔夜は若かりし頃に血気盛んだった事を思い出したのか、少し恥ずかしそうにしてそう呟くのだった。