317話
10分後
分裂して巨大化したライム達は、スキル『暴食』による大量の魔物達の取り込み、及び掃除を終えた後に合体して元の姿に戻り、もそもそと床を這って凛達の元へと戻って来た。
「ライム、お帰り。」
「…ただいま。」
「ん。おいで。」
「分かった。」
雫がしゃがみながら淡々とした様子でライムを迎え、ライムもそれに応える形で返事を行って雫の左肩の上に飛び乗る。
「ん。ライム、よくやった。」
「嬉しい…。」
雫がそう言いながら右手でライムを撫でると、ライムはそう言ってぷるぷると震えていた。
「「………。」」
「…可愛いかも。」
「!?」
その後も少しの間雫はライムを撫で続け、その様子をアーウィンとレイラが黙って見ていたのだが、レイラはライムがぷるぷると震えている様子が可愛らしく見えたのか、軽く微笑みながら呟いた。
これにアーウィンは予想外だったのか、慌てた様子でえっ!?と言いたそうな表情でレイラの方を向く。
ライムは女性からの人気が高いからか、今でも女性が雫の周りに集まって来る事が度々ある。
その為、最近では分裂したライムを凛の配下の何人かが肩に乗せるのを領地内で見掛けたり、アイルの様に水系や氷系の魔法を主体とする者と一緒に戦っていたりする。
ライムは効率の良い暴食で魔物を取り込む事が多いが、前方へ扇状に放つ水の刃や、ウォータージェットの様に高圧の水流を放って相手を貫通させたり押し戻す等して、同行者をアシストをしてくれたりする。
更に、同行している者が怪我等をしたとしても、金花、銀花の『薬液精製』スキルを用いてすぐに回復させる事も出来る為、実はこっそりと重宝がられてスライム愛好者を増やしている。
10分後
凛達は開けた部屋から真っ直ぐ進んだ通路を抜けると、同じ様な造りではあるが先程よりも更に広い部屋へと出る。
その部屋の中には銀級の吸血鬼やリッチだけでなく、金級のドラウグルや上級吸血鬼、カースドラゴン、デミリッチ、そしてリビングアーマーが進化して一回り大きくなり、全身が黒っぽい鎧となったダークナイトアーマーがいた。
更に、カースドラゴンが進化して魔銀級の強さとなり、体長が10メートルを越えて真っ黒な体となったデスドラゴンや、ダークナイトアーマーが進化して漆黒の鎧となったアーマーズアヴェンジャーの姿も見える様になる。
どうやら1つ手前の部屋に比べ、魔物達の強さがはね上がった様だ。
「何だこの部屋は…。先程よりも格上の魔物が…こんなにもいるものなのか。」
「これは…私達だけではどうしようもありませんね…。」
「そうだな。今回、凛様達の協力がなかったらと思うと…。」
「正直ゾッとしますね…。」
前回と同様にイオタ達が魔物達の相手をしている中、アーウィンとレイラの2人は顔を青ざめさせながらそれぞれそう言って、部屋の中を見渡していた。
「雫とライムは半分から向こうを任せるぞ。妾は行くのじゃー!」
「…お嬢、お供します。」
「あ、朔夜ちゃんが行くのならボクも行くー!」
「ん。」
「分かった。」
一方、朔夜は嬉しそうにうははははなのじゃー!等と笑いを交えてそう叫んだ後、イオタ達の隙間を抜けて魔物の群れの中へと突っ込んで行き、段蔵と美羽はそれぞれそう言って朔夜の後を追う形となった。
雫、ライムは返事をした後にポータルを使って部屋の反対側へと回り込み、雫による水や氷の魔法や、分裂を含めたライムによるアシストや魔物の取り込みを始める。
そして朔夜達が暴れ始めた事により、部屋の至る所で魔物達が空中へ巻き上げられたり、様々な斬撃や魔法が飛び交う様になった。
「どうやら、この部屋の真下にもう1つ大きな部屋があるみたいなんですけど、どうやらここよりも更に難易度が高い様なんですよ。」
「そうか…。」
「………。」
そんな中、凛は平然とした様子でアーウィン達に説明を行うのだが、アーウィンは朔夜達の様子を見て複雑な表情でそう言い、レイラは絶句しているのだった。