30話
凛は美羽と協力し、20分程で10メートル四方位の倉庫の様な建物を建てる。
その後、屋敷や倉庫から5メートル程離れた位置に、周囲を囲う様にして高さ2メートル位の塀を建て、南側には入口として鈍色の門を作った。
「よし、完成!」
凛は両手を腰に当て、満足そうな様子でそう話していた。
「マスター、取り敢えずマットレスを倉庫内に敷き終わったよー♪」
「ありがとう美羽。」
「えへへー♪」
美羽は倉庫が出来上がってから中へ入り、アクティベーションを用いて4枚のキングサイズよりも大きいマットレスを倉庫内に並べる。
その後、美羽も簡単な万物創造なら扱える事もあって、時間を掛けてマットレス同士の繋ぎ目等をなくし、1枚の非常に大きなマットレスにしていた様だ。
美羽は作業を終えて報告を行い、凛に褒められた事でご満悦の様子となる。
「それじゃそろそろ良い時間だと思うから、頼んでおいたオークキングの肉を受け取りにもう一度街へ行ってくるよ。火燐は悪いんだけど藍火をマットレスの中心に寝かせて、しばらく藍火の事を見てやっててくれないかな?それと、皆の防具も今晩のうちに作れるだけ作るからさ、どういうのが良いかとか考えて貰えると助かるかも。」
「あ、ああ…。」
『………。』
「それじゃあ僕は行って来るね。」
凛は軽く微笑みながら皆にそう伝えるも、火燐達は今朝から動きっぱなしなのに元気だなと面食らった様だ。
火燐は生返事で答え、雫達は呆然としていた。
凛は早くオークキングの肉を見たかったのか、火燐達の様子を見る事なくそう言った後にふわりと宙に浮き、そのまま街へ飛んで行った。
「あ、マスター待ってー!ボクも行くー!」
その為、美羽は慌てた様子となり、そう言って凛の後を追う様にして飛んで行った。
「忙しい奴だなぁ…。」
「ふふっ、そうだね。」
火燐は藍火を抱き抱えたまま、やれやれと言った表情で溜め息混じりにそう呟き、翡翠がくすくすと笑いながらそう言った事で軽い笑いが起きたりする。
凛と美羽の2人は屋敷から真っ直ぐサルーンへ向かい、街から20メートル程手前の所で着地した。
「凛さんは先程飛ぶ所を拝見しましたが…貴方も飛べたんですね。」
「僕とこの子は飛べるのですが、もう1人の黒髪の子がまだ飛べないんですよ。青い髪の子は飛べたかも知れませんが、歩く練習をしたかったので先程は歩いて帰らせて頂きました。他にいる仲間は飛べる子と飛べない子が半々って所でしょうか。」
「ソウデスカ…。」
門番が凛だけでなく美羽も空を飛んで移動出来る事に驚いた為、凛が笑顔で説明を行う。
しかし門番は凛が今はまだ飛べないと話した事で、いつかは紅葉と藍火も凛達と同じ様に空を飛ぶ日が来るのだろうなとか、他にも飛べる存在が複数いるのかと思った様だ。
本日何度目かの微妙な顔となり、片言での返事を行っていた。
凛達は門を抜けてそのまま街の中を通って冒険者ギルドへ向かい、ワッズからオークキングの肉の塊を20個受け取る。
凛はその内の1割である2個を、これからも宜しくとの意味を込めてワッズ達へ提供して喜ばれる事に。
凛達は今日の予定が済んだ為、ギルドを出て街の外へと向かうのだが、(ギルドに向かう時も含め)終始周りにいる人達から見られていた。
そして空を飛んであっという間にワイバーンを倒したとか、ガイウスのお気に入りだとか、見た目の良さからどこかのお姫様とその付き人だろうかと言った内容のひそひそ話をされるのだが、凛は特に危害を加えては来ない(途中で寒気は感じたが)からと言う事でスルーする事にした。
凛達は街の外にいる門番に軽い挨拶を済ませ、共に屋敷へ向けて飛んで行った。
「その内まだ飛べないと言ってる人達も、飛べる様になったとかで一斉に来たりしてな。」
「止めてくれ…。そう言って本当に来たらどうするんだよ。俺らじゃ確実にお手上げだぞ?」
「ははっ、悪い悪い。」
凛の相手をしていなかった方の門番が茶化した様子でそう言った為、凛の相手をした門番は本当になると思ったのか嫌そうな表情で返事を返した。
しかし凛の相手をしていない方の門番は楽観的に捉えているのか、軽い感じで話を行っていたりする。
「オークキングの肉が手に入ったので、今日の夕食はしゃぶしゃぶにしようと思いまーす!今回は僕、美羽、火燐、雫、翡翠、楓、エルマ、イルマで1つの鍋。紅葉、暁、旭、月夜、小夜で1つの鍋って事でやります。」
凛は教師の様な口調で皆へそう伝えた。
凛と美羽は箸の使い方を皆に教えているが、やはりと言うか旭、月夜、小夜のオーガ組は使いにくそうにしていた。
その為、凛はどうしてもの場合はナイフとフォークを使って良いとも伝えてある。
「こうやって箸を使い、薄切りにした肉をこの鍋に通します。そして肉に火が通ったらだんだんと白くなっていき、ここまで白くなったら食べ頃になります。肉に付ける為のタレは、ポン酢とごまだれを用意したのでお好みで。」
凛は続けて説明を行いながら、アクティベーションで用意したしゃぶしゃぶ鍋に、同じくアクティベーションで用意した昆布を用いた昆布出汁の中へオークキングの薄切り肉を何度か潜らせる。
そして食べ頃になったと判断したのか、白くなった肉を見せる様にして持ち上げ、近くにある少し深めで小さな皿に入ったポン酢とごまだれを左手で指し示していた。
「それでは頂きます。」
『頂きます。』
「「「(頂きます。)」」」
凛はひとまずポン酢が入った皿の上にオークキングの肉を乗せて箸置きに箸を置いた後、両手を合わせてそう言った事で皆も同じ様に倣い、一斉に食べ始める。
「うんまっ!柔らかいのにしっかりとした肉の味がしてたまんねぇな!この白いご飯とも良く合うぜ!」
火燐は丼で用意した山盛りのご飯の上へ更に重ねる様にして、しゃぶしゃぶ済みのオークキングの肉を大量に積んでいた。
そしてそう言いながら、勢い良くご飯と肉を交互に掻き込んでいった。
他の者達も肉を野菜で巻いて食べたり、タレの食べ比べをしたり、オークキングの肉を潜らせたしゃぶしゃぶ鍋に野菜を潜らせて食べたり等して堪能していた。
凛は夕食後に皆へどんな服が良いかを尋ねた所、美羽、火燐、雫、翡翠、楓は決まったとの事。
しかしそれ以外は特になかった為、凛に任せると答えた。
凛は紅葉達は明日以降にとして、まずは美羽、火燐、雫、翡翠、楓の防具を作る事にした。
美羽は武器に合わせて白と黒を基調としたリボンとシャツとミニスカートとニーソックス、
火燐は藍火の服装を見て気に入ったとの事で、火燐の髪色よりも深いワインレッドのシャツと黒いパンツ、
雫はどこから情報を仕入れたのか、セーラー服が良いと言われたので細くて赤いリボン付きの膝丈までの長さの紺色のセーラー服と、フェルトの様にふわっとした肌触りで薄水色をした少し小さめのベレー帽、
翡翠は白い服に黒のジャケット、若葉色のミニスカートに黒いニーソックス、
楓は白いニット帽にキャメルのややミニのフレアスカート、それと黒いタイツだった。
いずれも見た目は普通の服に見えるが、魔力を纏わせると防御力が増す為、全身板金鎧よりも高い防御力を持っていたりする。
凛は美羽達の服を作り終えて順番に部屋へ訪れて渡すと、皆嬉しそうにしながら服を抱き抱えていた。
そして最後に楓へ服を渡し終え、凛も満足げな様子で自室に戻るのだった。
美羽の衣装はwowakaさんのワールズエンド・ダンスホールみたいな感じです。