306話
「(ん?ステラ?そっちで何か問題でも起きた?)」
「(ううん、むしろ反対にかなり形が出来上がって来た位だよ。そろそろお昼だし、レオン様達が凛様達も昼食を一緒に食べないかって。)」
「(あ、もうそんな時間なんだ。分かった…あ、そうそう。聖都に転生者がいたんだよ。紹介も兼ねて、一緒に屋敷へ連れて行くね。)」
「(はーい、分かったー。)」
「皆ー、ステラからの念話で、レオン様達がこれから一緒に昼食を摂らないか、だって。僕はこれからリュファスを連れて領地に向かおうと思うんだけど…皆も一緒に行く?」
『(こくっ)』
凛はステラと念話でのやり取りを終えた後に皆の方を向いて尋ねると、美羽達が頷いた為全員一緒に付いて行く事に。
「教皇様。僕には数千キロ離れた場所でも、隣の部屋へ移動する様な感覚で繋ぐ事が出来る移動手段があるんですよ。それをこの部屋に設置して、僕達が行き来しやすい様にしても宜しいですか?」
「凛様は便利な物をお持ちなのですねぇ…。勿論良いですよ。」
「ありがとうございます。」
「…凛様。先程レオン様がと仰っていたが、もしや獣王レオン・マクガイル様の事か?」
「あ、はい。レオン様の他にも、商国の代表のポールさんや王国のパトリシア王女殿下、それと帝国第3皇子のアレックス皇子殿下とも仲良くさせて貰ってます。」
「流石だな…。いや、凛様なら当然だと言うべきか。」
「ははは…。」
凛はフィリップにそう尋ねるとフィリップは笑顔で答え、凛はお礼を言いながら軽く頭を下げる。
そこへ少し複雑な表情のアーウィンが凛へそう尋ね、凛は笑顔で答える。
アーウィンは更に複雑な表情となって納得してしまった為、これに凛は苦笑いとなる。
その後、凛はフィリップのベッドの右側の壁にポータルを設置し、先に朔夜達を屋敷へ返す事に。
「…それでは教皇様、僕はこれで失礼しますね。ひょっとしたら、今日はこちらへ戻って来れない可能性もありますが…。」
「お気遣いありがとうございます。…アーウィン、レイラ、貴方達も見聞を広める為、凛様と一緒に行きなさい。」
「教皇様?ですが私は…。」
「アーウィン。貴方は真面目だし、暇があれば本を読むだけあって頭が良い。ですが、それだけではこれからの時代だと足りなくなるでしょう。本山と騎士団本部を行き来するだけでは見えなかったものが、凛様と一緒に行動する事で見える様になるのでは、と私は思っております。」
「教皇様…分かりました。」
凛が少し申し訳なさそうにしてフィリップ達へ向けてそう言うと、フィリップはベッドの上に腰掛けながら頭を下げて答える。
フィリップは頭を上げた後にアーウィンの方を向いてそう言うと、アーウィンは心配そうな表情で断ろうとする。
しかしフィリップが首を左右に振った後にアーウィンを説得し、アーウィンは苦虫を噛んだ様な表情で了承する。
しかし凛がポータル越しに周りの状態が分かる事を伝えた後、(世話をするシスターがいない等して)フィリップが1人の状態で誰かが攻撃を仕掛けようとしてもすぐに対処出来る様にと言う事でアルファを呼び、4人にアルファの紹介をし始める。
そして紹介の中で、アルファがこの部屋で待機したままだとフィリップが気を遣うと言う事もあり、有事の際にまた来る事や凛達と一緒に一旦屋敷へ戻る予定である事を伝える。
しかしアルファについての説明を受けたフィリップ、アーウィン、レイラは呆然とした様子となり、アルファがヴァルキリーの姿をしたエクスマキナだと知らされたリュファスは反対に興奮した様子となっていたりする。
アーウィンはアルファの存在に驚かされたものの、結果的にそれでフィリップの安全が確保されていると判断した様だ。
笑顔でフィリップに離れる事を伝え、リュファス、レイラと共にポータルを潜る。
そして凛と美羽の2人とアルファもフィリップに別れを告げた後に屋敷…ではなく、行き先を女神騎士団本部へと変えてタッド達を迎えに行き、それから屋敷へと戻る事に。
それから凛達は騎士団本部へと向かうのだが、タッド達は建物ではなく馬車の中に集まっており、淡々とした様子でババ抜きを行っていた。
凛が馬車の中へ入った事でタッド達は喜びを露にした為、不思議に思った凛は何故馬車の中にいたのかを尋ねる。
するとタッドが苦笑いの表情で、騎士達が自分達に対して物凄く気を遣う様になった事でかなり居心地が悪くなった為、馬車に避難して来たとの報告を行った。
それを聞いた事で、凛と美羽の2人もタッド達に釣られて苦笑いとなってしまう。
凛達が領地に戻ると、レオン達一家とポール達商国の者達、ステラ、リナリー、それと火燐が待っていた。
火燐はポール達商国の者達の様子見をするとして一緒に行動しているのだが、ポールは火燐から拳骨を貰った事で色んな意味で何かに目覚めたのか、火燐に対して尻尾を振る子犬の様になってしまった。
「きめぇ…。」
「うほっ、なんと言う甘美な響き…!もっと、火燐様もっと私の事を罵って下さい!」
「はぁ、鼻息荒くしてこっちにくんな。それと、あまり調子に乗る様なら…。」
「すいませんでしたー!!」
そして凛と合流する少し前に、火燐は自分に向けて褒めてアピールをするポールに対し、気持ち悪そうな表情となってそう呟いてしまう。
しかし何故かポールは、それがご褒美となる変態さんになってしまった様で、そう言って身悶えした後に火燐に詰め寄ろうとする。
それを見た火燐は溜め息をついてそう言った後、左手の掌の上にボウ…と音を立ててバスケットボール位の大きさの炎を出す。
するとポールは調子に乗り過ぎたと思ったのか一気に顔を青ざめさせ、勢い良くその場で土下座を行った。
その様子をステラやリナリー、レオン達、それとポールの部下のオズボーン達が様々な様子で見ていたりする。
その後、凛達はステラ達と合流して話をしながらVIP宿へと向かい、昼食を摂りつつ互いに自己紹介を行うのだった。