304話
凛がエリック達を鎮圧した後、レイラが騎士達を呼んでエリック達を縛らせる様に命令する。
「これが異端者の力…と言う訳か。」
「異端者?貴殿らは全くの思い違いをしているぞ。良いか、凛様はな…。」
レイラが呼んだ騎士達によって次々に捕縛されていく中、真っ先に縛られたエリックが座りながら力なく項垂れてそう言うと、アーウィンが否定した後にそう言ってエリック達に説明をし始める。
そしてエリックとマルコの2人は、フィリップが夢で女神様から管理者の事について伝えられたと言うのを完全に忘れており、初めて聞く様な態度でアーウィンからの説明を受けていた。
「そんな…。管理者様…それに女神様の…弟…。」
「林檎…。」
『………。』
説明を聞いたエリックは真っ青や表情となり、ぶつぶつと呟いていた。
それに対してマルコは説明を受けた後も尚、黄金の林檎の事で頭がいっぱいの様だ。
マルコはそう呟きながら涎をだらだらと床に垂らしていた。
先程アーウィンが説明を行った際、朔夜はアーウィンに頼まれて右手首から先を龍に戻し、エルマとジークは背中から翼を出していた。
その為エリック達を縛った騎士達は、朔夜達を従えている凛の事を自分達よりも遥か上の存在だと思った様だ。
凛から少し離れた位置で跪いており、シスター達は縛られた状態のままで土下座をしていた。
その後、エリックとマルコは騎士達に連行されるのだが、エリックとマルコの部下達のシスターを合わせると、女神教本山全体の2割に当たってしまうそうだ。
その為シスター達もエリックと一緒に連行してしまっては本山の業務に差し障りが出る上、彼女らを1人1人収容出来るだけの場所もなかった。
凛は少し困った表情の騎士達からこの様な報告を受けるのだが、凛としても元々牢に入れても1~2日間だけの予定だった為、シスター達に今後この様な事を行わない様に厳命して解放する事となった。
「これで一段落ですね。」
「じゃの。これでこの国は凛の支配下に…。」
「いや、僕はしないからね?あくまでも僕が行うのはサポート…あ、そうだった。僕が異端者として認定されたと同じ位の時期に、本山へ来る事になった方がいると思うんですよ。アーウィンさんはその方の事をご存知ないですか?」
「以前、私が凛様へお伝えした方の事ですね?教会からは光に高い適性のある若い男性としか聞いておりませんでしたので、私も気になっていたのですよ。」
「光に高い適性…私には分からないな。君達の中で誰か分かる者がいるか?」
「…恐らくですが、リュファス様の事ではないかと思われます。先程から教育係に勉強を教えて貰っている所ですね。」
「そうか。君、すまないがそのリュファスと言う者の所までの案内を頼めるだろうか。」
「分かりました。」
凛がそう言った後に朔夜が頷き、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言おうとした所を凛がじと目の表情で否定する。
その後凛は思い出した様にしてアーウィンの方を向いて尋ねると、エリオットがすかさずそう言って合いの手を入れる。
因みに、凛がアーウィンへ尋ねている間に朔夜がつまらんのう…と呟いていたが、誰も聞こえない事にした様だ。
アーウィンは首を左右に振ってから騎士達の方を向いて尋ね、騎士達は顔を見合わせた後に1人の騎士が右手を挙げてそう話す。
アーウィンは頷いて騎士へ促し、騎士は返事をして案内をし始めようとする。
「妾はここに残るのじゃー。」
「ん。私も残る。」
「んー、皆でそのリュファスって人の所に押し掛けるのも悪いし、あたし達もここに残ろっか。」
「そだね。」
「うむ。」
「分かった。皆、教皇様の事をお願いね。教皇様、僕達は一旦失礼します。」
『(こくっ)』
「分かりました。」
そこへ朔夜と雫がそう言い、エルマ、イルマ、ジークフリートの3人が顔を見合って頷いた後にエルマ、イルマ、ジークフリートの順番でそう話す。
凛は返事してからそう言うと朔夜達は頷き、フィリップは笑顔で答える。
「…こちらの部屋です。」
「ありがとうございます。ここまでの案内のお礼に…こちらを差し上げますね。良ければ後で皆さんで召し上がって下さい。」
「!…ありがとうございます。では、私はこれで失礼致します。」
凛、美羽、エリオット、アーウィン、レイラの5人は騎士の案内で5分程歩き、やがて1つの部屋の前へと辿り着く。
騎士は右手で部屋の入口を指し示しながらそう言うと、凛は騎士にお礼を言った後に話をしながら無限収納から小さな袋に入ったクッキーを取り出し、騎士へ渡す。
騎士は軽く驚いた後に凛からクッキーの入った袋を受け取り、そう言って頭を下げてから離れて行った。
「(こんこん)…失礼します。こちらにリュファスと言う方がいらっしゃると聞いてやって来たのですが…。」
「えー、また追加で勉強…え、あれ…日本人、なのか?」
「僕の事を見て日本人と言う単語が出たって事は…貴方も転生者なんですね。」
「も?それに僕?君…もしかして貴方、僕っ娘ってやつですか?」
「知り合いに今はそうなってしまった人はいますね。ですが、僕はこう見えて男なんですよ。」
「髪を逆立たせているからワイルドそうな人だなぁとは思ってましたが…まさか男の人だったとは。それに今はって…突っ込み所が多過ぎて何が何やら…。」
凛はノックして顔だけをひょこっと中に入れてそう言うと銀髪の少年…リュファスが嫌そうな表情で振り向き、凛の顔を見て驚いた表情となって話す。
凛も少しだけ驚いた表情となってリュファスと話をし始める。
そして凛や美羽達は部屋の中へと入り、リュファスと自己紹介等を行うのだった。




