29話
「藍火、名付けの影響で眠っちゃったか。でもこれで今日の深夜か、明日の朝には紅葉達の時みたいに進化を終えるてんだろうね。起きたら人間じゃなくて竜の状態だったりして。」
凛は軽く笑顔を浮かべ、藍火の頭を撫でながらそう呟いた。
「藍火ちゃん、元は体長3メートル位のワイバーンだったんだもんね。進化したらもっと大きくなるのかな?」
「あー…僕が倒した森林龍はかなり大きかったし、暁の時も名付けの影響でホブゴブリンからグレーターオーガに進化して大きくなってたもんなぁ。藍火もそうなるかもしれないってのは充分に考えられるね。あ、進化した影響で、いきなり人化スキルが解除されるかも知れないって可能性もある訳か。」
「それで夜皆が寝ている時に大きくなったら、びっくりして起きちゃうかもね。」
「そうだね。屋敷が壊れても土魔法で修理すれば良いだけだから僕は全然構わないけど、皆が折角眠っているのに起こしたら悪いもんね。藍火が進化した影響で魔物の姿に戻ったとしても大丈夫な様に、屋敷の隣に倉庫みたいな大きさの建物を建てようかな。」
「そだね。それならボクも手伝うよ♪」
「ありがとう。それじゃ行こうか。」
「うん♪」
凛と美羽はしばらく話し合いを行い、共に笑顔で立ち上がった後にリビングから出て行った。
「…さて。それじゃオレは、凛達の様子を見に行ってみるとするかな。」
凛と美羽がリビングを出てから10秒程経つと、火燐がそう言って立ち上がった。
「私も。」
「それじゃーあたしもー!」
「私も行ってみます…。」
するとそれに触発されたのか雫、翡翠、楓がそれぞれそう言って立ち上がった後にリビングを出た事で、紅葉達もその後に続く形でリビングから出て行ってしまう。
「おいおい…。誰がこいつを見るんだよ…っと。」
火燐は真っ先に立ち上がったにも関わらず、最後まで残る事になってしまった。
その為火燐は呆れた表情を浮かべてそう呟いた後、藍火を抱き抱えてリビングを出る。
「うーん…屋敷を出て右側には客間があるから、反対の左側に建てるか。ついでに家の外側に塀も…って皆来たんだ。火燐、藍火を気に掛けてくれたんだね。ありがとう。」
「はっ、良いって事よ。…それによ、こいつはオレの部下になるんだろ?なら大事にしないとな。」
凛は外に出た後、どこに建物を建てようかと悩んでいたのだが、そう言っている内に後ろに皆が立っているのが分かり、その1番後ろで火燐が藍火を抱き抱えている事が分かった。
その為凛は火燐にお礼を言うと、火燐はそう言いながら照れ臭そうにそっぽを向いたものの、すぐに優しい表情で藍火の事を見る。
「あー!火燐ちゃんがデレた♪」
「デレた。」
「デレたねー!」
「デレましたね…。」
「お前ら!デレたデレたうっせーぞ!大体、皆して藍火を置いてさっさと行きやがって!」
美羽が右手を口元にやりながら笑顔で火燐をからかうと、雫、翡翠、楓は頷きながら同意する様に話す。
火燐は美羽達の言葉を受けて凄く腹が立ったのか、藍火を抱き抱えたままそう叫んで地団駄を踏む。
「大丈夫。皆貴方が面倒見が良いって分かってたから、藍火の事を任せていた。」
「う"っ。…そうかよ。」
雫は火燐を真っ直ぐ見ながら澄まし顔で話すと、火燐はストレートに言われた事で恥ずかしくなったのか、言葉に詰まってしまう。
そして火燐は再び照れ臭そうにしながら唇を尖らせてそっぽを向いてそう呟いた為、それが切欠で皆に笑われてしまうのだった。