298話
1時間後
凛達が騎士達から懺悔を受けている間、段蔵は他人とコミュニケーションを取るのが苦手な事もあり、凛が破壊した騎士達の武器を無限収納内へ回収して回る。
その後ナビが無限収納内にて武器の修復を行う、と言う流れを繰り返していた。
そして凛はエリオットを捕らえる様にと指示を出したグロリアスナイツ達から、今回の件は枢機卿からの指示である事を伝えられる。
「…さて。色々とありましたが、これで指示を出した大元が枢機卿である事が分かりました。僕達はこれから女神教本山へ向かおうと思うのですが、アーウィンさんはこれからどうされますか?」
「…凛様が良ければだが、私も付いて行って良いだろうか?」
「僭越ながら、私も付いて行かせて頂けると…。」
「勿論良いですよ。」
凛は情報を得た事もあり、満足した様子でアーウィンへそう伝えると、アーウィン…そしてレイラがそれぞれそう返事を返した。
これに凛は頷いて答えた後、凛達一行は本山に行くのをためらったタッド達と一旦別れ、代わりにアーウィンとレイラを加えて女神教本山へ向かう事に。
「…ほれ、これで其方達の武器を全部出し終えたのじゃ。妾達はこれから本山とやらへ向かう故、妾達がいない間にタッド達へもしもの事があれば…分かっておるの?」
『(ぶんぶんぶんぶん)』
「うむ。」
凛がアーウィン達と話している間、朔夜が地上から3メートル程の高さに無限収納の空間の裂け目を設置し、そこから修復の済んだ騎士達の武器を一気に出す作業を行っていた。
騎士達は勿論そう言った光景を見るのは初めてなのだが、まるでスロットのジャックポットでも当たったかの様に、次々に武器が空中からドサドサドサと流れ出て来るのを見て絶句していた。
朔夜は武器を出し終えた後に妖艶な笑みを浮かべ、騎士達を見回しながらそう尋ねる。
それに対して騎士達は必死な表情で何度も頷くしか出来なかった為、朔夜は満足気な表情で頷く。
余談ではあるが、その後凛達が本山へ向けて女神騎士団から出て言った事で、騎士達は色んな意味で力が抜ける事になる。
そして今後、この様な思いを2度と味わいたくないと言う事もあって、女神騎士団は規律と訓練を重んじる様になる。
10分後
「凛様、ここが女神教本山だ。」
「おお!聖都に入る前から分かってはいましたが、本山ってとても大きいんですねー!」
「じゃが、あまりに白過ぎて逆に目がチカチカするのじゃー…。それに胸の奥がこう…ざわつく様な感じもするのじゃ。」
「あ、朔夜にとっては(光魔法を扱える者が多い為)良くない場所になる訳か。ナビ、朔夜の負担を軽くして貰える?」
《畏まりました。》
「…お、体が軽くなったのじゃ。凛よ、すまぬの。」
「いえいえ。こちらこそ気が付かずにごめんね。」
凛達は女神騎士団本部を出てからアーウィン先導の元で移動を行い、やがて地球で言う所のウェストミンスター寺院に少し似た形をした、ちょっとした反射板の様に真っ白に光る女神教本山へとやって来た。
因みに凛達は移動中凛達を挟んでアーウィンが前、レイラが後ろと言う編成だったのだが、道行く人達は凛達を見てどこの偉い人なのだろうかと首を傾げていたりする。
そしてアーウィンが左手で本山を指し示しながらそう言うと、凛達の視線の先には白く光る本山の巨大な建物の姿が広がっていた。
凛は本山を見て少し眩しそうにしながらも感動した様子で言うと、右斜め後ろにいた朔夜が複雑そうな表情でそう言う。
凛は思い出した様にして朔夜に言った後に少し上を向いてナビへそう頼み、ナビは返事を行った後に朔夜への防護壁を厚くする。
朔夜はスッキリした表情で凛にお礼を言い、凛は笑顔で答えていた。
「…美羽、雫、それにライムまで…。確かに本山が少し眩しいのは分かるんだけど、既にサングラスを掛けてるなんて準備が良過ぎるでしょ。」
「アーウィンさん達の所からでもこの場所が見えてたからねぇ。」
「ん。必要になると思って準備をしてた。ライム、皆に配ってくれる?」
「…良いとも。」
「…初めてサングラスを掛ける筈なのに、意外と皆似合うものだね。それとライム、無理して雫に付き合わなくて良いんだからね。」
「…大丈夫。」
そして凛の視線の先では、雫と雫の隣にいた美羽、更にはそれまで大人しく雫の肩に乗っていたライムまでもがタ○リさん風のサングラスを掛け、揃って本山を眺めていた。
凛はその2人と1体の様子を見て、苦笑いの表情を浮かべながら突っ込んだ事で美羽も苦笑いの表情で返事する。
しかし雫は淡々とした様子で凛への返事を行った後にライムへ促すと、ライムが返事して雫の肩から飛び降り、腕の様に伸ばした体を使って皆に同じデザインのサングラスを渡していく。
それまでエルマ達も眩しそうな様子で本山を見ていたのだが、足元にいたライムから体を伸ばして渡されたサングラスを掛けた後に再度本山を見た事で、少し驚いた表情となっていた。
凛は皆の様子を見て何とも言えない表情でそう呟き、地面を這っているライムにそっと突っ込む。
ライムはそう言って雫の肩に乗ってぷるぷると震えるのだが、普段と違ってどこか誇らしげだった。
そして(あの後ちゃっかりアーウィンとレイラの2人もサングラスを着用する事になった)一行は敷地内に入ってから100メートル程進み、入口に立っていた騎士達と軽くやり取りをして本山の中へと入る。
「まずは凛様を教皇様へ会わせようと思うのだが…それで宜しいか?」
「分かりました。」
本山の中へ入った事で大分眩しさが緩和された事もあり、一行はサングラスを外す。
そしてアーウィンが歩きながら顔だけを少し横へ向けて凛に話し掛けて凛が頷いた為、一行は教皇の間へと向かう事になるのだった。




