286話
一方、凛達もスイーツ店を出た後に領地の各地を回っていた。
凛達は歩いて移動していたのだが、その直ぐ横では人族や亜人族や獣人族が、人種の壁を越えて笑いながら話をしている事が多々あった。
女神騎士団の兵士達は、女神教が全人類平等を謳ってはいるものの、実際は人族至上主義である事を教えられてきた。
そして神国に住んでいる亜人族や獣人族もその事がなんとなく分かっているからか、あまり人族とは深く付き合わない傾向にある。
その為女神騎士団の兵士達は、屋外で様々な人種が笑い合う等まず有り得ない光景だと思ったからか、それらを複雑な表情で見ていた。
その後凛は歩きながら、領地で働いている人の大半が人間の姿をした魔物である事を話す。
その際に先程のスイーツ店で働いているのはハーピィクイーンを中心としたハーピィ達である事や、先程お茶を飲みに来た4人や朔夜と段蔵が神輝金級の魔物である事を説明する。
それを聞いた兵士達は一斉に朔夜達の方を向くが、にこりと微笑んだ朔夜や軽く会釈で返された段蔵を見て、肯定されたと感じたのかぞっと顔を青ざめさせていた。
ポールを含めた商国の人達は、凛達と一緒に幾つかの店や武具屋、ルークの鍛冶場等を見た事で少しでも円滑に商売を行いたいと判断した様だ。
ポールはここ第1領地に新しく商業ギルド総本部を建てたい事や、ここを起点として世界中に商品を届けたい事を凛に伝える。
凛はその方がメリットがある為、ポールの申し出を承諾した事でポール達のテンションは現在高い状態となっている。
「それじゃ次は、皆が手合わせしている運動場へ行ってみましょうか。…渚の所、凄い行列だね。」
「まぁかき氷も今日から新しく販売する様になったし、渚ちゃんはセルシウスさんと仲が良いみたいだからね。…って言うか、2人共綺麗な見た目をしてるからか男性の客が多いって言うのがね…。」
「男性客達は渚達を目当てに並んでいるのかしら?」
「恐らくね。リーリアやヤイナの所で手合わせした後に渚の所へ来た…とかだったりして。」
「それは普通に有り得そうだね…。」
「まぁでも、出会った頃の渚は自分中心だったからか、誰かと一緒に何かをするなんてとても思えなかったんだよね。森の開拓を続けてくれても全然問題なかったんだけど、他にやりたい事を見付けてくれて良かったよ。」
凛がそう言ってポール達を運動場へ向けて案内していると、視線の先で屋台の前に長い行列(ただし殆どが男性)が見えた為か一旦止まり、苦笑いの表情でそう話す。
そこへトーマスのお手伝いをしたいキュレアを気遣ってか、つい先程凛に合流して来たステラとリナリーがそれぞれそう言った。
凛は頷いた後にそう言い、ステラは少し困った表情でそう話す。
渚は昨晩雫が持ち込んだかき氷の事を気に入り、氷の大精霊であるセルシウスへ一緒に店を出さないかと尋ねる。
セルシウスとしても何かしらで凛に貢献したいと思っていた為、渚からの申し出を了承する。
そこへ凛が運動場横で屋台を開けば人気が出るのではないか、と伝えた事で渚とセルシウスはやる気になり、早速今日から店を開く事にした様だ。
凛はセルシウスは肌の色が水色の為か客を驚かせるのではないかと思い、万物創造を使って見た目を変える『変化』と言うスキルを作る。
凛は早速その場でセルシウスの水色の肌を自分達と同じ肌色へと変えた後、自分達を客に見立てて接客の練習を行い、先程午前8時から開店していたりする。
セルシウスが立方体状の氷の塊を生成し、(凛が用意した)魔導かき氷機でふわふわとしたかき氷を用意する。
それを渚が客から注文されたシロップで味付けをした後、客へ提供する流れとなっている。
シロップの味はイチゴ、レモン、コーラ、メロン、モモ、マンゴー、パインの7種類を用意した。
渚はセルシウスと色違いの水色のチャイナドレスを身に纏っている為か、(時雨と氷雨の時もそうだったが)見方によっては姉妹の様に見えなくもない。
そして2人のチャイナドレスのスリット部分から見える、スラリと伸びた足に客の視線が集まっている様だ。
偶に渚達の足を見てはごくりと生唾を飲む者がいるのだが、もし実際に渚達に手を出したとしても、待っているのは悲惨な結果だけとなっているだろう、、、
因みに、ベレー帽やニット帽は商店で買えるのだが、(以前美羽達が着ていたナース服等の)コスプレ衣装は取り扱っていない。
その為凛に内緒でこっそりホズミ商会で販売する事になり、渚達が着ているチャイナドレスも今後はホズミ商会で販売される事になる。
この事は(コスプレをいつもさせられると言う苦い経験がある)凛に内緒となり、凛は領地内で見掛けてもコスプレイヤー的な人が頑張って自作で作ったんだなと思う様に。
「渚はわしが育てた…。」
「雫…いきなり現れたと思ったら…何その格好。って言うかそれって、マクスウェル様の真似とか?」
「「(ぷるぷる)」」
「…オレは突っ込まねぇぞ。」
「残念なのぢゃ…。」
「「ぶふっ!!」」
「雫…それ妾の…。」
「ちょっ、雫ちゃん!それはズルい!」
「あーはっはっは!!」
そこへ凛達の後ろから杖を持ち、立派な白い付け髭を付けた雫がぷるぷると震えながらゆっくりと歩きながら老人の口調でそう言った。
凛は後ろを振り向き、何やってるの…と言いたそうな表情で雫へ尋ね、美羽とステラは雫を見て笑いを堪えてるのかぷるぷると震えていた。
そして火燐も呆れる様にそう言うと雫は困った表情になり、朔夜に寄せた言い方でそう答えた。
それに美羽とステラは我慢出来なくなったのか吹き出してしまい、朔夜は困った様子で雫へそう言う。
そして美羽はそう雫に突っ込みながらもしっかりと笑い、ステラはお腹を抱えて笑うのだった。