27話
凛達はサルーンを出てから30分程時間を掛け、女性はあちこち汚れが凄い事になっているが無事(?)に屋敷へ帰り着いた。
「ただいまー。」
「おう凛お帰り…って誰だそいつ?」
「人化スキルで人間になった元ワイバーンさんで、僕達の新しい仲間だよ。火燐もさっき戦ってたからも分かると思うけど、ワイバーンは炎属性の竜みたいでさ。この子には火燐の下に付いて貰おうと思ってね。」
「宜しくお願いするっす。」
先頭にいる凛がそう言って屋敷に入ると、火燐がひょこっと顔を出しながら返事を返して来た。
しかし凛の後ろに見慣れない女性がいた為、女性を窺う様にして尋ねる。
凛が右手で女性を指し示しながら軽く説明を行い、女性はそう言った後に火燐へお辞儀をする。
「ふーん、そうなのか。ワイバーン達が来たのはこっちだけじゃねぇだろうなとは思ってたけどよ、まさかワイバーンを仲間にしただけじゃなく、人に変えるとはな。」
「そうなんだよ。僕達の所は10体だったけど、こっちには沢山ワイバーンが来てたもんね。」
「なんだ。驚かせようと思ったのに、凛は知ってたのかよ。」
「え?ここにも同胞達来たんすか?」
「あぁ、ざっと50体位かな?数が多くて面倒だったぜ。」
「自分達の集まりはそこまで多くないから、別な集落にいた同胞っすかねぇ。しかし結構な数っすね。」
「火燐達なら大丈夫だと思ったから、僕はそのまま君を連れて街に戻ったんだ…っと。いつまでもここで立ち話もなんだし、僕達もリビングに向かおっか。」
「そうだな。」
「はーい。」
「はい。」
「はいっす。」
「あ、でも君は結構汚れてるからお風呂が先だね。美羽、悪いんだけど洗って貰って良いかな?」
「はーい♪」
「?」
凛、火燐、女性の3人はしばらくの間玄関で話をした後に皆でリビング…ではなく、女性は美羽に背中を押される形で浴室へ向かって行った。
それから10分程シャワーのお湯を掛けられた事で驚いたり悲鳴を上げる声が、それと美羽に体を洗われた事でくすぐったそうにしている声がリビングまで響いていた。
凛は先程ワイバーンと戦っていた際、サーチで自分の屋敷が襲われている事が分かっていたのだが、火燐達なら問題ないと判断してサルーンに戻る事にした。
対する火燐はワイバーンを50体討伐した事で凛に自慢する気でいたのだが、凛は分かっていた為か話の途中で少しだけ拗ねた様子を浮かべていた。
「…と言う訳で、サルーンの街の住民票は貰えたし、貯まっていた魔物の解体のとりあえずは目処が立った。予想外とは言え新しい仲間も増えたし、良い事尽くめだったよ。」
凛は風呂上がりの女性を自分が座っているリビングの入口に近いソファーの右隣に座らせ、自身の左には美羽に座って貰った後、改めて皆にサルーンの街で起きた経緯の説明を行った。
「それと、今日はもう少ししたらオークキングの解体が、明日の夕方には森林龍の解体が終わる予定だそうだよ。だから後でオークキングの肉を受け取りに、街へ向かう予定って所かな。それで、こちらが新しく僕達の仲間に加わった子だよ。それじゃ、挨拶お願いね。」
「初めまして。若輩者ではありますが、皆さん宜しくお願いするっす!」
「今からこの子に名付けを行いたい所なんだけど、その前に皆へ言っておきたい事があるんだ。」
「…?」
凛は説明を加えた後に右手で女性を差し示して女性へ促すと女性は立ち上がり、皆へ向かって軽く挨拶をしてお辞儀を行う。
凛は女性がお辞儀をしている間にそう話していたのだが、それまでの笑顔から一転して真面目な表情となった。
女性は頭を上げた後、あれ?そこはすぐに自分への名付けをしてくれる所では?と言いたそうな、少し不思議な表情となって凛の事を見ていた。
「恐らくだけど…今回のワイバーンの襲来は、僕に関係してると思うんだ。」
凛は女性からの視線に気付かないまま、真っ直ぐ皆の方を見てそう話すのだった。