282話
前話での翔と紫水達の登場シーンを変更しました。
「マスター、もう少ししたらアレックス皇子や藍火ちゃん達が帝都へ着くんだよね?その後にボク達が合流して、帝都を観光する予定だったんじゃ…。」
「そうだね。けど原因はどうあれ、こうやってエリオットさんがサルーンから連れ去られた訳だし、僕達が助けなかったらどうなっていたか分からない。これは管理者として見過ごせないかなって思ったんだ。それに僕達は襲われた側とは言え、そちらの兵士さん達にとばっちりが行くのも申し訳ないしね。」
『(管理者…?)』
「そっか…女神教の考え方次第では、エリオットさんが無事にサルーンへ戻って来れるとは限らないって事なんだね…。それじゃあ、ボク達も馬車に乗って、このまま神国迄行くの?」
「うん。そうしたいのは山々だけど、今の僕達にはあまり時間がないからね。だからエリオットさん達には、僕達の事情を説明して協力を貰おうと思うんだ。勿論ポータル込みでね。だから美羽、悪いんだけど早速ポータルを使って、喫茶店にいるイルマとエルマを連れて来てくれるかな?」
「エリオットさん達にボク達の事を話すんだね?はーい、分かったー♪」
『!?』
美羽は今後行うであろう帝国の観光や、それに向けての領地開拓等の予定が詰まってる事を考えたのか、疑問を浮かべた表情で凛へ尋ねる。
凛は頷いた後、苦笑いの表情で説明するのだが、その間に出た管理者と言う言葉にエリオットや兵達が疑問を浮かべていた。
因みに、兵達の隊長は翔が魔物の姿で着地した際に1番近くにいた事で気絶しており、色々と悲惨な状態となっていたりする。
美羽が頷いた後に凛へ尋ね、凛も同様に頷いて美羽に尋ね返す。
美羽は右手を挙げて元気良く返事した後、ポータルを使って喫茶店へ向かった事でエリオットや兵達を驚かせる事となった。
「…何やら楽しそうな事になって来た様じゃの。」
「あれ?朔夜?どうしてここに?」
「ナビからここで起きた事を教えて貰っていたのじゃ。凛がこうやって介入するのは初めてじゃからの、面白そうな予感がするし妾も神国へ参るぞ。」
「…。」
「あー…まぁ、説明の手間が少し省けたと考える事にしようか。それじゃあさ朔夜、右手だけ龍に戻して貰って良いかな?」
「分かったのじゃ。…ほれ。」
『…!?』
美羽がいなくなって5秒程経ち、ポータルを使って凛の後ろへと移動して来た朔夜がそう言った。
凛は朔夜が先程迄屋敷で寛いでいると思っていた為、後ろを振り向いて不思議そうに尋ねると、朔夜はにやりと笑って答える。
そして朔夜の後ろには、いつもの様に段蔵が控えていた。
凛は苦笑いを浮かべて言った後に朔夜へそう伝えると、朔夜は返事をして右手の肘から先に黒い靄で覆った後、今迄の人間ではなく(元の状態の3分の1位の大きさではあるが)巨大な黒いドラゴンの物へと変える。
エリオット達は美女がいきなりやって来た、等と思っている内にその女性の右肘から先が異形の物へと姿を変えた事に驚く。
「マスター、戻ったよー♪…って、あれ…朔夜ちゃん?右手だけ龍に戻ってるけどどうしたの?」
「ナビから今迄の経緯を聞いたら、一緒に神国迄付いて行きたくなったんだって。右手だけ戻したのは、これからの説明の補足にと思ってね。エルマ、来て貰ったばかりで悪いんだけど、翼を出して貰って良いかな?あ、イルマは戻さなくて大丈夫だよ。」
「成程…。」
「良かった…。」
「喫茶店で仕事していたら、いきなり美羽ちゃんに引っ張られてこっちは驚いてるんだけど…まぁ、良いか。…凛さん、これで良い?」
『………。』
そこへ美羽がポータルを使い、エルマとイルマを連れて戻って来た。
美羽はポータルの出口付近から跳んで出て来たのか、嬉しそうに右手を挙げながらとんと着地した後にそう言った。
しかし戻ってみると、先程はいなかった朔夜が右手だけを龍に戻している、と言う状態を不思議に思ったのか凛へ尋ねる。
凛がそう説明すると美羽は相槌を打ち、(禍々しい悪魔の羽を出す事に抵抗がある)イルマはそう言って安堵の表情を浮かべる。
そしてエルマが苦笑いの表情を浮かべてそう言った後に3対6枚の天使の翼を広げた事で、エリオットや兵達は呆然となるのだった。