280話
「(異端者か…。あれ?でもこの隊長さん…僕の黒髪を見て言っていたけど、里香お姉ちゃんも会った時は黒髪だったよね。昔、皆と協力して戦ってた時に、里香お姉ちゃんが態と髪の色を変えてた事も考えられる。けど、エリオットさんは黒髪は珍しいって言っていたし、時間が経つに連れて教会側が自分達の都合の良い様に解釈を変えたって事も…。)」
「どうした?異端者認定された事がそんなに驚…。」
「済みませんが、エリオットさんと話をするので貴方はちょっと黙ってて下さいね。」
「むっ、むがー!」
「エリオットさん。神国にとって、僕みたいな黒髪はどの様に扱われてます?」
「…一言で言えば厄災である事を表してますね。凛様には申し訳ありませんが、不吉の象徴と申しますか…。ですので神国では、黒い髪色をしていると言うだけで、周囲の方々から普通に後ろ指を指されます。」
『………。』
兵士から言われた事で凛は考え込むのだが、兵士から茶々を入れられた事もあって考える事を止める。
凛はエリオットの方を向いて(兵士を見ずに再び糸の束を飛ばして猿轡の様にした後)そう尋ねると、エリオットは申し訳無さそうに答える。
その様子を兵達は黙って見ていた。
「やはりそうでしたか…。因みになんですけど、創造神様はどんな髪の色をしてるかとか、神国はどんな髪の色が多いかとかは分かります?」
「女神様の髪色…ですか?私は真っ白だと伺っておりますが…。それと、神国では色々な髪をした方がおりますが、金色や銀色、それと真っ白な髪の色をした方が女神教の上層部に多いですね。」
「真っ白ですか。(んー…領地にもエルマみたいに白い髪色の人が何人かいたし、女神教の偉い人達が解釈を変えたと考えた方が良さそうだね。上層部の髪の色は金、銀、それと真っ白なんだ。となると…)…分かりました、ありがとうございます。」
「いえ…。凛様、難しい顔をなさっていますが、大丈夫ですか?」
「あ、はい、大丈夫です。僕の領地にある喫茶店でエルマって言う天使の女の子が働いてるんですけど、女神様はその子みたいな白い髪色をしてるのかなぁって考えてました。」
「何と!白い髪色をした女性は天使であらせられたのですか!私はてっきり、髪の色こそ違いますが、翼の生えたお嬢様が天使なのかとばかり…。」
凛とエリオットは難しい表情で話をしていたのだが、途中でエリオットが心配そうな表情で凛へ尋ねる。
凛はぱっと笑顔になって答え、エリオットは驚いた表情でそう言う。
「翼が生えたと言うのは梓の事ですね。梓は主の僕から見てもとても可愛いらしい子だと思います。」
「はい…。あの様な方と一緒に生活を送ってみたいものです。」
「(えっ?エリオットさんって、もしかして…)そうなんですね。それじゃ、エリオットさんは梓が勤めている喫茶店に何度かいらした事が…?」
「はい、何度かございます。」
「(やっぱり。これは少し予想外だったよ…。)梓達がいる喫茶店は人気ですもんね。彼女達目当てに来る方も多いんですよ。」
凛は笑顔で答えるのだが、エリオットがしみじみと頷いた事で内心困ってしまう。
そして凛は軽く探りを入れる様にしてエリオットへ尋ねると、エリオットは笑顔で答えた為凛はそう思いながら言葉を濁す。
どうやらエリオットは、聖職者であると同時にロリコンだった様だ。
「え…?」
「キュッ?キュッキュ?(美羽?どうかしたの?)」
「ううん、何でもない。…けどシエルちゃん、暫くの間人間になっちゃ駄目だよ?」
「キュウ…キュキュッ。(うーん…よく分からないけど分かった。)」
美羽はエリオットの意外な一面を見て驚いており、シエルはそんな美羽を見上げながら不思議な様子で美羽に尋ねていた。
美羽はシエルへ諭す様に言い、シエルは首を傾げながら答える。
もしここに雫がいたとしたら、間違いなく瞳を呼んでいた事だろう、、、
「へくちっ!」
「(梓ちゃんって、くしゃみまで可愛いんだね…。)梓ちゃん、ドラゴンなのに風邪引くんだね。」
「梓ちゃん、大丈夫?」
「んー…風邪では無いと思うのですが、ちょっと分からないのです…。」
一方その頃喫茶店では、仕事中の梓が可愛らしくくしゃみをしていた。
エルマはそう思いながらも苦笑いを浮かべてそう言い、イルマは心配そうに梓へ尋ねる。
梓は不思議そうにして少し考えるのだが、直ぐにいつも通りだと分かり、普段通りに仕事を再開するのだった。