275話
『………。』
「レオン様、お願いだから顔を上げて欲しいんだけど…。」
「今迄知らなかったとは言え、俺…いや私達は凛様に、数え切れない程の非礼極まりない態度を取ってしまいました!申し訳ございません!」
『申し訳ございません!』
「(ここ迄平伏されたのはエルマ達の時以来か、参ったな…。)レオン様、僕は気にして無いから大丈夫だよ。」
凛がレオン達にうっかり自分が創造神の弟である事を暴露してしまった事で、その後レオン達が慌てて土下座を行い、氷の精霊の女性も釣られる様にして土下座を行った。
それから1分程経つのだが、レオン達は土下座のままピクリとも動かなかった。
困った凛はレオンの前に正座してそう言うのだが、レオンは土下座のままそう言って謝罪し、タリア達や女性も土下座のまま謝罪した。
凛はこの感じがは懐かしい等と思いながら、そう言ってレオン達を宥める。
嘗てエルマとイルマを助けた際に、一気に説明した事で暫くの間土下座のまま動こうとしなかった。
その経緯もあって、新しく配下や仲間になった者がある程度時間が経った頃に少しずつ教えると言う方法を行ってきたりする。
「いや…凛様達は強いなとは思っており…いたんだが、まさか創造神様の関係者とは…。しかもリルアースとは違う世界か、それで見た事が無い物が沢山あったって事なんだな。」
「ん。それと、今は違うけど元々は私達も半人半精霊だった。」
「そうなんだ。…それなら、私も連れて行っては貰えないかしら?私も貴方達の様に強くなりたいの。」
「ん。強い仲間は大歓迎。…貴方の事は何と呼べば良い?」
「私…今でこそ魔素を吸収し続けたおかげで人間達で言う神金級の強さなんだけど、元々は低級の精霊だったのよ。今のこの姿になったのも、取り敢えず成長が打ち止めになった500年程前の事だしね。…だから私に名前なんて無いわ。」
「…だって。」
「…雫、そこで僕に振るんだね。」
更に10分程経ち、どうにかレオン達を宥めた後に(様付けになったものの)普段通りに接して貰う事が出来た。
そして凛は改めてレオン達に違う世界から来たと言う事や、自分達が管理者と言う立場等を含めた説明を行う。
その際に朔夜と段蔵の本来の姿を見せたり、ステラも神輝金級上位の強さである事を説明したのだが、どうやらそれが功を奏した様だ。
結果的にタリアは朔夜と、サラとシーラはステラと、(段蔵が龍と言う事で憧れとなった)レオパルドとレオネルは段蔵とより親しくなる。
一通りの説明を終えた後、複雑な表情のレオンがそう言った。
雫は女性と話をした事で、先程出た半人半精霊と言う単語に可能性を感じた様だ。
レオンの方を向いてはいるが、昔を思い出す様にしてそう答える。
女性は大戦時、今の強さでは無く低級精霊と言う事もあってか、あまり活躍出来ないまま消耗したと言う苦い思い出があった。
その為現状の強さになっても満足しておらず、更なる高みを目指したのか真面目な表情で雫へそう言う。
雫は女性の方を向いて頷いた後に尋ねると、女性は少し悲しそうにそう話す。
雫は顔だけを凛に向けてそう言うと、凛は苦笑いでそう答えた。
「(んー…氷の精霊だから名前は直ぐに決まったけど、既に神金級の強さだからリスクがなぁ。それにここで名付けってのもね…。ナビ、一先ず名付けの準備をして貰ってて良い?)」
《こうなるかと思い、既に準備を終えております。》
「(流石だね。となると、後は場所か…。この精霊さんを休ませる為にも、名付け部屋に移動しないとかな?)」
《はい。それが宜しいかと。》
『(じっ)』
「…凛、こちらの精霊様に名付けを行うのか?」
「…ん?そうだね。けど、朔夜を除いた全員が名付けの影響で気を失っているから、休ませる為にも場所を変えた方が良いかなって考えてたんだ。」
凛はナビと打ち合わせを行っている間、レオン達…特に女性から熱い視線を送られていた。
凛はナビと念話で話しながら、ここで名付けを行う事で自身がふらついたり、女性が倒れる事を想像している様だ。
レオンはナビの声が聞こえない事もあってか、凛が女性に与える名前を考えていると判断した様だ。
レオンが凛へ尋ねると、凛は我に返った様に返事を行った後、皆へ向けてそう説明する。
「そうか。何事も無ければこのまま王城へ向かおうと思っていたんだが、色々と事情が変わったしな。凛様のやりたい様にして貰って構わない…が、俺達も名付けを行う所を見てみたい。」
『(こくこく)』
「(名付けって、そんなに大きなイベントって訳じゃ無いんだけどな…。名付けをする事自体が珍しいからなのかな?)…分かった。それじゃ、名付けた事で体が大きくなる事は無いだろうけど、皆で名付け部屋へ向かおうか。」
「おう。(…凛様が言ってた名付け部屋ってのは、名付ける為の専用の部屋って事か。それだけ多くの者達に名前を付けたって事なんだな…。)」
レオンが凛へそう言うと、タリア達が同意する様に何度も頷いて期待感を露にする。
凛は内心そう思った後にそう伝えてレオンが返事をした事で、一行は屋敷の敷地内にある名付け部屋へと向かう。
そしてレオンは移動しながらそんな事を考えていた。
「…さて、僕も流石に精霊に名付けを行った事が無いからね、実は少しだけ緊張していたりするよ。それじゃ、貴方の名前は『セルシウス』だ。セルシウス、これから宜しくね。」
「セルシウス…くっ(パァン)。分かりました、これから私はセルシウスと名乗らせて頂きます。凛様、これから宜しくお願いします。」
「(まさか、自分の両頬を叩いて進化への眠気を吹き飛ばすなんてね。かなり痛そうに見えたけど凄い根性と言うか、忠誠心と言うか…。)うん、宜しく頼むよ。」
『………。』
凛は名付け部屋の中央で、女性ことセルシウスにそう言った後に名付けを行った。
セルシウスは名付けられた事で、リンクを通じて凛から大量の魔素が流れて来る。
それにより猛烈な眠気に襲われるのだが、セルシウスは(凛が創造神の弟と言う事で絶大な信頼感を持つ様になった為)ここで失態を見せる訳にはいかないと判断した様だ。
眠気により右膝を突くものの、両手で思いっきり頬を叩いて一時的に眠気を覚まして立ち上がり、真っ直ぐ凛の事を見てそう言った後に跪く。
凛は内心セルシウスの心配をしながらも、笑顔でそう答える。
レオン達は以前レオパルドから聞いた様な名付けを行うと思っていた為、セルシウスが両頬を叩く所を見て唖然としていた。
美羽達も関心したり、苦笑いを浮かべる等してその光景を見ているのだった。