274話
「「はっ!」」
ガキィィン
「うぉっ!」
「キュッ(きゃっ)!」
凛と女性が互いにそう言って放った蹴りが斜めに交差した事で、硬い物同士がぶつかる音と同時に衝撃波が生まれる。
レオンとシエルは凛から少し離れているとは言え、美羽達よりも近い位置で見ている事もあってか凛達が放った衝撃波に驚いていた。
これによりレオンは危ないと判断したのか、美羽達がいる部屋の入口迄下がる事に。
「…やっぱり。その服装を見て思っていたんだけど、足技を主体にした戦い方をするんだね。実は僕もそうなんだ。」
「あら…それは嬉しい事を言ってくれるじゃない、のっ!」
「よっ。」
「はっ!はっ!はっ!せいっ!」
「おっ、とっ、とっ、とっ!…っと。」
凛と女性は少し距離を取って向かい合った後、凛は軽く笑ってそう言った。
女性は少し嬉しくなったのか口角を上げ、そう言って凛へ向けて飛び蹴りを放つのだが、凛はそれを右に半歩ずれて避ける。
女性は着地して直ぐに凛へ向けて跳んだ後、空中で3連続回し蹴りを放った後に踵落としを叩き込む。
凛はそう言いながら回し蹴りを小さなバックステップで避け、踵落としを左のサイドステップで避けた。
「マスター良いなぁ…。ボクも混ざりたい…。」
その後も凛と女性は足技をメインに攻撃を仕掛けたり避けたり防いだりと言った戦いを繰り広げるのだが、美羽がそう言いながら戦いの様子を見ており、雫達は複雑な表情でそんな美羽の事を見ていた。
「双掌波っ!!」
「うーん、ちょっと甘かったかな。それじゃ…お返しするね!」
「何?うぁっ!」
「すげぇ…。」
『(こくこく)』
やがて女性が力を溜めてから波○拳の様な構えを取った後、距離は短いものの直径3メートル程の半球状の衝撃波を自身の前方に放った。
凛はそれを女性の左に回り込む様にして避けた後、少し構えは違うものの同じ様に両手を使い、女性が放った物よりも少し弱めにした衝撃波を攻撃後で隙が出来た女性へ放つ。
すると女性は疑問の声を上げた後に吹き飛ばされ、ドコォォォンと音を立てて壁に激突する。
レオンは凛が女性を吹き飛ばす所迄をじっと見ていた事もあって、感動した様にそう言うとタリア達も同意しているのか、黙って何度も頷いていた。
「いたたたた…。はぁ、やっぱり私じゃ貴方にとても勝てそうに無いわ。…まぁ、後ろにいる半分位の人にも多分勝てないのだろうけど。」
「…取り敢えずは満足して貰えましたか?」
「ええ、充分よ。手合わせに付き合ってくれてありがとう。」
「どう致しまして。」
女性は壁から抜け、凛がいる方へ溜め息を混じらせながらそう言った。
凛は女性が敵意や悪意は無く好奇心で向かって来た事が分かっていた為、夫婦手の構えをした状態のまま女性へ窺う様にして尋ねる。
女性は降参とばかりに両手を挙げた後に笑顔でそう言うと、凛は構えを解いた後に同じく笑顔で答える。
「しかし…何故精霊様がここエルミールに?」
「レオン様。彼女はかなりの力を持った氷の精霊ではあるけど、普通の精霊じゃ無く物質(じゃ分からないか)…ある程度人に近い半人半精霊なんだ。」
「半人半精霊…?初めて聞いた言葉だな。」
「それと、もしかして貴方は昔の大戦に参加した、精霊の内の1体とかだったりするのかな?」
「…ええ、貴方の言う通りよ。私は1500年程前の大戦に参加した精霊の1体。あの時の影響でかなり弱ったのもあって、ここで休みながら力を蓄えていたのよ。…そう言えば今思い出したのだけど、貴方…いえ、貴方様のその気配…もしかして創造神様の…。」
「ん?創造神様?僕のお姉ちゃんだよ。」
『!?』
「やはり…。」
「マスター、普通に創造神様の事をお姉さんだって言っちゃってるよ…。」
「あ…。」
『………。』
「凛はうっかりさんじゃのぉ。」
取り敢えず凛と戦った事で大人しくなったのか、美羽達やレオン達は凛と女性の元へと集まった。
そしてレオンはこの部屋に入ってからずっと疑問だったのか、女性の方を向いてそう尋ねる。
凛は苦笑いを浮かべながらレオンへ説明すると、レオンは半人半精霊と言う単語を初めて聞くからか、そう言って首を傾げていた。
凛はレオンから女性へと視線を移して尋ね、女性は軽く驚いた後に頷く。
そして女性は話している内に思い出したのか、少し恐る恐ると言った感じで凛に尋ねると凛は普通に答えてしまう。
これにレオン達は物凄く驚き、女性は納得した様にそう言って美羽が困った様子で凛へ突っ込む。
朔夜と段蔵は普通にしているが、ステラや雫達もこれには困った様子を見せる。
そして凛はと言うと、美羽の方を見ながらやっちゃったと言わんばかりの表情でそう答えた後、ゆっくりとレオン達の方を向く。
するとレオン達は揃って顔を青ざめさせており、それを見た朔夜はからからと笑いながらそう言うのだった。