264話 62日目
3日後の62日目 午前8時過ぎ
レオンと凛は互いに王城と領地を行き来し、もてなしたりもてなされたりを繰り返していた。
そして一昨日、ポールは全面的に要求を呑むので魔物を取り扱う量を増やして欲しいと凛に頼み込む。
ポール達は儲けようと言う気は大いにあったが、以前に比べて凛達を利用しようと言う気が大幅に減った事もあって第1領地の解体場の隣に商業ギルドの支部を建てる事になった。
商業ギルド建設は昨日から行われたのだが、ポールは出来るだけ早く建てるつもりなのか数十人の職人を呼び、その職人達を一気に建設の作業へと当たらせていた。
そして凛は先日仲間になったオークジェネラルへ『丞』と名付け、他のゴブリンキング達を含めた魔物の教育係の代表を頼む事にした。
これは人間になった丞が真面目で他の者達への面倒見が良く、手先が器用なのか家事や料理も(まだやり始めた為少しではあるが)行える様になった事で凛の目に留まったのもあるのだが、丞が魔物だった時に生えていた牙の事も合わせて名付けるに至った。
丞は人化スキルで30代半ばの見た目をした男性となるのだが、凛からの名付けの影響でオークキングへと進化し、今はゴブリンキング達と一緒に屋敷で教育係の勉強をしつつキュレア達に訓練して貰っている所だ。
「僕が異端…ですか。エリオットさん、どうしてまた急にそうなったんです?」
「何でも、最近になって神(聖)国内に光属性にかなり高い適性を持った男性の方が現れたそうなんですよ。…ここだけの話ですが、女神教としましては他国にいる凛様よりも自国の男性の方を優遇視したくて凛様への扱いを反対に変えた、のでは無いかと私は思っています。凛様のご活躍は大きくなる一方ですし、上層部による焦りや凛様に対しての妬みと言う可能性も考えております。」
「成程…。エリオットさん、教えて下さりありがとうございます。けど僕の為とは言え、出来ればご自分の立場が危なくなる様な発言は控えて下さいね?」
「ははは、ありがとうございます。凛様からは定期的に結構な額の寄付を頂いているだけでは無く、私達と一緒にサルーン周辺の貧しい方々への生活の援助をして頂いておりましたからね。せめてこれ位の事はさせて下さい。それに凛様、私が先程言っていたのはただの独り言です。凛様が気に病む必要はございませんよ。仮に神国が私の事を罰したとしても、流石に命迄取る事は無いでしょう。」
凛は先程第4領地の代表と副代表に任命した流と泉を見送った後、週に1~2回行っているサルーンにある教会へと寄付をしに訪れた。
しかしつい先日迄寄付を受け取っていたシスターが今回は寄付を受け取らなかった為、不思議に思った凛はエリオットの元へ向かい、受け取らない理由を尋ねる事にした。
すると申し訳無さそうな表情をしたエリオットから、神聖国が凛の事を異端認定した事を告げられる。
凛はエリオットから話を聞いて驚いた表情になった後で再びエリオットに尋ねると、エリオットは説明の途中から小声に切り替えて凛へそう話す。
凛は悲しそうにそう言うと、エリオットは朗らかに笑って言葉を返した。
神聖国 女神教総本山にて
「いきなり聖都へ連れて来られたと思ったら僕が神子…ですか?僕、成人したから村を出て隣街にある冒険者ギルドで魔法の適性を調べただけなんだけど…。」
「いえ、貴方にはこれから冒険者では無く、女神教の神子としての教育を受けて頂きます。」
「そんなぁ…。僕、冒険者になるのを楽しみにして今迄生活してきたのに…。」
身長166センチ位で銀髪ミディアムヘアーの15歳の少年が、着飾られた状態で部屋の中で座らされていた。
少年は複雑な表情でそう言うが、少年の教育係であるキャリアウーマン風の女性がきっぱりと断った事で少年はそう言って項垂れるのだった。