262話
予約ミスった(苦笑)
「凛様に撫でられた。これで頑張れる。」
「けど、直ぐに終わらせて戻れば…もっと撫でられる?」
「「…!!」」
紫水達はあの後ポータルを使い、目的地であるトロールの群れの近くへとやって来た。
紫水は凛に抱き着いた事でやる気になったのか、押忍!と挨拶をする様な構えを取りながらそう話す。
しかしその後に琥珀がそう言った事で紫水と瑪瑙ははっとなり、お前…天才か?と言いたそうな表情で琥珀を見ていた。
これに琥珀は照れた様子となった後、3人は更に魔物の群れの討伐にやる気となる。
3人は相変わらず仲が良い様だ。
「僕はこのまま突っ切って、奥のトロールから倒す。琥珀と瑪瑙は左右から攻めて3方向から攻撃しよう。」
「「(こくっ)」」
紫水達は極力音を立てない様に木伝いで移動した後、トロール達が見える位置にやって来た。
紫水がそう言って琥珀達は頷いた後、紫水だけが再び木伝いで真っ直ぐ進む。
琥珀と瑪瑙はその場で背中から刃状の三対の蜂の羽を出し、両肘から先を剣へと変えてゆっくりと所定の位置へ飛んで向かう。
「それじゃ…始める。」
紫水も所定の位置に着いた後、両手首から先を濃い紫色をした硬く鋭い蜘蛛の爪へと変える。
その蜘蛛の爪は一応人の手の形に近い姿をしているものの、先程よりも手全体が一回り大きくなっていた。
そして紫水はそう言って群れの端にいるトロールを爪を使って真っ二つにした後、群れの残りがいる方向へと走り始める。
「「………。」」
琥珀と瑪瑙も行動を開始し、左右から黙ったまま両手の剣を用いてトロール達を袈裟斬りにしたり、縦或いは横に真っ二つにする等して見る見るうちにトロールの数を減らしていく。
トロール達はいきなり現れた者達が仲間を次々と減らしていく事に恐怖を覚えるが、それでも3人の若い女(紫水は少し女の子に見える様な外見をしている為カウントされた)だと判断したのか、逃げる事無く餌と認識した紫水達の方向へと走って来る。
その後、紫水達は2分程で16体のトロールの討伐を終えて無限収納へと直し、半径500キロ圏内にいる魔物の群れの元へ次々に向かって行った。
紫水達は先程久しぶりに凛から撫でられたのもあって、やる気に満ち溢れている様だ。
《(紫水様達がやる気になられたのか、凄い勢いで魔物の殲滅が進んでいますね…。しかもただ倒すだけでは無く、仲間に出来そうな相手は説得して仲間にしている様ですね。良い事です。)》
「(ん?ナビ、何か言った?)」
《いいえ、特に何も。》
「(そう?なら良いか。)…ここが宝石店だよ。って、あれ?リアムさん?」
「ん?ああ、凛君か。リーリアからここでうちの技術を施した装飾品を置いてるって聞いててさ、今更だけど見に来たんだよ。決闘も昨日で終わったし、これで気兼ねなく凛君の領地に来れると思ってさ。」
「凛、どうした…って、おお、リアムじゃねぇか。息災だったか?」
「リアム様、お久しぶりでございます。」
「レオン様にタリア様、お久し振りです。ええ、見ての通り元気ですよ。まさかここでお会い出来るとは思いませんでした。」
凛は紫水達を見送った後に1時間程、レオン達を連れて領地にある運動場や練習場の案内をしていた。
ナビは紫水達の動きを観察していたからか、どことなく嬉しそうにしている。
紫水達はどうやら魔物を討伐しつつ仲間に加えている様で、ナビは凛の強化に繋がると喜んでいたりする。
凛は何か言われた様な気がした為ナビに尋ねるも(実際は違うが)気のせいだった様なので、気を取り直してレオンを次の目的地である宝石店へと案内する。
すると店内に入って直ぐの所で、今日からやって来る様になったリアムがガラスケース内に展示してある装飾品を見ていた。
凛、リアム、レオン、タリアがそれぞれそう言った後にレオパルドが話に加わり、一行は30分程話しながら店内を回る。
レオンとタリアは立場上あまり王都から離れられないからか、リアムとは数年振りに会ったとの事。
3人は固まりながら移動し、話を弾ませていた。
「ははっ!篝だったか、思った通り物凄く強えぇじゃねぇか。まさか今の立場で俺が挑戦者になるとは思ってなかったぜ。」
「そうなのか?だが、獣王様にそう言って頂けるとは恐縮だな。」
「はぁ…。強い相手と戦えて嬉しいのは分かるけれど、もう少し自分の立場を考えて欲しいものだわ。凛様だから仕方無いとは言え、王が従者に負けては他の者の示しがつかないでしょうに…。」
凛達はその後レオン達を商店(アイテム袋を含めてバッチリ買い物を済ませた)、喫茶店、スイーツ店へと案内してから再び運動場へとやって来た。
先程は口頭だけの説明だったのだが、レオンは説明を受けている間も同じ獣人である篝の事が気になっていた様だ。
レオンは篝と手合わせを始めて自分よりも強いと分かってテンションが上がったのか、手合わせしながら嬉しそうにそう言う。
篝も手合わせしながら返事をするのだが、尻尾を振る等してどことなく嬉しそうだった。
タリアは篝から悉く攻撃を捌かれているレオンを見て呆れた表情となり、溜め息をついた後にそう言うのだった。