241話
「シエル~、くすぐったいよ~!」
「(やだー!凛達以外の人に触られたくない!)」
「あらあら…、シエル様は警戒心が強いのですね。シエル様に触る機会はまた今度にしましょうか。レオネル、サラ、シーラ。分かりましたね?」
「「「はい、お母様。」」」
昊はレオン達にもみくちゃにされた事で少しぐったりとした為、矛先が凛の頭の上に乗っているシエルへと向く。
レオパルド以外の3人の子供達が凛の頭の上へと手を伸ばそうとした為シエルは警戒し、触らせまいとして凛の肩や背中、手足と言った体のあちこちに移動し始める。
その為凛はくすぐったそうにしてそう言うと、シエルは子供達の手を掻い潜りながら抗議の鳴き声を上げる。
タリアはそれを微笑ましく見ていたが、このままだとシエルに完全に警戒されると思いレオネル達を諌める。
タリアは自分が生まれるよりも前からシエルがエルフの里周辺の森にいる事を知っている為か、シエルの事を様付けで呼ぶ様だ。
レオネル達はタリアに従順なのか、言われて直ぐに凛達から離れて返事した。
レオネルは年の頃が14歳。
身長142センチ程と少し小柄で、少し大人しそうな印象を持つ獅子の獣人の男の子だ。
サラとシーラは双子なのか、良く似た顔をしている。
サラは年の頃が12歳。
身長128センチ位で、レオネル以上に大人しそうな印象を受ける女の子。
シーラはサラと同じく年の頃が12歳。
身長133センチ位で、サラとは反対に活発そうな印象を持った女の子の様だ。
レオネルはショート、サラはミディアムショート、シーラは腰に近いロングの髪型をしており、いずれも金髪だった。
「も、もう食べれねぇ…。」
タリアは暫くの間レオネル達と一緒に凛と話をしていた(シエルは昊の所に避難し、ジークフリートもシエルに付いて行った)のだが、レオンの姿が見えない事を不審に思い、レオネル達を凛に託してレオンを探しに向かう。
しかし城内を軽く探しても見付からなかった為、朔夜に尋ねてみようと思い客間へ向かう事に。
するとそこでは何故かレオンと朔夜が違うテーブル同士で大食い大会でも行っているかの様に、食べ終わった皿が朔夜達がいる所とは別のテーブルの上に多数積まれていた。
レオンはどうやら昊を撫で回した事で満足し、朔夜の様子を見に来たらしい。
しかし昼食を食べてまだそんなに時間が経っていなかったからか、レオンがそう言いながら椅子ごと後ろに倒れてしまう。
「あなた…、お客様相手に何をやっているのですか。と言うか、凛様達がいらっしゃる前に昼食を食べたばかりではありませんか。」
「さ、朔夜の食べっぷりを見ていたらつい、な…。朔夜、こう見えてかなり食べるんだぜ?」
「はぁ…。レオンがごめんなさいね。」
「妾は気にしてないのじゃ。タリアよ、其方とは話をしてみたいと思っていた故、妾の話し相手になってはくれぬかの?」
「あら、私で宜しいのですか?」
「うむ。どうやら獣国で立場が1番上なのは其方の様じゃからの。色々と話を聞いてみたいと思っていたのじゃ。それに、妾もそろそろ食べるのを止めようと思っていたからの。暫しの間、ハーブティーでも飲んで語ろうではないか。段蔵よ、妾とタリアの分のハーブティーを様子するのじゃ。」
「分かりました。…どうぞ。」
「(今のは空間収納かしら?)…あら、美味しい。朔夜様の所では変わったお飲み物が出て来るのですね。」
タリアは呆れ顔でそう言うと、レオンは苦しそうにしながらも満足げな表情で答える。
タリアは溜め息をついて情けなさそうな表情でそう言うと、朔夜はナプキンの様な物で口周りを拭いた後にタリアへ尋ねる。
タリアは不思議に思ったのか朔夜へ尋ね返すと朔夜は頷き、朔夜はそう言って段蔵へ促す。
段蔵は了承し、無限収納から白いポットとソーサー付きのカップを取り出した。
段蔵が取り出したポットの中にはカモミールティーが飲み頃の温度で入っており、段蔵はそれぞれのカップに注いで提供する。
タリアは内心そう思いながらも、既に飲み始めている朔夜に続いて一口飲んでみる。
タリアはカモミールの効果で心が少し落ち着いたのか、これを切欠に朔夜と話をし始める。
「あの、俺にも2人が飲んでいるのを飲ませて欲しいのだが…。」
「あなたはそこでもう少し反省していなさい。私は先程の行いを許した訳ではありませんからね?」
「はい…。」
「レオンよ、尻に敷かれておるのう。」
朔夜とタリアが話を始めて30分程経った頃に、少し体調が回復したものの部屋から出しては貰えず、2人の会話にも入り辛そうにしているレオンが床に正座させられながらそう言った。
しかしタリアにぴしゃりとそう言われた事で、レオンはそう言って俯いてしまう。
朔夜はその様子を見て、苦笑いの表情を浮かべながらそう言った。
その後も居心地の悪そうなレオンを他所に、朔夜とタリアは優雅なティータイムを送っていた。
「…眠ってしまったな。」
「昊の毛並みはふさふさだからね。気持ち良くなって寝てしまったのかも。」
「成程、そう言うものなのだな。」
「(毛並みのふさふさ具合なら私も負けてないんだからね!)」
凛に任されたレオネル、サラ、シーラの3人は、昊にくっ付きながらじゃれている内に眠ってしまった様だ。
昊は横になって丸くなり、尻尾でレオネル達を包み込んだ。
ジークフリートが真面目な表情でそう言うと凛は少し小声で答え、ジークフリートは納得の表情で頷く。
シエルはレオネル達が眠った事で安心したのか、地面に下り立ちった後にお座りの構えをとる。
そして昊へ対抗意識を燃やしたのか、尻尾を動かながらそう言うのだった。




