240話
「がはははは!凛よ、良く来たな!」
「ようこそいらっしゃいました。」
凛、朔夜、段蔵の3人はレオパルドに連れられて30分程応接室で待ち、訪ねて来た使いの者の案内で謁見の間へとやって来た。
そこには多数の兵士や、国の重鎮と思われる貴族の者達が左右の壁側に立っていた。
そして正面奥には椅子に座った王、その隣には王妃と思われる女性が座っており、王の隣には男の子が、王妃の隣には2人の女の子が控えている。
王はレオン・マクガイルと言い、年の頃は38歳位。
身長は186センチ程で、着飾った服の上からでも鍛えられているのが分かる獅子の獣人だ。
その隣にいる妻はタリア・マクガイル。
年の頃は40歳で身長が166センチ、レオンと同じ獅子の獣人の様だ。
レオンが肩上、タリアが背中迄伸ばした金髪をしている。
レオンとタリアは座ったまま笑顔でそう言うが、兵士や重鎮達は凛達の事を訝しんだ表情で見ていた。
「お招きにあずかり光栄です。レオパルド王子殿下の紹介で参りました、凛 八月朔日と申します。」
「よせよせ。凛は俺達が招いた客だ、敬語は要らねえよ。…にしても、予定していたよりも随分早かったな。…レオパルド、なんで明後日の方向を向いてるんだ?」
「…それでは失礼して。本当なら明後日とかに城へ着くべきだったんだろうけど、明日はちょっと予定があって…。なので今日はご挨拶だけと言う事で、特殊な移動方法で来させて貰ったんだ。レオパルド様はその、僕からはごめんなさいとしか言えないかな。」
「レオパルド、そうなのか?」
「はい父上。凛君の配下がなのですが、明日は決闘を行うそうです。凛君の言う特殊な移動と言うのは…、恐らく父上も体験したら分かると思いますがあまりにも便利過ぎて目眩がしそうになります。」
「ほぉ…!その移動も気になるが…決闘か。血が滾るな!」
「はぁ…。あなた、皆がいらっしゃる前ですよ。少し控えて下さいな。」
「だがなタリア、決闘だぞ?男なら決闘…。」
「あーなーたー?」
「ぐぬ、分かった…。」
凛が苦笑いの表情でレオンへ説明すると、レオンは沈んだ表情で明後日の方へ視線をやっているレオパルドへと尋ねる。
レオパルドは複雑な表情で説明するとレオンは決闘と言う言葉に反応し、凛が来た時よりも嬉しそうな表情で言う。
タリアはこれに呆れたのか、溜め息ついてレオンを諌める。
しかしレオンは尚も主張しようとした為、タリアは少し強めに名前を呼んだ事でレオンを黙らせた。
いくら獣国の王でも、どうやら姉さん女房である王妃には勝てないらしい。
「…しかし参ったな。凛の口振りからすると、今日は泊まらず明日の為に帰るって事なんだろ?」
「そうだね。今日は挨拶が主な目的で来たから、夕方には帰る予定かな。」
「そうか…。凛達が来たと聞いてから食事の用意を始めさせているが、止めた方が良さそうだな。」
「そうだね。折角だけ…。」
「妾が食べるのじゃ!」
「…だそうだよ。一応紹介させて貰うと、彼女は朔夜。朔夜はこう見えて、外で待っているジークフリートと別な種類のドラゴンなんだ。」
「このお嬢さんがドラゴンねぇ…。食事は量がそれなりにあるんだが、大丈夫なのか?」
「その位なら全然問題無いのじゃ。それと悪気は無いと思うのじゃが、妾はこれでも600歳を越えておるぞ。」
「それは失礼したぜ。…それなら朔夜だけ別室でこれから食事を摂るって事で良いか?」
「うむ。」
レオンが少し困った表情でそう言うと、凛がそう答える。
レオンはそのままの表情で言い、凛が断ろうとした所で朔夜が名乗りを上げる。
凛は苦笑いの表情でレオンへ説明すると、レオンは少し訝しんだ表情で朔夜を見ながら答えた。
朔夜は獣王とは言えかなりの年下のレオンからお嬢さん呼ばわりされたからか、そう言って釘を刺す。
レオンはそう言って肩を竦めたものの、自分を相手に堂々とした様子の朔夜を見て、魔銀級の強さを持つ自分よりもかなり格上なのだと理解した様だ。
レオンは少し口調を改め、再び朔夜へ尋ねる。
そして朔夜が頷いた事で寄越した使いの者と一緒に、朔夜と段蔵は謁見の間を出て行った。
「おぉー!こいつが昊か!流石に神(輝)金級だけあってでっけぇ上に、かなり強そうだなぁ!!」
「本当。でも可愛らしいですわね。」
「(え、何々?ちょっ、皆!僕をおもちゃにしないでー!)」
「(危なかったわ…。)」
凛達は朔夜達が出て行った後も少し話を行った後、王城の中庭で日向ぼっこをしながら話をしている昊達の元へと向かった。
レオパルドが昊達の話をすると、昊が神輝金級の魔物だと言う事に非常に食い付いた為だ。
レオンは横になっている昊を見付けると真っ直ぐ昊の元へ向かい、そう言いながらわしゃわしゃと撫でる。
そこへ歩いてやって来た王妃と子供達3人も撫で始めた事で、昊は困惑し始める。
その光景を、凛の頭の上に避難して緊張した様子のシエルや、苦笑いの表情を浮かべた凛、驚いた表情のジークフリートや重鎮達が見ているのだった。