239話
午後2時頃 獣国王都イングラムの手前にて
「へぇ~、ここが獣国の王都なんだ。初めて来たけど色んな人達がいて面白いね。」
「本当に割と直ぐに、王都へ着いてしまったよ…。」
「凛にかかれば、今迄行った事が無い場所だとしても大した意味では無くなってしまう様じゃの。」
「ソウダネ…。」
正午前にレオパルドが起きた為、それから凛達は1時間程昼食と食休みを行った。
そして午後1時前に案内役も兼ね、凛はレオパルドと一緒に移動を始める。
しかし移動すると言っても、実際には1度ポータルを挟んだ後に数キロの道を歩いただけだった。
凛はレオパルド話をしながら得た情報と照らし合わせ、(森羅万象の範囲内となった事で)王都と思われる場所を特定する。
凛はその場でポータルを設置し、朔夜、段蔵、ジークフリート、シエル、昊を一旦迎えに行く。
そして凛達は2回目のポータルの移動で、王都から1キロ程離れた所に着いた。
凛はポータルを出て王都を、更に言えば中心部に建つ王城を眺める様にしながらそう話す。
凛の視線の先には犬、猫、鳥、熊、鼠と言った特徴を持つ獣人達が王都を出入りしているのが見える。
凛の次にポータルから出たレオパルドは複雑な表情で言い、その後ろにやって来た朔夜が広げた宵闇を口にやりながらそう言った。
レオパルドは項垂れ、片言の様にして言葉を返す。
「…!そこの者達、止まれ!」
「お勤めご苦労様。」
「これはレオパルド王子殿下!…殿下と一緒に来られたこちらの方々はその…どういったご関係なのでしょうか?」
「この人達は僕が招待した友人なんだ。見ての通り魔物もいるけど、普通に僕達の言葉を理解出来る頭の良い子達でね。だから王都内で見掛けても、決して魔物だからと言う事で危害を加えない様に皆へ伝えて貰って良いかな?」
「はっ、分かりました。(そもそも、こちらから危害を加える事が出来そうな見た目には見えないんですけどね…。)」
凛達は王都の東門の近くにある、貴族達が通る入口へと歩いてやって来た。
そこに立っていた茶色い犬の獣人の門番に警告された為、レオパルドが前に立って挨拶する。
門番は敬礼して返事した後、どう言って良いのか分からないと言いたそうな表情でレオパルドへ尋ねる。
レオパルドが昊の事を見ながらそう説明すると門番が(内心そう思いながらも)返事し、レオパルド先導の元で凛達は王都の中へと入る。
「ごめんね。王国も帝国も自分達人間が偉いって雰囲気を出すからか、ここへはあまり人間が来る事が無いんだよ。だから珍しさもあってか、王城に着く迄の間周りにいる皆から見られると思うんだ…。昊君やシエルさんもいるしね。」
「昊はこの大きさだから目立つもんね。昊も一緒にって事で連れて来たけど、本当に良かったのかな?なんか少し周りから怯えられてる様な…。」
「ここ迄大きいと、流石に圧倒されちゃうんだろうね。けど獣人は負けず嫌いや向上心が強い人が多くてね、次に見掛けた時は少し昊君を見る目が変わっていると思うよ。」
「そうなんだ。」
王都の中を歩き始めて2分が経った頃、凛達は周りから物凄く見られていた為、少し居心地が悪そうにしていた。
レオパルドは歩きながら顔だけ斜め後方へ向けたりして説明すると、凛はそう言いながら辺りを見回す。
レオパルドが説明を加えると凛は頷き、一行はその後もレオパルドが先頭で10分程王都の中を歩き続けた。
「お待たせ。ここが王城だよ。」
「外から見ていた時も思っていたんだけど、城は少し高台にあるんだね。」
「城から周りの状況を把握する為なんだって。さ、中へ入ろうか。」
「そうだね。…そう言えば、僕達普段着のままだけど良かったのかな?」
「他の国はどうなのか分からないけど、僕達は服装を気にしないよ。と言うか、恐らくだけど僕達のよりも凛君達が着ている服の方が高いと思うんだよね…。」
王城の門が見える位置へ来た所でレオパルドは立ち止まり、後ろを振り向いてそう言った。
王城は白い煉瓦と赤い屋根で造れており、2キロ四方はありそうな広さとなっていた。
王都に入ってから僅かではあるが斜め上をひたすら歩いた事で、凛も後ろを振り向いて答える。
レオパルドはそう言って正面を向こうとするが、凛がそう言った事で凛の方を向く。
凛と段蔵が着ている服は紫水の蜘蛛の糸を編んで作っている為、物凄く軽い上に強度が非常に高い。
朔夜の和服は物質変換・闇で変化させた物ではあるが、自身を覆っている鱗の様にとんでもない硬さを持っている。
レオパルドは一目見た時から凛達の服は自分達のよりも高級品だと思っていたからか、凛達を見ながら複雑な表情でそう言う。
その後も凛達は軽く話した後、揃って王城の中へと入るのだった。