225話
リルアースでは大陸の北側は炎の大精霊であるイフリートの影響が強いとされている。
そして南側はウンディーネ、西側はシルフ、東側はノームの影響が強く、大陸の南側にある獣国マーレシスは他の国と比べて漁業が盛んだったりする。
その為レオパルドはカレーが獣国でも受け入れられると思い、凛へ話し掛けると言う流れとなった。
因みに帝国は元々大陸の東側から北東側だけしか領土を持っていなかったのだが、500年程前からノームの影響で鉱山が多数ある事で鉄等の金属類を含んだ鉱石が豊富に産出される様になる。
帝国はその鉱石等で武具を精製して国力を上げていき、少しずつ王国を攻めて領土を広げていった。
やがて帝国は北側を占拠した事で一先ず満足し、帝都を帝国の中心から少し北西でありサルーンの北東にある位置へと移す。
帝都を帝国の東側から北西側へと移した事で、産出した金属の鉱石を火力が上がり効率が増した帝都へと運んで加工すると言う流れで更に国力を増していった。
そしてここ暫くの間、王国とは折角手に入れた領土を奪われない様に小競り合いをする位だった。
しかし、ブンドール侯爵が自らの力を誇示しようとしたり、自分の地位を今よりも高くしようとする目的で、数年前に帝都の西側に自らが治めるジラルドを作った。
その後サルーンとの国境付近にある街や都市へ向けて一方的に攻撃や略奪行為を行っている為、王国側に決して少なくない被害や死人、それと奴隷にされた人達が出ている。
アレックス達皇族はブンドール侯爵へ攻撃を止める様に伝えるが、ブンドール侯爵は表面上は了承するものの直ぐに攻撃を再開する。
そしてまた止める様に伝えると言った流れを何度か行っている内に、皇帝がいずれこちらへ向けてブンドール侯爵が攻撃を仕掛けてくるかも知れないと考える様になる。
その為、皇族はブンドール侯爵へ攻撃を止める様に言うのを止めてしまい、ブンドール侯爵は更に増長する事となった。
「今回の交流は僕にとっても、そして獣国にとってもかなり有意義なものだったよ。凛君、良ければ君が治める領地を見せて貰っても良いかな?凛君達が食べていたプリンも気になるしさ。…リアム殿は既に食べた事があるそうだけどね。」
「ははは…。」
「分かった。それじゃ片付けを済ませたら向かおうか。雫。いつまでもプリンの余韻に浸ってないで、カレーの片付けを始めるよ。」
「…はっ!やはりプリンは至高…!」
凛達はカレーを寸胴鍋によって入れる肉をカトブレパス、ジズ、パイア、バラウールで分けて作り、カトブレパスだけ10個で残りがそれぞれ5個の計25個のカレーを寸胴鍋で用意した。
そして用意したカレーが全て無くなった(火燐と朔夜は悲しそうな表情で、今は空っぽになった大きな寸胴鍋達を見ている)事で、皆は食後の余韻に浸っていた。
食事の最後に凛達だけハーピィの卵とアウズンブラの牛乳を使ったプリンを食べていた事で、レオパルドやリアム達から羨ましがられる。
領地へ行けば普通のプリンなら食べる事は可能である事を伝えるとレオパルドには取り敢えずは納得して貰えたが、既に凛の領地でプリンを食べれる事を知っているリアム達は不服の表情となった。
直前に自分よりも先にプリンを食べていた事を聞いて狡いと思ったのか、レオパルドは凛へ向けてそう言った後にリアムの事をじと目で見ていた。
リアムは苦笑いの表情を浮かべて明後日の方向へと視線をやり、凛も釣られて苦笑いの表情となる。
凛はそう言って立ち上がり、近くにいてプリンの余韻で硬直してしまっている雫の背中をぽんぽんと叩きながら発破を掛ける。
雫はそう言って我に返り、皆で片付けを行っていく。
「…ここが凛君が治めている領地なんだね。それじゃ凛君、案内を頼むよ。」
「分かった。それじゃ先ずは、レオパルドさんやリアムさん達も甘い物を食べたいだろうからトルテの店に行こうか。」
凛はカレーを食べている間に、レオパルドの事もリアムと同様にさん付けで呼ぶ様になっていた。
凛達は片付けを済ませ、レオパルドとリアムを含めた何人かのエルフやダークエルフと共に領地へとやって来た。
凛達は屋敷の敷地内にあるポータルを設置した小屋へと移動したのだが、レオパルドは初めてポータルを潜って吃驚したからか尻尾が逆立っていた。
レオパルドは少しして落ち着きを取り戻し、尻尾が普段の位置に戻った後に凛へ向けてそう言った。
凛は頷いて答え、一同はトルテの店へと向かう事に。
「お、凛。お前達も食後のデザートを食べに来たんだな。」
「はい。アレックス皇子殿下達もなんですね。」
「ああ。…だが、目の前にいる獣国の王子の影響でちょっと不味い事になりそうだけどな。」
「「…獣人!?」」
凛達がトルテの店に近付くと、反対側からアレックス、パトリシア、アイシャ、それとその後ろからステラ達4人がやって来た。
アレックスが右手を挙げながら凛へ声を掛けると、凛は頷いて答える。
しかしアレックスは複雑な表情でそう言いながら、凛の斜め左後ろにいるレオパルドへと視線を移す。
アレックスの後ろにいたパトリシアとアイシャが、凛の後ろにいる人を見ようとしてアレックスの左側に顔をひょこっと出す。
そして凛の斜め左後ろにいるレオパルドを見て、げっ!?とでも言いそうな位、露骨に嫌な表情をしてそう叫ぶのだった。