224話
「…先程は失礼した。僕は生まれてからずっとエルマに世話をして貰っていたからか、つい油断すると甘える癖があってな…。自分なりに誇り高い白龍であろうとはするのだが、特にあの構えをされるとどうも(膝枕をする)衝動が抑えられない様で歯止めが効かないのだ。出来れば先程の事を忘れてはくれないだろうか…。」
「ま、まぁ。誰でも言えない事の1つや2つはあるよ。皆お腹が空いただろうし、カレーを食べに戻ろうか。」
「う、む。」
「「はい!」」
「はーい♪」
「そ、そうだね。」
ジークフリートは恥ずかしいのか顔を赤くしながら立ったまま俯いて話し、言葉の在庫で更に項垂れてしまう。
凛は苦笑いでフォローしつつ、皆へ戻る様に促す。
ジークフリートは歯切れが悪く、エルマとイルマは元気良く、美羽は楽しそうに、レオパルドは先程のショックを引き摺ったままそれぞれ答えて皆の所へと戻る。
「凛よ、戻って来たのじゃな!…何だか揃って元気が無い様に見えるのじゃが、どうかしたのかの?」
「んー…。大丈夫、何でも無いよ。朔夜、これから一緒に暮らす事になった、白龍のジークフリートだよ。」
「そうか…、まぁ詮索はしないのじゃ。ジークフリートよ、妾は朔夜と申す。其方も妾に思う所があると思うのじゃが、同じ凛の仲間じゃ。ここは1つ仲良くするとしようぞ。」
「…そうだな。僕はジークフリートだ。朔夜、宜しく頼む。」
「うむ。」
「本来なら天敵同士である筈の僕達だが、こうして手を取り合う日が来る等と考えた事も無かったな。」
「そうじゃの。じゃがまぁ、こう言うのも悪くはあるまいて。」
「そうだな。」
凛達が戻ると、皆はカレーを食べずに待ってくれていた様だ。
朔夜は初めてであろうカレーを食べるのを楽しみにしているのか、戻って来た凛へ嬉しそうにして声を掛けるが凛達から漂っている微妙な雰囲気を察し、真面目な表情でそう言った。
凛は苦笑いの表情で軽く首を振って答え、ジークフリートの紹介を行う。
朔夜は鉄扇を広げて口元に当てて言った後、鉄扇を閉じて軽く会釈する様にして言って左手を差し出す。
ジークフリートは少し考える素振りを見せるが、そう言って朔夜と握手を行い朔夜は満足そうに頷く。
ジークフリートは朔夜と握手をしたまま少しだけ複雑そうな表情で言うが、朔夜が軽く笑いながら言った事でジークフリートも軽く微笑んで言葉を返した。
ジークフリート達白龍の種族と朔夜達黒龍の種族は、同じ竜族でありながら互いが天敵な為か仲が悪い。
更に朔夜は邪神龍アジ・ダハーカへと至った事で、『覇王気』と言うスキルを得ている。
覇王気は竜魔気を更に効率良くして身体強化をしてくれるスキルだが、同時に相手へ重圧を与える効果もある。
朔夜は猛と初めて会った時に感情が昂ってしまい、無意識に覇王気を発動させてしまった事で藍火と梓が萎縮してしまったのはこの為だったりする。
ジークフリートは種族的に朔夜が天敵だからか、特に朔夜の覇王気に敏感に反応して悩んでいた様だ。
「…凛君。このカレーって食べ物は、この白いのと良く合うね。獣国にもカレーみたいなスープはあるんだけど、トマトを使ってるからかスープの色は赤だし、具材に野菜とは別に海老が入っていたりするんだよね。」
「(それってブイヤベースみたいな食べ物って事なのかな?)…そうなんだ。今回は普通のカレーを作ったんだけど、他にも茸を使ったものとか、海老や帆立が入ったカレーもあるんだよ。」
「へー、そうなんだ。獣国の海側は漁が盛んでさ、凛君の言う海老や帆立が入ったカレーが絶対に流行ると思うんだ。勿論このカトブレパスのお肉もかなり美味しいんだけどね。」
朔夜とジークフリートが取り敢えず自己紹介を終えた為、皆でカレーを食べる事になった。
朔夜と火燐は凄い勢いでカトブレパス入りのカレーを食べ進めており、リアムもカレーを気に入ったのか既に2人前を食べ終わって、現在3杯目を食べている所だ。
レオパルドは考え事をしながらゆっくりとカレーを食べ進めていた。
そしてレオパルドが食べているカレーの残りが半分位になった所で、隣にいる凛へ向けてそう言った。
レオパルドが言っていたのは凛が言っていた通りブイヤベースの様な食べ物で、獣国ではヤックと呼ばれている。
しかし獣国ではエルフ達以外では野菜はあまり好まれずに肉や魚が良く消費される為、トマト以外の野菜は無しで肉だけ、又は魚だけのヤックがざらだったりする。
更に白ワインは料理で使わずに飲む物とされている為、魚の生臭さが少し前面に出ている。
凛は後でレオパルドからその話を聞いた時、美味しく無さそうだなと思った様だ。
凛は内心そう考えた後に答えると、レオパルドはスプーンでカトブレパスの肉を掬ってそう言うのだった。
朔夜のスキルは覇王龍の覇気や覇王の覇気等で記載しようと思ったのですが、まんまワンピー○みたいになりそうなので覇王気とさせて頂きました。