209話
凛は死滅の森にてアウズンブラ達に人化スキルを施す等して待っている間、半分位の広さは程良く生い茂っている草原で残りは平原の様な亜空間の部屋を用意していた。
凛は美羽達やアウズンブラ達を連れて屋敷へと向かい、屋敷の敷地内にて口頭だけで軽く領地の事をアウズンブラ達へ伝える。
アウズンブラ達は良く分かっていなかったが詳しくはまた今度と言う事になり、美羽達やアウズンブラ達を作成したばかりの亜空間へと案内する。
凛はアウズンブラ達に亜空間の説明を行っている間、美羽達は後ろでふかふかだー!と言いながらごろごろと転がってはしゃいでいたり、楓の様に草むらに体を預けて仰向けになったりして満喫していた。
「…それでは取り敢えずここでゆっくりしていて下さい。僕達はまた後で来ますね。」
「…こんなに良さそうな所を用意して貰って言うのもなんだけど、私達が使って良いの?」
「勿論ですよ。この場所は貴方達に用意した物です。その状態でも元の状態でもお好きな方で過ごして貰えれば良いかと。」
「分かった。」
「ほら、美羽達もいつまでもはしゃがないの。リーリアさん達の所に戻るよ。」
『はーい!』
凛は一通り説明を終え、アウズンブラの女性へそう伝える。
女性は亜空間に吹いている風を気持ち良さそうにした後、申し訳無さそうな表情になりながら凛へ尋ねる。
凛は軽く微笑んで答え、女性はそう言って頷く。
満足した凛は後ろを振り返り、大の字で横になりながら楽しそうに話をしている美羽達にそう伝える。
美羽達は元気良く返事をして起き上がり、凛と共に亜空間から出て行った。
「…あ、気持ち良い…。」
凛達が出て行った後、凛と話をしていた女性が美羽達の真似をして横になってみた。
女性はそう言って瞼を閉じ、安心したのかそのまま寝てしまう。
他の女性達も同じく、横になっては寝る者が続出していった。
因みに、凛はこの部屋の説明をしている時に女性達に食べ物の好みを聞いたのだが、好みはバラバラではあったが基本何でも食べるとの事。
どうやらしょっぱい氷の塊だけを食する訳では無い様だ。
「済みません。遅くなりましたけど戻りましたー。」
「凛君!やっと帰って来たんだね!君の連れの方々の食欲が凄くてさ、次々に料理を用意するんだけど直ぐに無くなる状況なんだ…。」
その後、凛達はポータルでリアムの家へと戻る。
先頭で出た凛がそう言うと、少し離れた所にいたリアムが凛の元へと駆け寄ってそう言った。
凛はリアムが話しながらちらりと見た方向を見てみると、朔夜と段蔵が肉料理を食べていた。
そしてその周りには疲れ果てたのか、少しぐったりとしていたらり横になっているエルフとダークエルフが数人いる。
どうやら凛がいなくなってから2時間程経った今も、そのままひたすら食べ続けていた様だ。
「あー…朔夜と段蔵が済みません。お詫びと言っては何ですが、一緒に来た子達が倒したお肉を皆さんに振る舞わせて頂きますね。」
「一緒に来た子達…?」
「ええ。あの子達は死滅の森深層に行ってたのですが、結果的に僕が迎えに行ったと言う感じでしょうか。取り敢えず用が済んだので戻って来ました。」
「さっきのでここからあんなに遠くて危険な場所迄行けるんだね…。いや、便利なんて言葉で片付けられない位、凄い移動手段なんだろうけど…。」
凛は申し訳無さそうな表情でリアムへと謝った後にそう言うと、リアムは改めて凛と一緒に来た美羽達の事を見る。
凛がそう言うと、リアムは先程凛が簡単そうに(ポータルを)用意していなくなったのに何千何万キロも離れた所へと向かって行ったのかと思った様だ。
リアムは複雑な表情で凛へ返事を返した。
凛はリアムと話をした後、予めナビに頼んで無限収納内でカトブレパスの肉を1キロごとのブロックに切った物を無限収納から取り出す。
「朔夜ただいまー。追加でお肉を持って来たから、外でバーベキューをやろうか。」
「凛よ、お帰りなのじゃ。ほう、追加の肉とな?妾も漸く調子が出た所でな、凛の持っている肉も食べたいのじゃ。」
『(あれだけ食べたのにまだ食べれるのか!?)』
「朔夜の事だからそうじゃないかなって思ってたよ。今朝は全然食べてなかったしね。」
『(こっちはこっちで当たり前みたいに返事した!?)』
凛はカトブレパスの肉が乗った皿を右手に持ち、朔夜の後ろからそう伝える。
朔夜は既に凛が帰って来ている事が分かっており、凛に声を掛けられた事で口に入っている物を一気に飲み込む。
そしてナプキンで口を拭いた後に凛へそう言うと、周りの人達は驚いた表情で朔夜を見ながらそう思った。
昨晩、朔夜はエルフの里へと向かう事が決まった為か朝食は軽く(と言っても5人前)しか摂らなかった。
そして凛が行って帰って来る迄に朔夜は70人前、段蔵は50人前をそれぞれ食べていた様だ。
凛は凛で軽く笑って朔夜に返事をした為か周りの視線が凛へと移り、そう思いながら更に驚いた表情となる。
「リアムさん。ここからは僕達が調理を変わります。少し家の外をお借りしますね。僕も今初めて見るのですが、今僕が持っているのは神輝金級のお肉なんですよ。外でお肉等を焼いてますので、食べたい方は是非外迄いらして下さい。それじゃ皆行こうか。」
『………。』
凛がそう言って歩き始めると、美羽達や朔夜達は凛の後ろを歩いて部屋から出て行く。
火燐は歩きながら焼肉♪焼肉♪と言って嬉しそうにする。
凛達がいなくなった後、リアム達は嵐が去った後の様に呆然としていた。
「かーっ、やっぱり美味ぇな!!これだけで今日は森を進んで良かったって思えるぜ!」
「美味いのぅ…。美羽達がこの肉を獲ってきたのであれば、妾も狩りを行った方が良いのかの?」
「でも朔夜ちゃんだと、待ちきれずにその場で食べちゃうんじゃない?」
「む、確かに。今迄は食べるとしたらそのままでだったからの。その可能性はあるし、今みたいに焼かずにタレもつけずに食べて後悔しそうな気がするのじゃ。」
『………。』
凛はリアムの家の前に6台のバーベキュー用のグリルをセットし、美羽達と共にキャベツや玉ねぎ等の野菜と一緒に焼き始める。
それから少し遅れてリアム達が凛達の元へとやって来て、凛達が行っている作業をじっと見ていた。
そして少量ずつではあるが皆の分が焼き上がり、それぞれ肉や野菜が乗った状態の小さな皿を持っている。
凛が合図をすると、火燐が待ってましたと言わんばかりに食べ始めてそう言った。
同じく食べている朔夜はしみじみとそう言うと、その隣にいる美羽がクスクス笑いながら言う。
朔夜は少し考えた後にそう言って、複雑そうな表情となる。
そしてリアム達は肉は勿論の事、凛の領地で育てた野菜も美味しい為か一心不乱に食べ進めるのだった。