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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
強化&アウドニア王国の街サルーン編
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19話

「ワイバーンは下位竜レッサードラゴンとは言え銀級の強さだ。それが数体ならまだ何とかなるが…流石に10体は無理だ。奴らに対抗出来るだけの戦力が、この街にはない…。せめて、俺や(冒険者)ギルドマスターがもう少し若ければ…!」


「長!悔しいとお思いでしょうが、ワイバーン達はもう街の近くまで来ています!早く避難を…。」


「…あのー、でしたら僕がワイバーン達の所へ行って来ましょうか?」


「は?」


「え?」


ガイウスは駆け込んで来た警備や下を見て悔しそうな表情で言うと、警備は慌てる様子で話そうとする。

そこへ凛がそう提案するのだが、まさか部外者の凛に提案されるとは思わなかったのかガイウスと警備は驚いた表情となり、2人して気の抜けた返事となってしまう。


どうやら凛はガイウスと警備が話をしている間にサーチで周辺の確認を行った事で、自分が向かった方が良いと判断した様だ。


「ワイバーン10体なら森林龍よりも対処しやすいでしょうし、僕1人でも特に問題ないと思います。警備さん、申し訳ないのですが、僕を街の入口まで案内して貰っても宜しいですか?」


「はっ、はい!では私に付いて来て下さい。」


「分かりました。それじゃ、ちょっと僕はワイバーン退治に行って来ます。すぐに終わらせてこちらへ戻って来ますので、それまでの間このクッキーでもまんで待ってて下さいね。」


「「「………。」」」


「はーい♪」


「分かりました。」


凛は知らせに来た警備に尋ねた事で警備は少し冷静になれたのか、警備はそう言って部屋を出ようとする。

凛は頷いた後にガイウスや美羽達の方を見てそう言った後、部屋の奥から急いでガイウスを通り抜けて入口へ向かい、そのまま警備と共に部屋を出た。


ガイウス達は黙ったままだったが、美羽と紅葉は笑顔でそれぞれ答えて凛を見送る事に。




凛達は屋敷を出て少しした所にある街の大通りを通ろうとするのだが、ワイバーンが近くに来てる事が住人にも伝わったのか、人々がパニックとなってごった返している所だった。


「これじゃ通れないですね…。」


「ですね…。それでは…少し遠回りになってしまいますが、裏道を通って外へ向かいましょう。」


「分かりました。」


凛が人々の様子を見て困った様に話すと、警備も先程と違って街の様子が変わった事に驚いた後、凛と同様にして返事を行う。

しかし警備はすぐに気を取り直したのかそう言って右の方向へと走り出し、凛は返事を返して警備の後ろに付いて行った。

2人はその後なるべく人通りの少ない道を選び、急いで街の入口へと向かう事に。


そして凛達が街の南側にある門を素早く通り抜け、そのまま外に出る。

すると街から500メートル程離れた上空にて、ワイバーンの群れがこちらへ向けて少しゆっくりと飛んでいる所だった。


「どうにか間に合った!それじゃ僕は行って来ますね。警備のお兄さんは、ここをお願いします。」


「え…?行ってくるってどう…って飛んで行ったー!?」


『………。』


凛はそう言い終えるとその場で跳躍し、そのままワイバーンの群れに向かう様にして飛んで行った。

そしてここまで案内した警備は凛が空を飛んで行った事に目を見開いて驚き、離れていく凛を見続けながらそう叫んでしまう。

一方、その場にいた門番の2人や近辺にいた人達は、空を飛んで行った凛の事を呆然とした様子で見ていたりする。


因みに、今回どうにかワイバーン達がサルーンへ到達する前に凛が門の外へと出る事が出来たのだが、もう少し長引いていたら例え街中でも飛び立つつもりでいた。

その為凛は人知れず、自分が原因でサルーンの人々に余計なパニックを与えずに済んだと安堵の様子を見せていた。




凛は斜め上空に上がり続け、今もギャアギャアと鳴いているワイバーン10体と対峙する事となった。

ワイバーンは銀級の強さを持つ下位竜で、全長3メートル程の大きさで硬い鱗に覆われた水色の蜥蜴の体をしており、背中には蝙蝠の翼を大きくした様な物が生えていた。


「君達には悪いけど、このまま街へ向かわせる訳には行かないんだ。だから…すぐに終わらせて貰うよ!」


「グギャアアアアアア!!」


凛はそう言いながら左手で無限収納から玄冬()を取り出して右手で抜き、1番近くにいたワイバーンへ一気に向かって行く。

そして凛はその勢いのまま、空中でワイバーンを袈裟斬りで真っ二つにした。


ワイバーンは凛に斬られた事で断末魔を上げ、現在いる100メートル程の高さから地上へ向けて真っ直ぐ落ちて行った。


「よし次!あっ!」


凛は袈裟斬りにしたワイバーンが落ちて行くのを見た後、再びワイバーンの群れへと視線を移す。

すると群れから4体のワイバーンが丁度凛の左右に2体ずつ抜け、そのまま街へ向かおうとしている所だった。


「ナビ、今からウインドアローを6本出すから、ナビの操縦で左側の2体をお願い。僕は反対側にいる2体の方に向かうね。」


《畏まりました。私にお任せ下さい。》


「うん、頼むね…ウインドアロー!よし、それじゃあ…行くよっ!」


凛は斜め左後方を向いてウインドアローを唱えた事で、自身の頭上に6本の風の矢が現れ、真っ直ぐワイバーン2体の後方へ向けて飛んで行った。


凛はウインドアローが正常に飛んで行った事を確認すると、その場で反対側にいる2体のワイバーンの方へ体を向けて前傾姿勢になる。

そして自身の右の足裏に空中で足場を作るスキル、『天歩』で足場を作り、目標とするワイバーンの背中向けて勢い良く跳躍した。


「はぁっ!」


凛はワイバーン1体の頭上を高速で通り抜けながら両方の翼を切り落として墜落させた後、もう1体のワイバーンから10メートル程手前の所で急ブレーキを行う。


「…ふっ!」


そして再び天歩を使って跳躍し、残りのワイバーンの頭上に移動してそのまま首を切り落とした。


「ナビが2体倒してくれている筈だから、残りは5た…い……?」


「………。」


凛はそう言いながら群れの方へ顔を向けるのだが、ワイバーンの残りは凛の思い描いていた5体ではなく、何故か1体となっていた。




「あれ?ナビ、残りのワイバーンって…1体だけ?」


《はい。ワイバーン2体相手に6本ものウインドアローは不要でした。ですので私がウインドアローの操作を行い、6本全てワイバーンの眉間へと命中させました。マスターが翼を切り落として墜落させた個体を含め、全てのワイバーンが絶命しております。残った1体は元々余り敵意を感じておりませんでしたが、現在は敵意が完全消失。マスター、如何いかがなさいますか?》


凛は辺りをキョロキョロと見回してワイバーンを探すも、残ったのはやはり1体だけの様だった。

その為凛が不思議そうな表情でナビへ尋ね、ナビからその様な答えが返って来る。


「(飛んでる相手の眉間に全弾命中とか、どこのヒットマンですか…。)…えっと、それじゃどうしよっか。このワイバーンと意思疎通し…。」


《既に済んでおり、前方にいるワイバーンは降伏するとの事です。》


「そうですか…。(僕が尋ねる前にワイバーンとやり取りをして貰えたのはありがたいんだけど、最後まで言わせて欲しかったな…。)」


凛は困惑した様子でナビとやり取りを行い、そう思いつつ気を取り直してワイバーンとの念話を試みる事にした。


「(…もしもし、聞こえるかな?)」


「(ひっ!?聞こえるっす!降伏するっすから、命だけは助けて欲しいっすー!!)」


「(おぉ、通じた!でも仕方ないとは言え、怯えちゃってるみたいだね…。)(君に言うのもちょっとどうかって思うかも知れないけど、これから僕はお仲間達の片付けをしてくるね。だから悪いんだけど、君はそのままここで待っていてくれるかな?)」


「(分かったっす!自分、このままここで待ってるっす!)」


凛が念話で話し掛けるとワイバーンは怯えた様子で返事を行い、凛は内心そんな事を思いながらワイバーンに尋ねる。

ワイバーンは念話で返事を行った後、その場に留まりながら右の前足で器用に敬礼の構えを取った。


ワイバーンは翼を主体にして魔力の操作を行う為、羽ばたく動作がなくても空を飛び続けられたりするのだが、逆に翼を失うと先程の様に制御出来なくなって墜落したりする。


「(今のワイバーン…敬礼の構えをするとか、本当にワイバーンなのか怪しいワイバーンだなぁ。…そう言えば、こっちに来たワイバーンは()()()()()だったみたいだけど、屋敷の方は大丈夫なのかな…?)」


凛はワイバーンと念話でのやり取りを一旦終えた後、倒したワイバーンの回収を始める。

そして凛は回収作業を行いながら、先程のサーチで周囲の状況が分かっている為か、そんな事を思いながら屋敷の方へ意識を向けた。




一方、その頃の屋敷では


「おらっ!」


「グァァァァ…。」


丁度火燐が空中で大剣ルージュを振るい、ワイバーンの1体を切断して倒した所だった。

火燐に斬られたワイバーンは断末魔を上げ、地上へ向けて落下して行く。


「ちっ、こいつら数が多いな…。とは言え、屋敷に近付けさせないようにしないとだよな。次っ!」


火燐は少し困った表情となるがすぐに気を取り直し、そう言って次のワイバーンへ向かって行った。


「ぐぬぬ…翡翠貴方、そのヴェールで矢を複数本同時に射撃するとかずるい。」


「そんな事言ってる場合じゃないでしょー!数が多いんだから仕方ないじゃない!そう言いながら雫ちゃんも、(ブルー)を使って同時に魔法を飛ばしてるしー!」


「私なんて、魔力障壁で家を守ってるだけなんですけど…。」


雫と翡翠は上空でお互いにそう言いながらも、それぞれしっかりとワイバーン達を撃ち落としていた。

そして楓は家の前に立って胸の前で(マロン)を両手で持ち、家全体を魔力障壁で囲いながらそう話す。


「あっぶなっ!あたし達なんてワイバーンと同じ位の強さだから、屋敷の近くに来たのを相手するだけで精一杯なんだけど!?」


「エルマちゃん…私達、もっと強くならなきゃだね。」


エルマがワイバーンの噛み付き攻撃を慌てた様子で避けた後、自身の元に向かって来る2体のワイバーンを見ながら必死の表情でそう叫び、エルマの近くにいたイルマが苦笑いの表情で話す。


「俺達なんて、飛ぶ事が出来ないからほとんど(戦闘の)出番がないんだけどな…。せめて、向かって来る魔物から楓様をお守りしなければ!」


「「「(こくこく。)」」」


暁が楓の前に立ってそう言うと、楓を囲む様にして配置した旭達が頷く。


その後も屋敷へ襲って来た50体位のワイバーンを相手に、火燐達全員で協力して奮戦を続けるのだった。

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