196話
「エルフの里!?そこは変わった物が多いって聞くし、私も行ってみたいわ!」
「けどよ、凛の領地にエルフとダークエルフがいるってだけで何故向かう事になったんだ?」
「エルフの女性が里長の孫って言うのと、エンシェントエルフへと進化した事を伝えに行こうと思ってます。何でもかなり久しぶりにエンシェントエルフになった者が出たからか、お祝いになるんじゃないかと言われまして。」
「エンシェントエルフ!?エルフは里からあまり出たがらないから、ハイエルフですら珍しいって聞いてるんだが…。ああでも、さっきの光景を見ると一応納得は出来るか。」
「さっきの光景?アレク、貴方何か見たのかしら?」
パトリシアはエルフの里と言う単語に惹かれたのか、凛の前にずいっと身を乗り出す様にして言った。
アレックスが右手を顎に当てて尋ねると、凛がそう答える。
アレックスは驚いた後にそう言って納得した所をパトリシアに尋ねられる。
「(パティには刺激が強いだろうし、言わない方が良さそうだな)…何でもねぇよ。それよっか部外者の俺達が里へ行っても凛を困らせるだけだし、止めといた方が良さそうだな。凛、エルフの里の観光が終わったら帝国に遊びに来てくれるか?」
「あ、アレク抜け駆けは狡いわ!王都に遊びに来るのよね?」
「その話、我がシリウ神聖国も加わらせて貰って良いですかな?」
「「(誰っ!?)」」
「あ、エリオットさん。」
アレックスは内心そう思った後に首を振ってそう答え、パトリシアはそう叫んだ後に(凛が男性だと知らないからか)凛の右手を両手で掴んで尋ねる。
しかし後ろからやって来たエリオットにそう言われた事でパトリシアとアレックスは内心突っ込み、サルーンでは無くここに来たんだと言いたそうな表情で凛がそう言った。
「あれから凛様とお会いする事が出来ずにいた為、こちらから伺わせて頂きました。宜しければ神聖国にも訪問して頂ければ、と思いまして。凛様でしたら歓迎致しますよ。」
「凛、お前すげぇな…。信者や関係者以外に厳しいとされる、女神教関係者にここ迄言われるとかよ。」
「あはは…。」
凛はエリオットにそう言われ、アレックスは驚いた表情で言う。
パトリシアは驚いたままだったが、凛は苦笑いの表情でそう答えた。
その後4人で話し合い、領地から近い順番と言う事で帝都、王都、そして聖都へと向かう事になった。
パトリシアは凛の領地がサルーンの近く…つまり王国の扱いにしたいのもあってか納得していなかったが、アレックスも一緒に行くと言ったら途端に大人しくなる。
「…しかし凛よ。まだここだけとは言え、治める能力があるだけじゃ無く失った手足を戻すだけの魔法が使えて見た目も人柄も良いとか、俺等王族皇族よりも王みたいな存在だよな。」
『(こくこく)』
「そうかな?」
話が一通り纏まった後、アレックスがそう言うとパトリシアやエリオットを含めた周りの者達が一斉に頷いた。
これを凛は不思議に思ったのか首を傾げる。
「…!! …皆さんすいません。ちょっと緊急事態が起きましたので対処して来ますね。行くよ美羽!」
「うん分かってる!」
「おい!凛どうした…って!あいつ等飛べんのか!!」
『………。』
その後も4人で軽く話していると、凛は南から何かが高速で領地へと向かって来る事に気付く。
直後に月の目を利用してなんとか翼の生えた黒っぽいドラゴンが10体以上いると言う事が分かり、凛はそう言って美羽と共に南の方向を向いて斜め上空へと跳んでそのまま飛んで行った。
アレックスはいきなりそう言って飛んで行った凛達に驚いてそう叫び、その他の者達は呆然としていた。
「凛!!」
「火燐!雫、翡翠、楓も一緒だったんだね!」
「ああ!たまには甘い物でも一緒に食べようかって事でトルテの所にいたんだよ!そしたらこっちに向かって来る馬鹿がいるって分かって、急いで出て来たんだ!」
「そうなんだ!ありがとう!」
凛と美羽は外山始めて直ぐに後ろから火燐に声を掛けられる。
凛と火燐は軽く話し合い、一緒に南へと向かう事に。
「…あのドラゴンだね!」
「(…む?なんじゃ其方は?)」
「…! 貴方が向かっている先に住んでいる者です!貴方はどうしてこの先へと向かうのでしょうか?」
「(特に理由は無いの。強いて言えばこの先に世界樹があるから、であろうか。妾は世界樹があるとあまり良くない影響があるのでな。)」
凛達は領地から200キロ程南に進んだ上空にて、全長20メートル程の厳つい見た目をした漆黒の龍と半分位の大きさの、黒や灰色がかった龍13体を発見する。
凛がそう言うと、リンクしていないのにも関わらず漆黒の龍から念話が飛んで来た。
凛は少し驚いた後にそう尋ねると、漆黒の龍は凛の領地の方へ視線をやってそう言った。
どうやら200キロ程離れて見えないにも関わらず、この上空でも世界樹の場所が分かるらしい。
「世界樹、ですか。あの木は僕の領地のシンボルの様な物となっていますし、仲間の分体でもあります。何より貴方程の龍が領地へ向かわれると人々が混乱しますので、申し訳ないですがお帰り願えないでしょうか?」
「(そうは言ってものぅ、あれが近くにあると言うだけで妾は落ち着かないのじゃ。…其方がどかぬと言うのであれば、戦うしか無いかの?)」
凛が困った表情で説明すると、漆黒の龍も少し困った様に言う。
そして漆黒の龍はグルル…と言いながら、歯を剥き出しにしてそう言うのだった。