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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
強化&アウドニア王国の街サルーン編
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18話

ガイウスは先程の挨拶を終えてから凛達と同じテーブルの向かい側に座り、自身の後ろにはアルフォンスと部下1名が控える形となった。

そしてガイウスはメイドに紅茶を各自に配る様に指示し、メイドは1分で紅茶を配り終えて部屋から出て行った。




「………。(一見すると、目の前にいる3人はあまり強くなさそうに見える。しかし俺の元冒険者としての勘が、その3人の誰にも勝てないと言っている…か。さて、これをどう対処したものか…。)」


ガイウスはメイドが出て行ってから5秒程かけて凛、美羽、紅葉の順番で見た後、内心でその様な事を考えていた。


「…まず始める前にですが。」


「…!」


「僕はこう見えて男だと言う事を先にお伝えさせて頂きます。では…今回、こちらの屋敷に招いてまで僕にお会いしたいとされる理由をお伺いしても宜しいでしょうか?」


「(…はっ!呆気に取られていたが…この見た目で男などと、誰が思おうか。だが今は話を進める為にも、先程の追及は控えねばな。)…コホン。部下から、貴殿らが死滅の森の近くに建物を立てて住んでいるとの報告を受けている。…それで相違ないか?」


ガイウスが中々話を切り出さなかった為、凛がそう言って軽く自分の事を話してガイウスへと尋ねる。

ガイウスは5秒程呆けた後に我に返るのだが、その様な事を思ってから咳払いを交えた話を行い、反対に凛へ尋ね返した。


どうやらガイウスは、凛が男だと伝えた事を全く信じようとは思わない様だ。

そして、ガイウスの後ろにいるアルフォンスともう1人の部下は、未だに呆けたままとなっている。


「はい、その通りです。以前過ごしていた所が手狭になりまして、新しい家を建てるのにあの場所が丁度良かったので建てさせて頂きました。アルフォンスさんがいらっしゃるまでこの街の土地だと言う事を知らなかったのですが、宜しければあの場所に住み続ける許可を頂けたらと思っております。」


「…単刀直入に聞こう。凛殿があの様な場所に家を建てた目的は何だ?単に周辺の景色が気に入っただけ、と言う訳ではあるまい。」


「僕個人が家の近くに生えている高い木が気に入ってる事もありますが、一言で言えば家に住む皆が強くなる為です。ガイウスさんは、ゴブリンの『姫』の事はご存知でしょうか?」


「(初対面にも関わらずいきなりさん付けで呼ばれるとは…。見た目にそぐわず、肝が太い者なのやも知れんな。)…噂は聞いた事があるな。サルーンの街から離れた所にある、人を襲う事をしない温厚なゴブリンの集落に数年前に生まれた存在…だったか。その姫と、貴殿らが家に住む事と何の関係があるのだ?」


凛は面接を行う様に淡々とした様子で話すと、(ガイウスは自分が強面であると自覚している為か)自分に対して臆する事なく真っ直ぐ見て話す凛に対し、僅かにだが好感を持つ様になる。

しかしガイウスは感情で左右される訳にはいかないと思ったのか、軽く目を閉じた後に凛へ窺う様にして尋ねる。

凛は答えた後にガイウスへ尋ね返した為、ガイウスは内心で苦笑いを浮かべた後に考える素振りを見せて答える。




「その集落に生まれた『姫』を、とあるゴブリンキングが自分の所有物にしようとして、強制的に自分の巣へと連れて帰りました。その後、同じゴブリンキングとその配下達の手により、温厚なゴブリンの集落は壊滅させられました。集落へと襲ったゴブリンキングに『姫』を近くに置く様に、それと集落へ行かせる様にそそのかしたのは、死滅の森の表層にあるとされるオーガの集落に出入りしているグレーターゴブリンになります。僕達がその集落を襲ったとされるグレーターゴブリンとゴブリンキング達を討伐した後、壊滅させられた集落内にいた生存者を保護しました。そして…。」


「ここからは私が。『姫』と呼ばれていた者とは私の事でございます。私は凛様に保護して頂いた時に紅葉の名をたまわりました。私はその事によりネームドモンスターとなりまして、ゴブリンから今の姿の妖鬼へと進化致しました。私がまだゴブリンの姿で洞窟で捕らわれていた時に、グレーターゴブリン様がオーガの集落から来た事を自慢気に話してらしたので間違いないかと思われます。私の他に保護された者達も同様に凛様から名前を頂きまして、その内の1名は私と同じ妖鬼に、残る3名は現在オーガとなっております。その3名のオーガも私と同様に妖鬼…亜人へ向け、進化の為に私達と一緒に死滅の森へと赴いていた…と言う所存でございます。」


「そして残りの3名も無事オーガから妖鬼へと進化し、こちらの紅葉の様に亜人になる事が出来ましたら、こちらからサルーンの街の方達と交流を始めようと思ってました。街の方達も、相手が魔物ではなく人なら警戒心が薄れ、話を聞いて貰いやすくなりますからね。ですがその前に、ガイウスさんの方からこちらへ話を持ち掛けて下さったので、僕としては助かりました。」


ガイウスからの問いに凛と紅葉は互いに目配せを行い、凛、紅葉、凛の順番で答える。


「…ゴブリンが進化して妖鬼族、つまり亜人になれると言う事に私はまず驚いたのだが…。それと、今凛殿が言った助かった、と言うのはどういう意味だ?」


「紅葉はゴブリンだったとは言え、一応この世界の住人となります。しかし、僕とこちらの…美羽はこの世界の住人ではありません。ですので、この世界にある街の暮らしを実際に見てみたかった、と言うのが1つ目の目的になります。」


「(ぺこっ)」


「…2人がこの世界の住人ではない、だと?」


「ふふ、そう仰ると思ってました。…まずはこちらを。」


凛が話し終えて少し経った頃にガイウスが凛に尋ねると、凛は隣の美羽を手で指し示しながら話す。

美羽は凛に指し示された事で、椅子に座ったままガイウスへ向けて頭を下げていた。


ガイウスは凛がこの世界の住人でないと言った事で、凛に対していぶかしんだ様子を見せて尋ねる。

凛は想定済みだったのか、笑いながらそう言って袋に入った状態のクッキーを無限収納から取り出し、テーブルの上に置いた。

凛が無限収納から取り出したクッキーはアルフォンスに渡した物と同じで、透明な袋の中に200グラム位の量が入った物となっている。


「(今のはどこから出した?)…それは何だ?」


「これはクッキーと言うお菓子でして、昨日そちらのアルフォンスさんが僕達の家で食べたのと同じ物になります。」


「これが…クッキー?(ギロッ)」


「(サッ)」


「…私もクッキーを食べた事はあるが、この様に綺麗な形をした物ではなかったぞ?」


ガイウスは凛が目の前に置いた物を見ながら尋ね、凛は右手でクッキーを指し示しながら答える。

するとガイウスはそう言いながら、どういう事だと言わんばかりにギロッとアルフォンスを睨むのだが、アルフォンスは追及を受けたくないからかサッと顔を逸らした。

ガイウスはアルフォンスの態度を見て下を向いて軽く溜め息をつき、再び凛の方向を見て尋ねる事にした。


「失礼。(サクッ、ボリボリボリ…)当然この様に食べれます。あ、勿論毒等入ってませんのでご安心を。他にも色々出せるのですが、それはまたの機会にしますね。それよりも、僕としましてはもう1つの目的の方が重要なんですよ。」


「…その重要な目的とは何だ?」


「僕も昨日分かった事なのですが、どうやら死滅の森に異変が起きている様です。今後はサルーンの街の様に、森に近い街や村等へ森の魔物が襲ってくる可能性がある、と言う事を伝えたかったんですよ。」


「バカなっ!!」


凛はガイウス達を見て苦笑いの表情を浮かべた後に袋を開封し、中からクッキーを1枚手に取って食べ始めた。

凛がクッキーを食べ終わった後にガイウスへ説明すると、ガイウスは少し面倒になってきたのか半ば呆れ顔で凛へ尋ねる。

凛が真面目な表情でそう伝えると、ガイウスは凛が言った事が信じられなかったのか、そう叫びながら椅子から立ち上がった。


「あくまでも僕の推察なん…。」


バンッ


「大変です!!」


「何事だ!?今は大事な話の最中なのだぞ!!」


「申し訳ありません!ですがワ、ワイバーンが!ワイバーンが10頭程、死滅の森方向からこちらへ向け、真っ直ぐ飛んで来ております!!」


凛が尚もガイウスへ向けて話を続けようとするのだが、そこへ街の警備の1人が慌てた様子で待合室に駆け込んで来た。

ガイウスは警備の男性に声を荒げて尋ねると、男性は慌てた様子のままでそう叫ぶのだった。

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