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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
辺境都市サルーンを取り巻く者達編
195/594

191話

凛はパトリシアとアレックスに引っ張られるまま、サルーンの案内をさせられていた。


「ねえねえ、これって…。」


「なあなあ、さっき通った時にサルーンを囲う外壁を見たんだけどよ…。」


何か見た事の無い物を見付ける度に、凛はこうやって両側から尋ねられる。


そんな困っている凛の直ぐ後ろでは、美羽とガイウス、それとゴーガンが加わって様子を見ていた。




「あー…疲れた。最も聞かれるであろう喫茶店と商店は後回しにしたけど、まさかこんなに根掘り葉掘り聞かれるとは思わなかったよ。」


「凛殿、済まないな。俺では質問されても漠然としか答えられそうに無くてな、凛殿に丸投げする形になってしまった。」


「最近サルーンで変化のあった事の殆どは僕が関係してますからね。しかし、まさか王女と皇子が同時に来るとは僕も思いませんでしたが…。しかしアレックス皇子殿下は聞くと言うよりも、思い出すって感じがするのは気のせいでしょうか?」


「うーむ、皇子殿下とは言え他国の事だからな。正直俺は分からん…。」


「そうですか…。」


凛達はパトリシアとアレックスがそれぞれサルーン内で予約したとされる宿やホズミ商会、それとアレックスから言われた事でサルーンにある土魔法で建てた頑丈な外壁についての説明をした後に、一同は公衆浴場へとやって来た。

2人は大きな風呂と言う事にテンションが上がった様で、仕組みを知らないパトリシアは美羽を連れて中へと入る。

対するアレックスは()()()()()と答え、1人で中へと入って行った。


凛は公衆浴場の外に設けたベンチに座ってそう言うと、ガイウスは申し訳無さそうに言った。

凛は少し考える様にして言うものの、ガイウスは首を振って答えた事で凛はそう言って少し残念そうな表情になる。




「あ、いたいた。凛様ー、今大丈夫?」


「あれ?ステラ、どうしたの?悪いけど今は手が離せないと言うか、王国の王女と帝国の皇子が同時に来たから案内している所なんだよ。」


「あー、そうなんだ。けど普通、王女と皇子って同時に来るものなのかな?」


「現に来てしまってるからね…。おかげで精神的な負担も大きくてさ、入浴してる今の内に少し休んでる所だったんだ。」


「そうだったんだ。それじゃ僕はいない方が良さそうだね。」


「それが分からないんだよね…。王女は初めて見る物への興味で尋ねて来るんだけど、同じく尋ねて来る皇子の方は知ってる様に思えたんだ。この中(公衆浴場)へも知っていると言って入って行ったしね。」


「え?それって…。」


「うん。ステラと同じ、転生者なんじゃないかって僕は思ってる。」


凛が公衆浴場の外のベンチに座り始めて15分が経とうとしていた。

すると頭巾をかぶっていない黒い衣装姿のステラがそう言って、手を振りながら凛の元へとやって来た。

凛は少し申し訳無さそうな表情で言うと、そんな偶然ってあるの?とばかりにステラが尋ねる。

その後、凛とステラは複雑な表情で話を進めて行く。




「凛達の考えで合っているぜ。くくっくくっ、まさか公衆浴場も含めてこんなに日本の物があるとは思わなかったがな。」


「あれ?その変わった笑い方…トモ?」


「あ?何でお前が前世のあだ名を知ってるんだよ。女でその呼び方をしてる奴はいなかった筈だ。」


「トモ、僕だよ陽向(ひなた)…って言っても、性別が変わってしまったから分からないか…。」


「え?お前ヒナなのか?お前…女に生まれ変わったのかよ!言われてみれば、どことなく面影があるな!」


「うん…。トモはパッと見だと分からないね。」


「え…2人って知り合い?」


「そうみたい…。」

「その様だな…。」


パトリシアよりも先に出たアレックスは、そう言って公衆浴場から出て来た。

ステラはアレックスの少し特徴的な笑い方に引っ掛かりを覚えたのか、そう口に出してしまった。


アレックスは少しだけ不機嫌そうに言い、ステラは自分の事を指差して言うが直ぐに項垂れてしまう。

アレックスは驚いてそう言うと、ステラは複雑な表情で頷く。

凛、ステラ、アレックスの3人は互いを見合い、揃って困惑していた。




「戻ったわよー…って、あの亜人の娘は何なの?」


「つ、疲れたよ…。」


「どうやら、アレックス皇子の知り合いみたいですよ?」


「ふーん…。(あんなに楽しそうにしてるアレクの顔、初めて見たわ。私よりもそいつ(亜人の娘)の方が上だとでも言うの…?)」


「…それでな、その時に俺の兄貴がよ…。」


「(クスクス)そうなんだ?僕はね…。」


その後、妙に艶々としているパトリシアと疲れた表情の美羽が公衆浴場から出て来た。

パトリシアは最初こそ機嫌が良かったものの、アレックスと楽しげに話をしているステラを見て不快に思った様だ。

少し棘のある言い方で凛にそう尋ねる。


凛はそう答えるが、パトリシアはそう言って不快な表情のままステラの事を見続けていた。




どうやらステラとアレックスは、前世では幼馴染み(勿論どちらも男性)だったそうだ。

ステラこと陽向が事故で亡くなる数日前に、アレックスこと智也は男友達と遊んでいた。

その時に道路へ飛び出した男の子を庇い、車と衝突した事が原因で亡くなったそうだ。

ステラはアレックスの葬儀の帰り道、幼馴染みが亡くなったと言うショックを引き摺った事で道路に出てしまった上に反応が遅れたとの事。


2人はこちらの世界(リルアース)に来てからの事の情報交換をしていた。

2人共性格は違うが仲が良い事が周りにも伝わり、その様子を凛は微笑ましく見ていた。

しかし反対に、パトリシアは面白くなさそうに様子を見る。


パトリシアはその後も少し不機嫌になっていたが、お昼と言う事もあって一先ず喫茶店へと向かう事に。




「あら?凛様がここに来るなんて珍しいわね。」


「ニーナさんお疲れ様。いきなり呼ばれたから行ってみたら、パトリシア王女殿下とアレックス皇子殿下を案内する様にって事でね…。」


「…成程。ここへは貴族も普通に来る様になったから、そろそろ王族もとは思ってはいたわ。しかしまさか同時に、しかも帝国の皇子殿下もいらっしゃるなんてね。…それと、ステラは何故皇子殿下の隣に?」


「何でも知り合いらしいよ。」


「世の中分からないものねぇ。…凛様、王女殿下がこちらを見ているわ。そろそろ戻った方が良いのかも。従業員の子達には失礼が無い様に伝えておくわね。」


「分かった。ニーナさん、ありがとう。」


ニーナは店内に凛達が入り、パトリシア達を席に着かせた後に凛が自分の方へ向かって来た事で少しだけ驚く。

2人は少しの間話し、ニーナがパトリシアの方をチラッと見て凛に戻る様に促す。

凛はニーナにお礼を言って美羽達の所へと戻る。


喫茶店には貴族もいたが、王族、皇族は凛達の所だけな為周りの視線を集めていた。




「凛。俺は海鮮あんかけチャーハンにコーラ、デザートにプリンを頼むぜ。」


「あ、それじゃ私も…。」


「パティは喫茶店初めてなんだろ?そうだな…オムライスにコーンスープ、デザートはショートケーキ辺りにしておけ。」


「そ、そう…?アレクがそう言うならそれにするわ。」


「(んー、なんだかんだで2人は仲良いんだよなぁ…。最初に騒がしかったのが嘘みたいに思えてくるよ。)すみません、注文良いですか?」


アレックスがそう言うと、パトリシアは少し声を控え目にして言う。

しかしアレックスがそう言って自分の為に選んでくれた事が嬉しかったのか、パトリシアはそう言って少し頬を赤くして俯いてしまう。


凛は少し複雑な表情で店員を呼んで注文を行う。

因みに呼ばれた店員はカチコチに固まっており、動きや喋り方がぎこちなかった。


パトリシアはふわとろのオムライスに品の良い甘さのコーンスープ、そして初めてのスイーツとなるショートケーキといずれも感動しながら食べていた。




昼食後に隣の商店へと向かう事になり、先程の事で機嫌が良くなったパトリシアがアレックスの手を引いて先に商店の中へと入って行った。

アレックスは思わずステラの手を引いていた為ステラも一緒に入り、凛と美羽は遅れて商店の中へと入ろうとしていた。


「やあ凛君。」


「あれ、ライアンさん?どうしてここに?」


「王都へ帰る途中に王女殿下に会ってね。そのまま護衛としてここに来る事になったんだよ。」


「そうなんですね。」


「それにしてもほんの少し見ない間に、更にサルーンの活気が増したんだね。凛君の領地も解放したって聞いたしね。」


そこへ凛、そして美羽の後ろからライアンに声を掛けられる。

ライアンは美羽の事()諦めたのか、真っ直ぐに凛を見て話をして凛もそれに答えていた。

凛はライアンの事に気付いてはいたが、サーチの事は仲間や配下しか知り得ない為気付かなかった風にライアンと接していた。




「凛君のおかげで可愛い子も増えたみたいだし、僕は嬉「あらん♪そこにいるのはライアン様じゃなぁい♪」…え?」


「ん?」


「はぁ~い♪」


「うぉっ!!ま、マリア君!?な、何故、君が、ここに…?」


「皇子様の護衛で来たに決まってるじゃなぁい!ライアン様~、会いたかったわぁん!」


ライアンは上機嫌で凛に話を続けるが、右の方向からオカマ口調の言葉が聞こえた事で固まってしまう。

凛はそう言ってすっと、ライアンはぎぎぎぎ…とゆっくりと声がする方へと顔を向ける。


するとそこにはスキンヘッドなのに真っ赤なドレスに身を包んだ、かなり引き締まってて筋肉質な40代と思われる男せ…女性(?)がウインクをしながら手を振っていた。

ライアンは驚き、片言な言葉遣いでマリアと呼ぶ者へと尋ねる。

マリアはそう言って、ライアンの方へとアスリートの様な走り方で走り出した。




「凛君!僕は急用を思い出したよ!それじゃあね!!」


「あっ!ライアン様~、待って~ん!」


『………。』


ライアンは敬礼する様に右手をしゅたっと額の上にやり、そう言って走り出す。

マリアはそう言って走り方を女の子走りへと変え、ライアンを追い掛けて行った。


凛と美羽を含めた周りの者達は、その様子を呆然と見ているのだった。

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