190話
短いです。
その分明日の分の投稿は長くしております。
「すいませーん。」
「大体、何で帝国の皇子であるあんたがこんな所にいるのよ!!」
「俺がどこに行こうが勝手じゃねぇか!それよりも出不精である王・女・様が、王都から遥々来た事の方が驚きだぜ。帝都よりも王都の方がサルーンから遠いってのによ。」
「はあ!?それこそ私がどこに行こうが勝手「すいませーん!!」…え?」
凛は応接室へと入り、部屋の中央にある机の近くで男女に声を掛ける。
しかし全く聞こえていないのか、2人共言い争いを続けていた。
女性が再び叫んでいる所を凛が遮った事で驚いて凛の方へ向き、男性も凛の方へと視線を移した様だ。
女性は年の頃が二十歳位。
身長は163センチ程で背中迄の真っ直ぐ伸ばした金髪に、少しつり目ではあるがエメラルドの様に綺麗な瞳をしていた。
それと淡いピンク色のドレスを身に纏っており、頭には白金と思われるティアラを着けていた。
男性も年の頃が二十歳位。
身長は176センチ程で少しピンクがかった紅いミディアムヘアーで紅い瞳を持ち、顔も髪型同様にワイルドな印象を受ける。
服装は黒と緑を基調とした軍服の様な物を着ており、首元には紅いスカーフを着けていた。
「…失礼だけど、貴方は?」
「僕ですか?僕は凛と言います。」
「まあ!貴方が凛なのね!この街に来てから、事ある毎に貴方の名前が出て来るのよ。王都には無い珍しい物や美味しい物が沢山あるみたいだし、私サルーンの事を気に入ったわ!」
「(こいつが凛か。パティもきつめとは言えかなり綺麗な部類に入るが、ここ迄整った奴は見た事がねぇ。それに…)」
女性は凛へ尋ね、凛はそう返事をする。
すると女性は立ち上がったまま両手を前でパンッと合わせ、嬉しそうに話す。
男性はその間、凛の事をじっと見て考え事をしていた。
「申し遅れたわね、私はパトリシア・オブ・アウドニア。アウドニア王国の王女よ。それで、こっちの頭の悪そうなのが…。」
「誰の頭が悪いって?お前だってそこ迄頭が良い訳じゃ無いじゃねぇか。「大きなお世話よ!」…おっと、自己紹介だったな。俺はアレックス・ダライド、ダライド帝国の第3皇子だ。帝国の皇子っつっても上に2人の兄がいるからな、割と好きにやらせて貰ってるぜ。」
「(うわー、この2人仲が悪そうだなぁ。)」
パトリシアとアレックスは仲が悪いのか、お互いを見ずに親指で『これ』と指差しした状態で名乗る。
その様子に凛は苦笑いを浮かべ、内心そう思っていた。
「ねえねえ、アレクの事は放って置いて良いから私とお話しましょ?貴方が来てくれたと言う事は、サルーンの案内をしてくれるのよね?」
「え?案内?(チラッ)」
「………。(すっ)」
パトリシア王女は両手で凛の右手を持ち、嬉しそうにそう言った。
凛はここに来る事以外何も聞いていない為どういう事?とガイウスの方を見るが、ガイウスは凛の視線を避ける様にしてすっと明後日の方へと顔を向ける。
「なんでだよ!パティこそ自分の国だし、誰か別な奴に頼めば良いじゃねぇか!俺は個人的に凛に聞きてぇ事があるんだよ。」
「パティ?そう言えばさっきアレクって…。」
「あー、私達今でこそこんなだけど、小さな頃に何度か会ってるのよ。親しい間柄の人は私の事をパットとかパティで呼ぶし、アレックスの事はアレクと呼ぶわ。」
「そう言う事だ。昔からそう呼んでいるし、今更変えるのもな…。凛も良かったらアレクと呼んで貰って構わないぜ?」
「あ、アレクだけ狡いわ!私の事も好きに呼んで良いからね!」
「ええ…?」
アレックスがそう言った事で、凛は不思議に思い口に出してしまった。
パトリシアとアレックスはそれぞれ凛の両隣でそう言った。
凛はあったばかりなのに、いつの間にかそうなってしまった事で困惑してしまった。
後、パトリシアとアレックスは仲が悪い様に見えて、実は仲が良いのかも知れない。
「取り敢えずここにいてもなんだし、凛にサルーンの案内を頼むとするか。」
「そうね!ここに来る迄に、気になるのが沢山あったのよ!」
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってー!!」
アレックスとパトリシアはそう言って、それぞれが凛の手を引っ張って外へと向かって行った。
凛は驚くが、引き摺られる様にして2人に連れて行かれてしまう。
これに美羽やメイド達は苦笑いを浮かべ、ガイウスは何とも言えない表情になるのだった。