184話 47日目
更に2日後の47日目
前日に凛達の準備が取り敢えず終わったのもあり、この日から一般人や商人、一部の貴族が領地への立ち入りが可能となった。
前日にサルーンの何ヵ所かに今日から領地への立ち入り可能の案内を貼った為、北門を開ける午前8時前の時点で既に領地の前に行列が出来ている。
行列が出来ていると言っても敢えて森を拓いて道を作る等の行為を凛達は行っていない。
その為並んでいる人達はそれぞれ立っていたり、近くの木に凭れ掛かる等して時間が来る迄待っていた様だ。
「皆さんお待たせ致しました。これから門を開けますが、サルーンに貼られていた案内の通りにお願いしますね。領民に害を与える等した場合、申し訳ありませんがここから出て行って貰いますのでご了承下さい。」
凛はそう言って、領地の東西南北に設けた門の内の北門を開ける。
凛がサルーンに案内には今日から立ち入り可能とは別に、宿や商店、食事処、公衆浴場、更にハイ・ハーピィクイーンであるトルテが店長を勤めるスイーツ店と言った、接客に携わる従業員の内の大半が魔物である事を記載した。
しかし魔物と言っても人間と同じ見た目にしてある事、
人間と同じ様に話や売買のやり取りが出来る事、
魔物とは言え領地に住む民なので害を与えたり勧誘や脅迫等の迷惑な行為を行わない事、
パン屋に勤めている時雨と氷雨も実は魔物である事も併せて記載する。
「時雨ちゃん!」
「あら?そんなに慌ててどうしたんです?」
「案内に時雨ちゃんが実は魔物だって書いてあってさ…。」
「あ、凛様が貼った案内の事ですね♪」
「君が実は魔物だなんて嘘…だよね?」
「ふふふ、実は私ドラゴンだって言ったらどう思います?」
「(う、可愛い…)はは、ドラゴンだなんてまさか…え、マジ?」
「はい♪因みに霙ちゃんもドラゴンなんですよ?」
「そんなぁーー!」
時雨と霙は可愛らしい見た目に加え、人受けする性格もあってか、身近にいるちょっとしたアイドル的な扱いになっていた。
時雨達がパン屋に来てから通う様になった男性が慌てて時雨の元へ来て、必死な形相でそう言った。
時雨は軽く首を傾げて訪ねると、男性は必死な形相のままで答える。
時雨のころころ笑いながら言う仕草に、男性は内心ドキッとする。
その後、男性は二度見する様な感じで時雨に尋ね、時雨がにこっと笑いながら言うと男性はそう言ってその場に崩れ落ちた。
この様に、凛が案内を貼った前日に時雨や霙が魔物だと知って項垂れる男性が結構いた。
しかし他の魔物が人間になった場合、どうなるのかと言った期待感があるのか、行列の殆どが男性だった。
やたらキョロキョロしている等して少々不純な動機である事を示す者が多いが、今は特に害意を与える者はいないと判断され、次々と北門から領地内に人が入って来る様になる。
領地内に入った人は以前から気になっていた世界樹の近くへと向かう者、
新たな出会いを求めて領地内の店を巡る者、
それとトルテが運営するスイーツ店へと向かう者、
一先ず宿を抑える者と様々だった。
世界樹と凛の屋敷は領地の中心部にある為、関係者以外が近寄らない様に北側と南側にアルファとゼータが日替わりで交互に立って貰う事にした。
又、イプシロンは凛が改造を施した際に、領地の南側に設けた学校の運動場の様な場所にて冒険者の指南役をして貰う様に頼んだ。
イプシロンには様々な武器を使える様にしており、指南を受けたい人が希望した武器を使う様にしている。
この運動場はこれから死滅の森へ挑む者達の助力になって欲しいと言う事で、常に解放する予定だ。
とは言えイプシロン1体では大変と言う事で、進化が終わったアーサー、流、泉の3人も手伝う事に。
領地内にもう1店舗スイーツ店を設けているが、トルテが店長のスイーツ店は従業員全員がハーピィでとなっている。
トルテは更にハーピィの数を増やし、現在100体近くに迄になった。
とは言え流石にスイーツに使う卵はハーピィの卵ではなく、日本で売られている様な普通の卵を使っている。
トルテはスイーツ(特にプリン)に五月蝿い雫から、凛と美羽を除いて唯一合格を貰った程のスイーツ作りの腕前となった。
特に名前の由来の通りにチョコを使ったスイーツが得意な様で、後日スイーツ好きの暁もこっそりと利用しているとかなんとか。
トルテは凛に振り向いて貰おうとしている時以外は、可愛らしい見た目に反して貫禄があると言うかお姉さん気質な性格をしている。
なので本人は困っているが、そのギャップが堪らないと言う男女からモテる様になるのだった。
トルテはざっくりと言えばあ○ふれた○業の愛○先生みたいな感じの見た目となってます。