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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
強化&アウドニア王国の街サルーン編
18/594

16話 ~8日目

凛達は午前11時過ぎにゴブリンの集落での供養が終わった事でポータルを使って移動しようとしたものの、エルマ達がいた木の近くにポータルを設置していなかった事に気付く。

その為凛はポータルを設置するからと言う事で高い木の元へ向かう事になるのだが、美羽も一緒に付いて行きたそうにしていた。


しかし凛はこれをやんわりと断り、寂しそうにしている美羽を宥めた後にナビに方角を尋ねる。

それから凛はその場から離れる事になるのだが、飛び立つ前に美羽達へ自分が迎えに来るまでの間、紅葉達に軽く武器の扱い方を教える様に頼んだ。


それから凛は30分程飛び続け、目的の木の近くにポータルを設置してから軽く武器を打ち合っている皆を迎えに行った後、木の根元に集まって昼食を摂りながら仮の拠点をどうするかを話し合う。

その結論、高い木から100メートル程東の位置に家を建てる事が決まった。


因みに、本日のお昼は玉子、ツナ、ベーコンレタストマト、カツ、鶏の照り焼き、ハムとチーズ、ポテトサラダが入ったサンドイッチと、カスタードクリームが入ったフルーツサンドが入った物の盛り合わせとなっている。


しかし活動を始めた初日の昨日だけでもエルマ、イルマ、紅葉、暁、旭、月夜、小夜の7人(その内の4体は現在は魔物だが、紅葉の様に魔物から亜人になる可能性がある為人として計算)が仲間になった為、今後も多くの仲間が増えるのではないかと言う事になった。

凛は取り敢えず20人が住める家を今から建て、今後も人が増えそうなら増築すると言う形で話を纏める。




その後凛は土魔法を使い、2時間程掛けて3階建ての家を建てた。


凛が建てた家は南側が入口となっており、玄関を上がって左側に客間と言う名目で簡単に寛げる15畳程の部屋を、玄関から真っ直ぐ正面には少し縦長で40畳程のリビングダイニングキッチンを設けた。

それと来客を含めた何かがあった時用にと言う事で、キッチンの左側にある通路から先程の客間へと繋がる様にしてある。


リビングダイニングキッチンの東側には洗面所等を挟んで40畳程の浴室を、そして北側に設けた階段の先にある2階と3階へは、縦長ではあるもののそれぞれ8畳程の部屋を9ずつ設ける。

そして2階に上がって真っ直ぐの所にある部屋の入口がこの家の大体中心に当たる為、その部屋を主である凛の部屋とした。

そして凛は部屋内部の扉付近の壁にコンテナ(容器)を設置し、そのコンテナにグラウンドゴルフのボール位の大きさで透明にした形の魔石を作成して収める事に。


凛がコンテナに収めた魔石は超効率化になった事で少し余る様になった魔力が元となっており、今回で言えば地球にあるバッテリーや電池の代わりとなる。

そして魔石に蓄えられている魔力を使い、家の照明やキッチンに設置した冷蔵庫やオーブン、ガスコンロや電子レンジ、それと洗面所兼脱衣場に設置したドライヤー、全自動洗濯機等の魔道具を使えるようにした。

魔道具は家電で言う所のコードの部分を壁に埋めて魔力が伝う様にしてあり、魔石は魔導具をフル稼働したとしても1週間は動かせる計算となっている。


因みに、凛が今回設置した全自動洗濯機は、エルマやイルマの様に木綿等の天然素材で出来た服用に今後必要になるかも知れないと思って用意した物だ。

多少魔法が使えるなら割と誰でも使える生活魔法の清浄(クリーン)は、身体だけでなく衣服もある程度は綺麗にしてくれるものの、限度がある為両方共きちんと(この世界では手や洗濯板しかないが)洗った方が良いとされている。

そして生活魔法は清浄以外にも、火種となる『点火(イグニッション)』と『呼び水(プライミング)』の2つがあったりする。


凛達はその日、屋敷の中を確認したり魔道具の使い方を教えたり、誰が凛の部屋の両隣になるかの争奪戦で終わった。

美羽達は中々決められなかった事もあって凛が解決法をじゃんけんとして決めた結果、凛の左隣が美羽、右隣が雫となった。


「やったー!マスターの隣ですー♪」


「…ぶいっ。」


「くっそー!納得いかねぇっ!」


美羽は跳びはねて喜びを露にし、雫はじと目のまま左右の手を自身の顔の前に持っていってピースをして軽く微笑む。

それに対して3人での決勝戦で負けた火燐は、そう言って地団駄を踏んでいた。

結局誰も3階には行かず、残った部屋は火燐、翡翠、楓、紅葉が1人一部屋ずつ、エルマとイルマ、暁と旭、月夜と小夜は2人で一部屋と言う事になった。




「…それじゃ夕食の途中になっちゃったけど、今日は僕の世界にある飲み物の事について教えるね。」


夕食の途中、凛はそう言って席を立って予めキッチン横の冷蔵庫に入れて冷やしておいたコーラやサイダー、乳酸菌飲料(カル○スの様な物)、紅茶各種と緑茶が入った500ミリのペットボトルを皆に振る舞う事に。

そしてその飲み方を教えては皆の反応を楽しんでいた。


「何だこれ!?変な味だし、口ん中パチパチするぞ!けど不思議とまた飲みたくなる味だな!」


「…(ごくごくごくごく)」


火燐はそう言って、雫はひたすら飲み続けた事でコーラを気に入った様だ。


翡翠、楓、エルマ、イルマは紅茶を、紅葉、暁、旭、月夜、小夜は(サイズ感が違うのは否めないが)緑茶を好んで飲んでいた。


「皆気に入って貰えたみたいだね。次に、皆が選んだ飲み物に合う様な食べ物を出して行くね。」


「うめーーっ!」


「凛…ぐっじょぶ!」


「このケーキ、紅茶って言うのと合うねー。」


「こちらの和菓子、と言うのもお茶と合いますね。」


凛がそう言いながら、(予め用意しておいた)皆が飲んでる物に合わせたジャンクフード、ショートケーキ、和菓子を出す。

そして火燐はハンバーガーやフライドポテトとコーラの組み合わせで、雫はショートケーキとコーラの組み合わせで、翡翠はショートケーキと紅茶の組み合わせで、紅葉はどら焼きと緑茶の組み合わせで食べながらそれぞれ話し、他の者達も楽しんでいた。


「今紹介したペットボトルの飲み物を冷蔵庫に入れておくから、飲みたい人は飲んでいいからねー。」


『はーい!』


凛は皆に向かってそう言うと、一同は元気良く答える。




夕食が済んで2時間程経った頃に凛が自室にいると、ナビから火燐、雫、翡翠、楓へのリンクを行って良いかの許可を求められた。

昨晩、ナビは美羽に火燐達がもっと頑張りたい事を伝えられた上でナビのサポートが欲しいと言われたそうだ。


凛は明日から死滅の森へ向かい、暁達を紅葉の様に進化させて人の姿にした後にサルーンへ向かおうと考えていた。

その為ナビから魔物を多数討伐する事が予想され、魔物を収納出来る人数は多い方が良いと言われた事で凛は納得し、火燐達とリンクを繋ぐ事の許可を出す。


「場合によっては一ヶ所に纏まって行動するよりも、分散した方が効率が上がる時もあるだろうしね。」


《マスターの仰る通りかと。今後は今よりも少人数…或いは単独で行動する事も充分に考えられます。》


「だよね。これからはエルマとイルマの2人もリンクを繋ぐ…と考えた方が良さそうかも。」


その後、凛とナビはその様な事を話していた。




2日目 強化初日午前6時頃


この日からキッチンにエルマ、イルマ、紅葉が加わる事になった。

これにより人数が増えた事で凛に少し余裕が出来た為、凛が作業の合間に(昨日新たに設置した)オーブンを使い、クッキーやケーキのスポンジを焼く。


火燐と雫の2人も料理の手伝いをやりたそうにしていたが、自分達には合わなかったのか悔しそうにしていた。

しかし凛が焼いたクッキーやケーキのスポンジの試食をさせると途端にご機嫌となり、この時間を風呂の掃除等にあてると言って浴室へと向かって行った。


凛達は7時頃に朝ごはん、8時頃から武器を使った軽い訓練を行う。

凛は訓練時に紅葉の鉄扇捌きを見て風や土と相性が良さそうに思えたのか、翡翠と楓の2人に紅葉へそれぞれの属性の魔力の扱いを教える様に促す。




9時頃


凛達一行はすぐ近くにある死滅の森へ向かう為、万全の状態で家を出る。


死滅の森は凛が元いた日本がいくつも収まる位非常に広大な森となっており、大まかに表層、中層、深層、最深部の4つに分かれている。

表層は魔素点から遠い事もあってか死滅の森の半分程の広さを占めており、中層に近付くにつれて銀級、金級、魔銀級と魔物の強さも上がっていく。

そして中層へ進む様になると、人々から『災厄』と恐れられる魔物を見掛ける事もあって、魔銀級以上の強さの魔物が確実にいるとされている。


凛は森に入る前から近くに魔物が1体だけで行動しているのが分かっていた為、凛先導の元でその魔物がいる所へと向かう。


一行は森に入ってすぐに、体長150センチ程の蟷螂かまきりの姿をしたバトルマンティスに遭遇した。

バトルマンティスは銀級の強さを持つ魔物で、鋭い鎌の形をした前足を武器としている。

まずは凛が様子を見ると言う事で、1人でバトルマンティスと戦う事に。


「キチキチキチキチ…。」


バトルマンティスは2つある前顎をこすって音を出し、仲間へ合図したり攻撃等の行動をする様だ。


バトルマンティスは前顎を擦った後に攻撃を行うのだが、凛がそれらをことごとく避けた事に業を煮やしたのか、右の前足を大きく振りかぶって攻撃する。

凛はその攻撃を避けた事で攻撃した先にあった木に鎌の刃が食い込んでしまい、バトルマンティスは前足を抜こうとするが中々抜けず、動けない状態となる。

どうやら凛達の周りに生えている木は普通よりも濃い魔素を浴びてるからか、意外に頑丈だと言う事が分かった。


「はっ!」


「ギヂィィィィィ…。」


凛はその隙に、そう言いながら一刀でバトルマンティスを沈めた。

しかしバトルマンティスは凛から横に真っ二つにされた際に断末魔を発してしまい、近くにいたバトルマンティス達を呼び寄せた事で凛達は予期せぬ形で集団での戦闘になってしまう。

その後最初こそ少し戸惑ったものの、凛の指示で連携し合った事で特に危ない様子もなく戦闘を終える。

そして戦闘が終わる頃に、サポートを得て何体かバトルマンティスを倒した事で、小夜が進化出来る様になったのが分かった。


どうやら小夜によると、ホブゴブリンからの進化先としてゴブリンキング、グレーターゴブリン、レッサーオーガとある様だ。

しかしレッサーオーガ以外はそこで打ち止めとなっており、勿論亜人になれない事もあって、小夜も旭と月夜と同じレッサーオーガへ進化すると伝えられた。

そして小夜は進化するまではこれ以上戦っても特に意味がないと言う事になるのだが、先に1人だけで帰って皆を待つのもとなった為、戦闘に参加しないで後ろに付いて来て貰う事に。




その後、お昼と午後3時のおやつの時間以外は森の表層で魔物と戦って皆の経験を積み、午後5時の帰宅時間になる少し前に、エルマとイルマの2人も進化可能だと言う事が分かった。

凛は少し眠そうにしているエルマ達の事を考え、帰宅してすぐに夕ご飯を済ませ、3人には早目に休んで貰った。


「ふぅ…。明日からも今日みたいな感じで頑張らないとだ…ん?」


「凛。私も入る。」


「お邪魔しまーす♪」


「え?雫に美羽?2人はさっきもお風呂へ入ったのに何しに…って、2人共いきなり抱き着かれるとその…(胸が)当たってるんだけど…。」


「(わざと)当ててんのよ。」


「そうそう。雫ちゃんの言う通り当ててるんだよ♪」


「ちょっ、2人共!どこからその情報仕入れて来たの!?」


「「勿論、凛(マスター)の知識から。(だよっ♪)」」


凛は一通り美羽達が入った事を確認し、最後に1人で風呂に入っていた。

そして浴槽に浸かりながら今日起きた事を整理し、明日へ向けて頑張ろうと思いながらそう言っていると、白いバスタオルを巻いた雫と美羽がそう言いながら浴室へと入って来た。


そして2人は浴室に入るなり、いきなり浴槽に浸かっている凛の元へ向かい、凛の左右からそれぞれ抱き着いて来た。

これに凛は困った様子を見せてそう言うと、雫はそう返事をしながらぐりぐりと(Aカップの)胸を押し当て、美羽はぎゅっと抱き締めながらそう言う。


凛は2人の言葉に対し、触るのは悪いと思ったのか軽く万歳の構えをしながら驚いた様子で尋ねると、雫は澄まし顔で、美羽は嬉しそうにしながらそれぞれ答える。

そしてこの後も暫くの間、浴室でぎゃーぎゃーと騒ぐ声が響いた。




3日目 強化2日目


無事にエルマは中級天使(銅級の強さ)、イルマは中級悪魔(同じく銅級の強さ)、小夜はレッサーオーガへと進化出来た様だ。

しかし3人には進化した事で体に変化があるかも知れないと言うのと、体を馴染ませて貰う為に今日1日をお休みにして屋敷に残って貰う事にした。


まだ凛達はそこまで森の中へ進む予定はなく、ナビのサーチ(探索)の範囲が超効率化になった影響で半径30キロ程にまで広がっていた。

その為家に何かあったとしてもすぐに向かえる距離にあるから大丈夫だろうと判断し、他のメンバーと一緒に森へ向かった。


この日は旭と月夜の2人が進化出来る様にと討伐を頑張って貰い、午後2時過ぎに進化出来る事が分かった為、凛達はそのまま切り上げて帰宅する事に。

因みに、レッサーオーガからは暁の様なオーガだけではなく、トロールやサイクロプスと言った巨人族にも進化出来る様だ。


「凛くーん、昨日は美羽ちゃんと雫ちゃんが来たんだってー?」


「お邪魔しますね…。」


「今日は翡翠と楓か、昨日の美羽と雫だけじゃなかったんだね…。」


凛が入浴中、バスタオルを巻いて右手を挙げた翡翠と、胸の上でバスタオルを左手で押さえた楓がそれぞれそう言いながら入って来た。

そして凛はこれからもこう言った事が続くと思ったのか、そう言いながらガクッと項垂れていた。




4日目 強化3日目


一晩明け、旭と月夜はレッサーオーガからオーガへと進化した。

この日は午前中にエルマとイルマと小夜が、それと午後4時過ぎに火燐と翡翠の2人に進化の兆しが見えた。

しかし火燐と翡翠の2人は進化先が不明と出た為、凛が進化しなくても良いのではと説得したものの、2人はもっと強くなりたいからと拒否して進化する事を決める。


「…良かった、今日は誰も入って来なかったか。これからもこんな感じで続くと良いんだけど…。」


今日は凛が入浴していても誰も入って来なかった事で凛はそう独りちていたのだが、自分でも無意識に(明日から絶えず誰かしら浴室へ入って来ると言う)フラグを立てる事になる。




5日目 強化4日目


エルマは上級天使(銀級の強さ)、イルマは上級悪魔(同じく銀級の強さ)、小夜はオーガへとそれぞれ進化した。

そして火燐と翡翠の2人はと言うと…炎の精と風の精と言う種族へと進化した。


ナビはどちらも魔素の量からして金級の強さではないか、と言っていたが、前例がない事や情報がなかった為分からないと言う事になった。


「火燐ちゃん達に負けてられないね。ボクも頑張らなきゃ!」


「私も。」


「私もです…!」


「マスター、今日は少し奥まで行ってみようよ!」


「大丈夫かなぁ…。」


美羽、雫、楓の3人が火燐達に触発されてしまったのか、それぞれそう言いながらやる気を出してしまった。

更に美羽がそう力説した事もあり、凛は少々心配ではあるがそう言った後、羨ましそうにしている火燐達を屋敷へ置いて死滅の森の少し進んだ場所へ向かう事に。

その後、凛はサーチを使って魔物の位置を把握し、凛以外の美羽、雫、楓、紅葉(まだ飛べないので美羽に抱えて貰った)の5人で魔物達を避けながら森の木の上を飛行し続けた。


凛達は急ぎつつ4時間程飛んで表層中部へと辿り着く。


「ここから先は金級の魔物も普通に出て来るみたいだ。油断しない様にして出来るだけ早く終わらせよう。」


『(こくっ)』


凛はそう言って美羽達が頷いたのを確認した後、辺りを警戒しながら歩き始める。

凛がサーチを使って単独行動してる魔物を見付けては討伐を繰り返した事や、美羽達は超効率化の恩恵もあって沢山討伐せずに済んだ事も相まって、慎重に探しても1時間程で進化出来る様になったと伝えられた。


3人は進化出来ると分かった事で緊張の糸が切れた様だ。

その影響もあってか、凛は美羽達から気疲れしたとの報告を受け、魔力を多く消費してかなり頑丈な小屋を作る。

そしてその小屋の中にポータルを設置し、家からでは距離が遠くて把握出来ない事もあって念の為に小屋の入口を土で固めてから皆で帰宅する事に。


「美羽達大丈夫かなぁ…。」


「あのー…。」


「えっ、エルマ!?」


「雫ちゃんから…。」


「凛様の背中を流す様にって…。」


「言われまして…。」


「イルマ、それに紅葉まで!?あの…無理して僕が入浴している時に来なくても大丈夫だからね?」


「「「少し恥ずかしいけど(ですが)、無理はしてないよ(おりませんよ)?」」」


「そうですか…。」


凛が浴槽内で美羽達の心配をしていると、バスタオル姿のエルマが顔だけを出して様子を窺う様にそう言った。

これに凛は驚いた声を上げた後、エルマ、イルマ、紅葉の順番で浴室へ入りながらそう言って来た。


凛は驚いた後に恐る恐ると言った感じで尋ねるのだが、3人からきっぱりとそう言われた事でやはり項垂れる事に。




6日目 強化5日目


雫は水の精(金級の強さ)、楓は土の精(同じく金級の強さ)となり、美羽は今までの半人半神の眷属からイェブと言う種族へと進化した。


美羽のイェブと言う種族は特に説明等はなかった為詳しい事は分からなかったが、魔素量は魔銀級に上がった様だ。

凛は結局この日は考えが纏まらなかったのと、皆立て続けに進化したからと言う事もあって休日にした。


「お邪魔しまーす♪」


「まーす。」


「へへへー、来ちゃったー。」


「お邪魔しますね…。」


「なんか凛様が女の子みたいな感じだからってのもあるけど…。」


「うん、これはこれで悪くないよね。」


「…失礼致します。」


「「グオグオ(失礼します)。」」


「(里香お姉ちゃんがいなくなった事でそれ所じゃなくなったから忘れてたけど、それまではこんな感じでお姉ちゃん達が入って来てたんだった。)…もう、好きにして…。」


凛が入浴しててもお構い無しに火燐以外の全女性(月夜と小夜を含む)が入って来た為、凛は向こうでも3人の姉達がこんな感じだったなと思ったのか、どんよりとした表情でそう呟いてしまう。


そしてこの日から毎日、凛が入浴中に、凛に対して一定以上の好感度を持つ女性が複数人入る様になった。


「美羽達…なんであんな楽しそうに凛の所へ行けるんだ…?ここはオレも…だぁっ!恥ずかし過ぎてとてもじゃねぇが無理っ!!」


火燐は脱衣場の前で、凛以外が楽しそうにしているのを聞いていた。

そしてそう言いながら自分も向かおうとするも、恥ずかしかったからかそう言ってその場から去ってしまう。




7日目 強化6日目


皆取り敢えず進化してからの状態に慣れたとの事で、一昨日森の表層中部に設置したポータルを回収した後に高速飛行で戻り、屋敷の近くで暁達を再び進化させようと言う流れになった。

その為表層中部に設置したポータルが魔物に悪用されない様にとの事で、凛だけで回収しに表層中部へ向かう。


そして凛がポータルで移動した直後、


ドォォォォォォォン


とポータルを設置した小屋へ凄い音やぶつかった衝撃と振動がした為、凛は急いで音の反対側の位置から穴を開けて小屋の外に出る。

凛はそのまま30メートル程離れた後、小屋がある方向を確認した。


するとそこには全長15メートルはあるドラゴンが立っており、そのドラゴンが再び小屋へ体当たりをしている所だった。

凛の目の前にいるドラゴンは緑色の硬そうな鱗で覆われており、少しだけ手足を短くしたステゴザウルスの様な姿をしていた。


凛はナビから、この魔物は魔銀級の強さで森林龍(フォレストドラゴン)と呼ばれる古龍(エンシェントドラゴン)の1体で、素早さはないものの硬い緑色の鱗で覆われている為か防御力が高く、それでいて気性が荒いとの報告を受ける。


「…!」


そして森林龍はどうやら凛の存在に気付いたらしく、凛を攻撃の対象とした様だ。

ゆっくりとした動作ではあるが、凛がいる方向へ向けて走り始めた。


凛は森林龍が小屋へ体当たりをした事で周りの魔物が近付いて来てるのが分かった為、短時間で終わらせようと気合いを入れる。

そして凛は普段よりも多くの魔力を武器や体に纏わせた事で刀の切れ味や身体能力を上げて一気に森林龍の元へと迫り、そのまま首を落として倒した。


その後、凛はポータルを含めた小屋の回収を終わらせてから森林龍を無限収納へ回収し、急いでその場から離れる為に屋敷の方向へ向けて飛んで行った。

しばらくして凛が慌てた様子で屋敷へ帰宅した事を皆が不思議がった為、凛が落ち着きを取り戻してから状況を説明すると皆は唖然とした様子となる。


凛は森林龍を討伐した事で進化可能と出たのだが、美羽同様に進化先が表示されなかった。

ひとまず凛はサポートだけと言う事で皆と一緒に死滅の森へ向かい、暁が進化出来る様にと言う事で暁を中心に討伐を頑張って貰った。


帰宅した後、皆から心配された事や凛自身も不安ではあったものの、進化してみたい想いもあった為普段よりも早目に休んで進化に備える事に。




8日目 強化7日目


午前6時を過ぎても凛が起きてこなかった為、心配した皆が凛を起こしに向かうのだが、いくら体を揺さぶったりしても凛が起きる事はなかった。

その後、午前10時頃になって凛がようやく目を覚ました事で皆が安堵し、凛も無事に進化出来たと喜ばせる。


凛はどうやら魔素量が神輝金(オリハルコン)級に上がり、種族名が半人半神からサクサクルースへと進化したとナビから報告を受ける。


《サクサクルース…アザトースの雌雄同体の落とし子、と記載されております。》


「雌雄…同…体……。」


「マスター!?」


凛はナビに種族名の所に記載されてある補足説明を読んで貰ったのだが、説明を受けた後にそう言って崩れ落ちてしまう。


凛はどうやら雌雄同体と言う単語を聞いて、蝸牛かたつむり蚯蚓みみずと同じ様な物だと分かった事がショックだった様だ。

注目すべきは雌雄同体ではなくその前後の単語なのだが…。


凛は崩れ落ちた後にしばらく放心状態となってしまい、慌てた声を上げた美羽を含めた皆から心配される事に。


凛はしばらく美羽達から励ましては貰ったものの、効果は今一つだった。

しかしそこへ暁が凛へ祝辞しゅくじを述べた事で、凛は一気に立ち直っただけでなく暁へ意識が向いたのか、笑顔になって暁と話をし始める。

これに凛と話をしている暁を含め、皆は凛が立ち直ってくれて良かったと内心安堵していた。


暁は凛が目覚める前に無事に妖鬼へと進化し、紅葉の様に亜人になった事で会話が可能となった様だ。


そして正午となるのだが、皆が凛を心配して朝食を食べてなかった事もあっていつも以上に昼食を多く食べていた。

凛達は昼食が済んでから死滅の森へ向かうのだが、午後2時過ぎにサルーンの街から屋敷の方へ誰か向かって来ている事が分かった為、討伐を中断して屋敷へと戻る。



凛達が家に戻ると、家の敷地内で軽装姿の男性が近くにいる部下と思われる男性2人へ向け、指示を出しながら何やら屋敷を調べている様だった。

その指示を出している男性は身長が180センチ位で金髪を短く刈り上げた髪型をしており、30歳位の見た目で人懐っこそうな顔立ちをしている。


「あの…僕達の家に何かご用でしょうか?」


「…!失礼、貴方がこの屋敷の主…?で、宜しいのでしょうか?」


「あ、はい、一応僕がこの子達の主になります。少し早いとは思いますがもう少しで午後3時になりますし、おやつの時間にしましょうか。詳しい話はおやつをたべながら致しましょう。それじゃ、家にご案内しますね。」


「はぁ…。」


凛は不審に思ったが、サルーンの街から来たのと何か関係があるかも知れないと思い、金髪の男性にそう尋ねた。

男性は驚いた様子で振り向き、窺う様にして凛へ尋ね返す。

凛は頷いて答え、左手で家を指し示しながら困惑している男性達を案内し始める。

その後、凛は男性達を客間に案内し、クッキー等の焼き菓子や紅茶等を振る舞いながら話を聞く事に。


金髪の男性ことアルフォンスは、凛が家を建てた土地が王国の土地である事を伝える。

そして自分は王国にある街サルーンの警備隊長をしており、長からこの屋敷の調査へ向かう様にと指示を出された為自分達がここへ来たとの説明を行う。


凛は家を建てた土地が王国の管轄だとは思ってなかったらしく、勝手に家を建ててしまった事を詫びる。

しかし凛は家から死滅の森が近いと言う利便性や、最近は家の近くにある高い木の根元でおやつの時間を過ごしていた為、今の場所を気に入っていた。


その為、凛はアルフォンスに街の長からこの土地の住民権を頂けないかを頼んだのを最後に話が終わる。

アルフォンスは渋い顔をして席を立つのだが、凛は手土産として2つの球が入った深紅色の箱と、アルフォンス達が美味しいと喜んで食べていたクッキーを袋に入れた物を渡した。


凛がアルフォンスに渡した箱は横が30センチ位、高さが15センチ位の横長の箱となっている。

そしてその箱の中には、昨日討伐した森林龍の心臓部分の横にあった直径10センチ程の深碧(しんぺき)色をした宝玉()と、凛が何か使い道があるかも知れないと思って用意した宝玉と同じ大きさの魔石となっている。


アルフォンス達は凛からクッキーを受け取った事で、再び食べる事が出来ると少し喜んだ様子で街に戻って行った。

凛はアルフォンス達が帰ったのが午後4時過ぎと微妙な時間になってしまった為、皆で話し合いを行う。


その結果、少し早いがこのまま残りの時間は家で過ごそうと言う事になった。

凛は自分も含めて皆が進化して強くなった事もあり、この時間を利用してそれぞれに合った武器を用意し始める。




午後5時前


アウドニア王国最南端にある街サルーンのおさガイウスは、(住居でもある)屋敷内で仕事を行う為の執務室にいた。


「はぁ…?飛び地で申し訳ないが、自分達は街の住民権が欲しい…だと?アルフォンス、お前達は1週間前に突然現れた建物の調査に向かった筈だよな?それがどうしてそうなったのだ?私も暇ではないのだがな。」


アルフォンスはサルーンに戻った後にガイウスの元へ向かい、凛に渡された箱を持ちながら報告と凛からの要望を伝える。

その後、ガイウスは机の向こうにいるアルフォンスへ向けて溜め息をついた後、睨み付ける様にしてそう言い放った。


ガイウスは1週間前に、警備からサルーンの南西約10キロの地点に屋敷らしき建物が突然出来たとの報告を受ける。

ガイウスは報告を受けた後、いきなり屋敷が建った事が影響して、死滅の森の魔物がサルーンに押し寄せでもしたらひとたまりもないと判断した様だ。

念の為にとアルフォンス達の休みを潰して街の警備を強化し、冒険者ギルドと連携して不測の事態に備えていた。


しかし今日で1週間経つにも関わらず、屋敷や死滅の森に特に動きがなかった(見えていたのは窓を設けていない屋敷の裏側で、凛達の動きに気付けなかった)為、今日の昼頃にアルフォンスとその部下2名で建物の調査に当てる事に。

アルフォンスは部下を連れてサルーンを出発した後に4時間程で無事に帰って来るのだが、横長の箱を両手で持っていた事を不思議に思ったガイウスに尋ねられたと言う流れとなる。




「(現役を引いて街の長になったとは言え、ガイウス様は元金級冒険者…。ただでさえ厳つい顔してるってのに、更に怖くなるからあまり睨まないで欲しいんだけどなぁ。)…はっ。私と部下2名で馬を使い建物の調査へと向かったのですが、目的地へ着いて建物を調べていた所、建物には鍵がかかっており留守の様でした。ですので私達は建物周辺を調べていたのですが、後ろから()()と思われる方から声を掛けられました。その女性の後ろには複数名いたのですが、その女性以外で人間の女性が5名、天使族が1名、悪魔族が1名、それと見慣れない(和風を)服装をして(着て)おりましたが、妖鬼族と思われる男女が1名ずつ、それとオーガと思われる個体が3体の様でした。妖鬼族は存在そのものが珍しく、気性が荒いとはされていますが、まだ話が出来る分こちらの意思を伝える事が出来ます。しかし最後尾にいたオーガ3体は魔物である為、正直私はそこで殺されるかと思いました。しかしその集団の中で1番可愛…ゴホン。先頭に立って私に声を掛けた女性がどうやら代表らしく、建物に何か用があるのかを私に聞いてきた次第です。」


「…言いたい事は山程あるのだが…まぁ良い、取り敢えず話を続けろ。」


アルフォンスはガイウスに対して内心で溜め息をつきつつ説明を行い、凛から話し掛けられた所で話を一旦切る。

アルフォンスはガイウスへ説明を行っているうちに、不可解に感じているのか眉間に段々と皺が寄っていく。

その為、アルフォンスはガイウスに整理する時間を設けた方が良いと判断した様だ。


アルフォンスが説明を一旦区切らせてから10秒程経ち、ガイウスはアルフォンスに説明を続ける様に促す。




「続けます。代表の女性は建物の土地がサルーンの街の領土とは知らなかったそうでして、街の領土とは知らず勝手に建物を建ててしまい申し訳ないと言っておりました。しかしその後、この場所が丁度良さそうだと言う事で、可能であれば自分達に街の住民権を頂けないでしょうか、と私に尋ねられたのです。」


「他所の土地に勝手に建物を建てておいて、何という言いぐさだ。…それで?その抱えている赤い箱は何なのだ?」


「…そうでした。私が主らしき方を見て戸惑っている内にお互いの説明をとなったのですが、なにやら午後3時近くになった事でおやつの時間…とかで、私達は女性達の屋敷でもてなしを受ける事になりました。この箱はその際にガイウス様へのお土産にと預かった物です。」


「もてなしを受けた…と言う事は、お前達は向こうで出された物を食べたと言うのか?」


「はい。あちらの方々が先に食べていたのを見て大丈夫かと思い、私達も食べる事にしました。私は初めて食べる物ばかりだったのですが、いずれも非常に美味でした…。」


ガイウスはアルフォンスの更なる説明を聞いて理解する事が難しいと判断したのか、少しの間俯きながら右手を眉間に置き、その後アルフォンスが両手で持っている箱を見て尋ねる。

アルフォンスは赤い箱を少し持ち上げる様にして説明し、ガイウスは呆れた様子でアルフォンスへ尋ねるのだが、アルフォンスはガイウスへ説明している内にもてなしの時に食べたお菓子の味を思い出したのか余韻に浸る表情となっていた。


「はぁ~…。それで箱の中身は?」


「それが、森林龍の宝玉と魔石…だそうです。」


「…は?アルフォンス、すまないがもう一度言ってみてくれないか?」


「…ですので、森林龍の宝玉と魔石です。森林龍は昨日たまたま出会ってしまい、こちらに攻撃を仕掛けてきた為これを討伐。魔石は試験的に精製した物で、何かの役に立てれば…と伺っております。こちらになります。」


「これが…!」


ガイウスは疲れたのか盛大に溜め息をついた後、アルフォンスへ促す。

しかしガイウスはアルフォンスからの説明を受け、書類の処理等で疲れて聞き間違えたのかと思い、もう一度言う様にアルフォンスへ促した。


アルフォンスは少し言いにくそうにしながら再度説明し、説明を終えた後にガイウスの机の上で箱を開く。

ガイウスはそう言って、アルフォンスによって開かれた事で露になった2つの球を見て目を見開いた。


「…ふぅ。本当に宝玉と魔石なのかは、鑑定してみないとにわかには信じられんな…。仮にそれらが本物だとしたら、その集団の主は森林龍の強さである魔銀級以上と言う事になるのか。…と言うか、魔石とは精製出来る物だったのか?この話、断るつもりだったんだが…そう簡単には行かなくなったか。…誰か鑑定出来る者はいるか?」


「はっ。すぐに呼んで来ます。」


「…今回の件がこの街の希望となるか、はたまた絶望に終わるのか。…それを俺は見極めねばならんのか。」


ガイウスは流石元金級冒険者と言う事もあってか、何度か深呼吸をして自身を落ち着かせていた。

そしてアルフォンスはガイウスの最後の問いに答えた後、鑑定士を呼びに執務室から出て行った。


やがてガイウスは座っている椅子に深く座って後頭部を乗せ、天井を見上げながら1人になった部屋で自分に言い聞かせる様にして呟く。




9日目 強化8日目 午前8時前


「ふふっ♪今日から宜しく頼むね、ボクの撥ね返す白い剣(ブラン)呑み込む黒い剣(ノアール)っ♪」


「オレも頑張るから、お前も頑張るんだぜ?オレの紅蓮の大剣(ルージュ)よぉ!」


「私の氷結の長杖(ブルー)…一緒に頑張る!」


「あたしも頑張っちゃうよー!宜しくねっ、あたしの風纏う緑の強弓(ヴェール)!」


「私達も、皆さんのお役に立てる様に頑張りましょうね?私の豊穣の枝杖(マロンちゃん)。」


美羽は腰に差した2本の剣をポンポンと軽く撫でる様にしてにこにこと、

火燐は右手で目の前に燃える様に赤い大剣を持っていきながらにやりと笑い、

雫は珍しくキリッとした表情で青い長杖の真ん中の所を両手でぐっと持ち、

翡翠は背中に背負った緑の弓を撫で、

楓は茶色い枝の先の様な形をした杖を抱き締めてそれぞれそう言った。


「最後に僕のも出来た。美羽の次に作ったのも影響したからか、少し薄い黒色の鞘と白っぽい刀になっちゃった。…そうだな、見た感じとこれからの準備って意味も兼ねて『玄冬げんとう』と付けるか。宜しくね玄冬。」


凛は少しだけ悲しそうにしたもののすぐに笑顔となり、鞘に収めた状態の刀を左手で横にして顔の高さに持ち上げた後にそう言うのだった。

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