173話
その後も凛達は鍾乳洞を進んで行く。
その途中の通路や広い空間にてオークジェネラルを筆頭としたオーク達や、
オーガが進化したクリムゾンオーガを筆頭としたオーガ達、
アシッドやポイズン、ヒュージと言ったスライムに襲われたので凛達は討伐した。
クリムゾンオーガはオーガの進化先の1つで、銀級のオーガから金級下位のレッドオーガとなり、金級上位のクリムゾンオーガとなる。
身長はレッドオーガで220センチ程、クリムゾンオーガになると250センチ程になる。
他にも銅、銀、金、それと幾つかの宝石が採掘出来る箇所を見付ける。
しかし凛達はミゲルと梓を早く強くして休ませたい為、採掘する事無く真っ直ぐ奥へと進んで行く。
「僕、僕以外にも仲間、欲しかった…。」
「よしよし。」
因みに、ライムは仲間だと思いヒュージスライム達へと近付いてはみたものの、悉く攻撃を仕掛けられてしまう。
ライムは落ち込んでしまい、今は雫に慰められている。
やがて昼前になる頃に、凛達は鍾乳洞の1番奥にある空間へと進む。
そこは鍾乳洞の中で直径が500メートル程と最も広く、中心には空間の4分の1位の広さの地底湖があった。
そして地底湖の近くにはこの鍾乳洞の主なのか、ワーグと呼ばれる魔銀級中位の強さを持つ狼の魔物が3体寝そべっていた。
ワーグはダイアウルフが進化した魔物で、進化前と変わらず白っぽい体をしているが全長4メートル程に迄大きくなった。
凛達が湖に近付いていくとワーグ達は起き上がって唸り始める。
凛達は立ち止まって様子を見るが、ワーグ達は低く構えた後に敵意を持って向かって来た為迎撃する事にした。
「止めはミゲルさんと梓に刺して貰うとして、誰か行きたい人いる?」
「あ、それなら私が行くわ。樹、柊も良いかしら?」
「「分かりました。」」
凛が尋ねると棗がすっと右手を顔の横に上げて立候補し、樹と柊も加わる事になった。
棗達は左から樹、棗、柊の順番で少し距離を置き、並んで凛達の前に立つ。
ワーグ達はそのまま真っ直ぐ走り、棗達から10メートル程前迄来た所で棗達を噛み付こうとそれぞれ口を大きく開ける。
「「「甘いわね(ですね)。」」」
崩土の腕輪を着けた棗達はそう言って、棗は棘の付いた蔓でワーグを上からピシャァッと打ち付け、樹と柊の2人はそれぞれワーグの顔の右或いは左にミドルキックで3方向へと吹き飛ばした。
棗達が仲間に加わった翌日から訓練に参加する様になり、訓練が始まって直ぐに棗が蔓と魔法で戦う事が決まる。
樹と柊の2人は、出来るだけ手ぶらが良くて武器を持ちたくないとの事で、素手を用いた戦い方を学びたいと言ってきた。
2人は藍火の様に一撃一撃が重い火力重視ではなく、魔物にしては軽いのに硬い体を生かした速度と技巧重視の戦い方をする様だ。
凛は2人が同じ戦い方をする事に大変喜び、(美羽がやきもちを妬くが)嬉々として2人に素手での戦い方を教えていった。
「凛様。多少ですが、私は護身術の心得があります。宜しければ私にも素手での戦い方を教えては貰えないでしょうか?」
「あ、ダニエルさん。勿論良いですよ。樹、柊ごめん、続きはまた今度ね。」
「「分かりました。」」
「それじゃ、ダニエルさんの動きを見てみますね。僕は受けるか避けるかしますので、好きに攻撃して来て下さい。」
「分かりました、宜しくお願いします。」
樹達が素手での動きに少し慣れ始めた所で、ダニエルが凛に近付きながら声を掛ける。
凛達はそう言った後、凛とダニエルの手合わせが始まった。
手合わせをしながら話を聞いた所、ダニエルは王都にいた時に鉄級冒険者位の実力ではあるが護身術を学んでいたそうだ。
「…どうやらダニエルさんは蹴りを主体とする戦い方の様ですね。でしたら、攻撃の補助や防御に使えるこちらをお渡しします。」
「凛様、こちらは一体?」
「これはトンファーと呼ばれる物です。使い方はですね…。」
凛は5分程ダニエルの攻撃を捌き続け、そう言って無限収納から練習用のトンファーを取り出す。
トンファーの事を知らないダニエルは凛に尋ね、凛はトンファーについて説明を行う。
説明を聞いたダニエルはトンファーの事を気に入り、凛から量産品のトンファーと加護を貰う。
そして今は銅級上位の強さに迄成長している。
棗は真っ直ぐよりもやや斜め下に打ち付けた為そこまで吹き飛ばなかったが、樹と柊に蹴り飛ばされた2体はドゴォッと音を立てて壁に激突する。
棗に吹き飛ばされたワーグは血が出ているものの頭に傷が付いた程度だが、残りの2体は良いのを貰ったらしくふらふらとしていた。
それから棗達は2分程ワーグ達の相手を続け、ワーグ達の攻撃を避けてはカウンターを与えると言った攻撃を行っていた。
そしてワーグ達が大分弱った所でミゲル達と代わり、樹と柊が弱らせた相手をミゲルと梓がそれぞれ倒す。
その後棗が弱らせたワーグを梓が相手をして止めを刺した。
今回の戦闘でミゲルが魔銀級下位となり、梓が森林龍へと進化出来る様になる。
凛は直ぐに来れる様に湖の近くにポータル付きの小屋を建て、皆で屋敷へと帰るのだった。