166話
一方、凛達を除いた戦闘組は火燐と紅葉をそれぞれ隊長として行動していた。
火燐、雫、翡翠、エルマ、イルマ、ミゲル達とライムの11人と1体は、ミゲル達がどの位の強さかを見る為に領地から50キロ程東へとやって来た。
火燐は森の散策を開始し、サーチを展開すると直ぐ近くにオークの群れを見付ける。
そのオークの群れはオークジェネラルが1体、普通のオークが11体だった。
オーク達はこちらの存在に気付いて向かって来た。
火燐はミゲル達にどうするかを尋ねると、ミゲル達は武器を構えて迎撃の構えを取った為、火燐はそのままミゲル達にオーク達の相手をさせる事にした。
ミゲル達とオークとの戦闘の途中、それ迄群れの奥にいて動かなかったオークジェネラルが動き出しミゲル達を抜けて火燐へと向かって行った。
「邪魔。」
しかし火燐はオークジェネラルの斧を使った攻撃を半歩ずれて避けた後、そう言ってデコピンでオークジェネラルの頭を吹き飛ばす。
その様子を見たミゲル達は顔を青ざめ、オーク達はああはなりたくないと思ったのか一目散に逃げて行った。
「…逃がさない。」
しかしカドゥケウスを構えた雫が既にアイスニードルを6つ展開しており、カドゥケウスを前に突き出してアイスニードルを飛ばす。
そして瞬く間にオーク達の頭を吹き飛ばしていった。
火燐によって群れの代表であるオークジェネラルが即ピ○ュンされただけではなく、3分程でミゲル達全員で5体のオークを倒したのに対し、雫1人で瞬く間に6体のオークを○チュンされてしまった。
ミゲル達はその事で自分達が全然活躍出来なかったと凹んでしまった為、その後暫く翡翠とエルマとイルマが彼女らを励まし続けた。
5分程でどうにかミゲル達を立ち直らせ、今の戦闘だけではミゲル達の強さを判断するのは難しいと言う事になった。
「おー、流石森を抜けて攻めてくるだけあって強いんだな。これならもう少し行けそうか?」
「私達も一応はエリートだからな。とは言え、さっき火燐様がやったみたいに指先一つで魔物を倒せるなんて真似は出来そうにないが…。」
「そうかぁ?俺以外にも出来るやつ結構いると思うぜ。」
「ん。」
「けど、やりたいかって言われたら正直やりたくないけどね!」
「あたし達はオークにはあまり良くないイメージがあるから、オークの近くに行く事自体ちょっと…。」
「お肉は美味しいんだけどね…。」
「(誰も出来ないとは言わないんだな…。)」
続けて割と近くにいたバトルマンティスの群れの相手をミゲル達にして貰い、討伐が終わった所で火燐がそう声を掛けた。
ミゲルは最初こそ少しどや顔だったものの、先程のデコピンでもしかしたら自分達も先程のオークの様な死に方をしていたかも知れないと思った様だ。
ブルっと身を震わせてそう言うと、火燐は首を傾げながらそう言った後に雫、翡翠、エルマ、イルマがそれぞれそう言った。
ミゲルはそんな火燐達を内心そう思いながら複雑な表情で見ていた。
ミゲル達は夜になったら、今もサルーンに残っている4人の暗殺者の迎えに行かなければならない。
その為、火燐達は午前中だけ森の散策を行って午後は屋敷へと戻ってゆっくりしたり凛の手伝いをしたりしてそれぞれ過ごした。
紅葉達は中層中部へと向かい、ステラ達の底上げを行っていた。
メンバーは紅葉、暁、旭、月夜、小夜、クロエ、藍火、リーリア、渚、猛、キュレア、リナリー、ステラ、ルルの14人だ。
ステラ達は相手の魔物が銀級の集団や金級単体ならステラ達4人で戦って貰い、相手が金級以上の集団なら他の者達に手伝って貰い討伐と言う事になった。
とは言えメンバーの大体が神輝金級の為、危険が少ない事もあってか終始和やかな雰囲気だった。
「琥珀ちゃん達が来なかったのは残念だけど、考えてみると今いるメンバーだけでも物凄い豪華だよねー。」
「そうですね。琥珀様達は領地にいる間は凛様の傍にいようとなさっておいでですし。私が鬼子母神で暁達が鬼神、クロエが不死の女王、藍火様が蒼炎神龍、渚様が水神龍、リーリア様がエンシェントエルフ、猛様がベヒーモスキングですからね。あ、後ルル様がエルダードワーフでしたね。」
先頭を歩いているステラと紅葉がそれぞれそう言った。
後ろでは暁と旭と猛、月夜と小夜とキュレアとリナリー、藍火と渚とルルがそれぞれ固まって話をしていた。
「そう言えばクロエ、貴女のスキルの検証はどうでした?」
「んー、ダメだった…。死体を配下には出来るんだけど、流石にそのまま魔素を与えただけでは進化しないみたい。そもそも、配下にした死体が進化出来るのかがまだ分かってないから何とも言えないかなぁ。」
紅葉は自身の直ぐ右後ろにいるクロエに話し掛けると、クロエは難しい表情で答える。
「先程検証を始めたばかりですし、焦らずに参りましょうか。ムッシュだけでは無く、これからはこの子も仲間なのですから。」
「うん、分かったよ紅葉様!スパさんもこれから宜しく!」
「(カタカタ)」
紅葉はにこりと笑い、今もクロエの右横を歩いている少しくすんだ赤い色のスパルトイを見て優しくそう言うと、クロエは元気良く答える。
続けてクロエはスパさん(スパルトイは何故かスパさんと呼ばれる様になったらしい)にそう話し掛けると、スパさんはカタカタと体を揺らしながら頷いた。
その後ステラ達の底上げを行いつつスパさんにも戦って貰うと、暫くしてスパさんがアークスパルトイに進化しそうな事が分かった。
クロエはスパさんを無限収納へと直し、無限収納内でスパさんにだけ時間が経過する様に調整する。
「それではそろそろ夕方ですし、皆さん帰りましょうか。」
そろそろ午後5時になろうとしていた為、紅葉は皆へ向けてそう言うとそれぞれ返事が帰って来る。
この日はステラとルルが金級中位、キュレアとリナリーが銀級上位に迄成長させる事が出来たのだった。