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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
辺境都市サルーンを取り巻く者達編
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156話

凛はホズミ商会に入った者達へ暇を見付けては自身が向かったり、美羽達に頼んでアドバイスを送ったり料理教室の様な物を開いたりしていた。

そしてパン屋へはホズミ商会に加わった翌日にイースト菌を渡し、それ以降凛がたまに時間を見付けては訪れて指導をしていた。

パン屋はホズミ商会加入当初は硬い丸パンしか無かったが、試行錯誤を重ねて今は柔らかい食パンやホテル食パン、色んな種類のマーブルパン、それと幾つかの菓子パンや惣菜パン、サンドイッチが店内に並ぶ様になった。




凛はしばらく死滅の森を中心に行っていた為、数日の間パン屋を訪れる事が出来なかった。


午前10時頃に凛はウタル達へ一通り指示を伝え終えた事で少し余裕が出来、美羽と2人でポータルで移動し、サルーンの中心部辺りにあるパン屋の後ろの勝手口から店内へと入る。


「(ガチャッ)こんにちはー…ってダリオさん。少し見ない間に更に痩せましたね…。」


「ダリオさん大丈夫?」


「ははは…。最近忙しくてね…。まだ動けるから多分大丈夫だと思うんだけどね。」


「忙しいにしても限度がありますよ。ちゃんと休めてないんじゃないですか?」


「そうだよ!ちゃんと休まないとダメだよ?」


「いやぁ…ははは…。まぁ店内を見れば分かるよ。」


そこで久しぶりにパン屋の店主…ダリオに会ったのだが、まだふくよかだった体型が少し見ない間にすっかり痩せ型へと変わってしまった。

凛と美羽の2人は今のダリオの姿を見て言葉に詰まる。


凛と美羽はダリオと軽く話し、ダリオにそう言われたので2人で店内を覗いてみる。

すると一般的なコンビニ位の大きさの店内に十数人の女性が並んでいる様だった。




「あー、何だかパンが焼き上がるのを待つ行列に見える様な…。」


「あれって…皆、お客さん?」


「そうなんだよ。パンの中でも食パンとホテル食パンが圧倒的に人気でさ、客はそれが焼き上がるのを待っているんだ。」


その後凛は作業場へと戻り、すっかり元気をなくしたダリオと話を続ける。

ダリオによると今までの固いパンではなく、柔らかいパンと言う目新しさもあってか、パンを焼いて出しても直ぐに売り切れてしまう状態との事。

ダリオはホズミ商会発足時に名乗りを上げた時はそれなりに太っていたのだが、今は焼いたり仕込みや準備であまり休めずに痩せる一方なのだそうだ。




「…ふう。屋敷にあるパン用のオーブンも使ってどうにか捌ける様になりましたね。」


「本当に助かった。まさか日を追う毎に客が増え、パンを焼いても焼いても追い付かなくなる様になるなんて予想すらしていなかったよ…。」


「酵母を使った柔らかいパンと言うのは(この世界では)珍しいでしょうからね。それに会計後に紙の袋に入れてお客さんに渡すから、ちょっとしたお土産にもなるでしょうし。これを店主1人で切り盛りするのは大変ですよ。パンを焼くオーブンを今よりも増やして、今このお店に来て貰ってる応援の2人を商会からの派遣と言う形で働いて貰いましょうか?」


「お願いします…!」


「分かりました、ポータルはこのまま残して2人にはその様に伝えておきますね。それと彼女達はこう見えてドラゴンなんですよ。ダリオさん、間違っても手を出したりしないで下さいね?」


「ドラゴン…!私も命が惜しいし、極力2人に触れない様にするよ!」


凛はダリオに断りを入れて作業場の一角にポータルを設置する。

凛はそれから2時間近く、屋敷に戻ってから屋敷組と一緒にパンを焼いてはパン屋に戻って店内に並べるを繰り返した。

その際に少し前から屋敷組となった、元シーサーペントで今は水竜アクアドラゴン氷龍アイスドラゴンとなった水色と青色の髪をした2人の女性に売り子として美羽と共に手伝って貰う事に。

応援の2人は一通り料理が行う事が出来、共に明るい性格をしている為客の受けも良いようだ。


凛はダリオと話し合い、オーブンの拡張と元シーサーペントの2人を商会(厳密に言えば屋敷)から派遣する事になった。

ダリオは凛へ感謝し、そう言いながらペコペコと頭を下げる。


そしてこの2人だが、1人は水竜でもう1人だけはシーサーペントから中々進化しないと仲間内で思っていたのだが、つい最近になって上位龍(アークドラゴン)の氷龍へと進化した様だ。

進化の際に髪色も水色から青へと変わり、今は2人共金級中位(アーサーは洪水龍に進化する少し手前)の強さとなっている。


凛は2人に説明して了承を得る。

そしてこれからは名前がないと不便と思った凛は後で2人に名前を与える事を決め、パン屋を後にする。




「こんにちはー。」


「おや凛様。今日はどうしたんだい?」


「しばらく屋敷と森を往復しててこちらに来れませんでしたからね、商会に入って下さった方々の様子を見に来たんですよ。つい先程までダリオさんの所のお手伝いをしましたが、凄く忙しそうにしてたので…。サンドラさんの所は大丈夫そうですね。」


「ダリオさんの所は1人で経営してるからねぇ…。うちは旦那と娘2人が手伝ってくれるから心配ないよ!」


続けて凛は宿屋へと赴いた。

そこで恰幅かっぷくの良いおばちゃんの様な見た目で、以前ライアンを吹き飛ばした事もある宿屋の女将のサンドラと話をする。


サンドラの所を含むホズミ商会会員の宿屋では簡単なスープやハンバーグ、鮭のムニエル、カレーやシチュー等の調理にあまり手が掛からない料理が食事として出る様になった。

そのおかげで会員の宿屋は常に部屋が一杯となる。

宿の食堂では食事も出来る為、喫茶店の時間外(又は行列に並ぶのが嫌で宿で済ませる人も)だったり、部屋が取れなかった人がせめて食事でもと思ったのか宿の食堂で食事を摂る人が結構いる様だ。




その後も凛はしばらくサンドラと話をして宿屋を後にし、美羽と共に商会会員の元を訪ねて行く。


そして夕食後に水竜と氷龍の2人を私室に呼び、時雨しぐれ(みぞれ)と名付けてその日を終えるのだった。

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