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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
辺境都市サルーンを取り巻く者達編
156/594

152話

「あの俺…いえ、私は銅級冒険者パーティー『虎狼ころうの牙』のリーダー、ルーカスと言います。以前私達がいたエクトルと言う街で、サルーンに美味しい物や珍しい物が沢山あると言う噂を耳にしました。その事に興味を持った私達はエクトルの街を出て3日前にサルーンに着き、今は宿を借りて生活しています。私達はサルーンの事が気に入ったので腰をえたいと思い、手っ取り早く稼ごうとして死滅の森へ挑んだのですが…。」


「その先にいたのが僕達だった、と言う訳なんだね。」


「はい…。まさかこんな所でサルーンのギルドマスターと長にお会いするとは夢にも思いませんでした。」


ゴーガン達が宥めたものの、ルーカス達は正座の姿勢を崩さなかった。

ルーカスは少しびくびくとした様子でそう説明し、ゴーガンが補足する。


エクトルと言うのはサルーンから西北西、ソアラから南に位置する小さな街の事だ。

周囲も含めて長閑のどかな風景となっているのだが、王都から商業国家ミョルソドへと向かう途中にあるので街を通る人や宿泊施設が少し多い街となっている。




「それであの…、お2人はどうしてこの様な場所に?」


「いやなに、今の時間はここの領地にいる人達と手合わせをして貰っているんだ。長ともなれば片付ける仕事も多くてな、書類仕事ばかりでは息が詰まってしまうんだよ。それで凛殿に頼んで、息抜きと鍛練を兼ねてここへお邪魔させて頂いているのだ。出て来るご飯も毎回楽しみだしな。」


「「「「凛殿?」」」」


「あ、僕の事です。一応ここの代表をやらせて頂いてます。」


「ボクは副代表の美羽と言いまーす♪」


「「「「…え?」」」」


ルーカスは正座したままガイウスとゴーガンへと尋ねた。

ガイウスが説明するとルーカス達はサルーンに来て日が浅いからか、凛の事を知らなかった為疑問に思い口に出してしまう。

凛はそう言って軽く頭を下げ、美羽ははーい!と右手を挙げながらそう言った。

ルーカス達はまさかこの超美少女2人が、この死滅の森を拓いた変わり者の代表と副代表とは思わなかった様で絶句していた。




「疑問に思うだろうが本当の事だ。ついでに言わせて貰えば凛殿は男で、2人共私よりも全然…それこそ人間族で最も強いと私は思っている。」


「同感だね。僕達ここで鍛練を続けてはいるけど、凛君達に近付くどころか反対に遠ざかる一方だからね。藍火君も知り合った最初の頃は銀級のワイバーンだったのに、気が付けば僕達を軽く抜いて今度神輝金級になるんだったっけ。」


「最初の頃はよくつまずいて転んだりしていたのにな。頭は悪いが、あいつはあいつで努力した結果なのだろうよ。」


「そうだね。」


その後、ガイウスとゴーガンが笑いながら説明を加えたり談笑を始める。

ルーカス達の…特にパーティーメンバーで弓使いであるカインは凛に一目惚れしたものの男性と知り勝手に玉砕され、男…あんなに可愛いのに男…とぶつぶつ呟いて全く聞いて無かった。

イライザも神輝金級…嘘でしょ、等と呟いている。

ルーカスと僧侶であるサイラスもそれなりに衝撃だった為、話をきちんと聞いているか怪しい所だ。


後、気無げなく藍火がけなされていた。




「む、凛殿。悪いのだが凛殿の屋敷の前迄のポータルを用意しては貰えないだろうか?思ったよりも少し時間が経ってしまった様だ、急いでシャワーを済ませて職務へと向かいたい。」


「あ、はい分かりました。…それでは行ってらっしゃい。」


「済まないな。ではまた。」


「凛君、ありがとう。」


「「「「(今のは何!?)」」」」


それから10分程経った事に気が付いたガイウスは、急いで汗を流して職務を始めたいと思い凛へそう伝える。

凛はそう言って屋敷の入口の前に繋がる使い捨てのポータルを設置した。

門が開くと2人は軽く手を挙げてそう言い、凛と美羽は軽く手を振って見送る。

ルーカス達は目の前に変わった門の様な物が現れたと思ったらガイウス達と共に消えてしまった事で、頭が付いていけず揃って混乱していた。




「えっと、それじゃルーカスさん達はどうしましょうか?僕達の事をルーカスさん達に教えても良いのですが、これからもここへと来るかも知れない他の冒険者の方達へ、僕達の事を毎回教えていける程の余裕は僕達にないですし…。それに、作物の事を考えるとあまり領地に人が入って欲しくないと思ってますからね…。」


「はっ!?ええっと…、作物と言うのは例えばその木になっている実の事でしょうか?」


「そうですね。あっ、あれが食べ頃かな?…この桃を食べて頂ければ、恐らく僕の言いたい事が分かると思います。当然ですが毒等は入ってませんのでご安心を。」


凛がルーカスに尋ねると、彼はようやく我に返った様だ。

何気に桃の事を諦めていなかったルーカスは凛へそう尋ねると、凛は木になっている中から1番熟れてそうな実を見付け、風の魔法で実だけが取れる様に枝を切って実を落とした。

凛は桃の実をキャッチし、そう言いながらルーカスへと渡す。


「この桃…私が知っている物とは全然大きさが違うのですが…失礼します。っ!? 滅茶苦茶美味(うめ)ぇーー!!」


ルーカスは恐る恐る凛から桃を受け取り、桃をまじまじと見ながらそう言った後に食べ始める。

そして辺り一帯に目を見開いたルーカスの叫び声が響くのだった。

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