146話
その後訓練を終える頃には流達はアーサー達と仲良くなった様だ。
同じ水棲に生きる者同士で波長が合ったのかも知れない。
流達は訓練後、領地内にある湖へと向かい、アーサー達と一緒に泳ぐ様になった。
凛達は戦闘組とは別に翠と金花、銀花を連れて少し東寄りの中層中部へとやって来た。
今回ステラ達は昨日の湖から少し東に進んだ所からスタートし、サポートとして雫と翡翠に付いて貰う事に。
昨日は美羽がステラ達のサポートをしていたのだが、凛と連日離れるのは寂しいらしく断られてしまった為、凛は雫と翡翠に頼む事にした。
美羽は昨日と違い、今日は凛と一緒に行動出来る為かにこにことしながら凛の横を歩いている。
「凛君のおかげで私達も今の姿になって成長する事が出来たわ。後もう少し魔素を集めたら進化出来ると思うの。そうしたら分身体である私の木も成長して、更に作物に対して良い影響を与えてくれる筈よ。」
「「私達もお花なら任せて!」」
移動中翠はにこにこと笑いながらそう言い、金花と銀花はそれぞれ両手を前にぐっとやりながら気合い充分と言った表情でそう言った。
翠はハイ・ドライアドへと進化して直ぐに以前自分がいた所に魔素の半分を使い、自身の分身体となる木を植えた。
その後植えた木に魔力を注いで木の根を介して周囲の土を元気にし、作物を更に美味しくさせた事で領地に済む人々を喜ばせるのだが、翠としてはそれではまだ不充分だった様だ。
翠達は凛から定期的に魔素を渡されていた。
翠は強さで言えば魔銀級、金花、銀花の2人は金級となっていた。
昨日の夕食後に翠がもう少ししたら進化出来るので、進化して更に皆に喜んで貰いたいからと言って今日の散策に参加したい事を申し出る。
マンドラゴラとなった金花と銀花は翠に懐いているのと、置いてきぼりになりたくなかったのか一緒に付いて来る事になった。
翠は土魔法を、金花達は相手近くの地面から棘の付いた鞭状の蔦を生やし、それを用いた攻撃を主体に戦う様だ。
先程も金花達が複数のサイクロプスの四肢に蔦を絡ませ、身動きが取れなくなった所を翠が土系上級魔法ロックストライクを発動して次々に倒していた所だ。
その後も金級、魔銀級の魔物が出て来ては襲って来るので、凛達がサポートしつつ翠達を中心にして倒して行く。
それと、散策を開始して少しした所で翠達に呼応してやって来たのか、エルダートレントが2体とラフレシアが付いて来る事になった。
ラフレシアはマンドラゴラの亜種で、金級中位の強さを持つ魔物だ。
全長1メートル程の花の下に草の様な根の様な物が生え、それを人間で言う手足の様に動かして移動したりしている。
ラフレシアは少し変わった見た目だからか、翠達は平気でラフレシアへと近付いて話をしている様だが、凛達は反対に少し引いていた為かラフレシアから遠ざかってしまう。
ラフレシアは凛達の様子を見て凄く落ち込んでしまったのか、見るからにしょんぼりとしていた。
「ごめんね。君の見た目に驚いて引いてしまっていたよ。君がここにいると言う事は、僕達と一緒に来てくれるって事だもんね。君達も、来てくれてありがとう。」
「ボクもだよ。遠ざかってしまってごめんね…。」
凛はラフレシアを落ち込ませてしまったと反省し、申し訳無さそうにしてラフレシアの隣へと向かう。
ラフレシアは花の部分から甘い様な臭い様な独特な香りを周囲に放っていたが、凛は呼吸が不要な為か平気だった。
凛は人間で言う背中辺りの部分のラフレシアの草の様な所を撫で、ラフレシアとエルダートレント達を見ながらそう言う。
美羽も凛がそう言った事ではっとなり、同じく申し訳無さそうにして凛とは反対のラフレシアの背中らしき場所を撫でる。
美羽も呼吸が不要な為臭いは大丈夫の様だ。
暁達やエルマ達も凛の言葉を聞いて反省し、考えを改めて歓迎しようと思う様になったものの、暁達は呼吸が必要な為か少し気分を悪そうにして近付けないでいた。
凛、美羽、翠、金花、銀花の5人でラフレシアを暫く宥め、漸くある程度機嫌が良くなった所で散策を再開した。
その後昼食時に、凛は翠と金花達を介してエルダートレント達とラフレシアに、人化スキルを施して話せる様にするかを尋ねると2つ返事で了承された。
凛は午後3時のおやつの時間になる頃に合わせて人化スキルを行う様にとナビへ頼む。
昼食後も散策を続け、おやつの時間になる頃には既に翠と金花達が進化出来る様になっていた。
「…ん?あ、話せる様になったのね。…と言うか貴方達!私を避けるとか酷くない!?私、すっごく悲しかったんだからね!!」
おやつの時間になろうとした所で3体の体が光る。
やがて光が収まった所で肩までの長さの髪型だが上半分が赤色、下半分が緑色の髪色をした少女が声が出る事が分かり、今の状態を確認しようとして自分の体を見回す。
そして直ぐに先程の事を思い出したのか全裸のまま腰に手を当てて凛達の方を向き、涙を溜めながらそう叫ぶのだった。