14話
すみません、最初以外の修正はまた今度に致しますね。
30分後
凛は生活部屋へ向かった後に数日間何も食べていないゴブリン達用にと思い、2種類のスープを作っていた。
その凛が用意したスープとは、南瓜やとうもろこし等の野菜をミキサーにかけた物に牛乳を足したポタージュ状の物や、玉葱や人参等を微塵切りにして柔らかくなるまで煮た後にコンソメで味付けした物となっている。
そして生活部屋へ向かった凛が戻って来ると、おろおろしてる美羽と呆然としてる火燐達、土下座をしてる5体のゴブリンがいた。
「ただいまー…って、何だこれ…。えっと、僕がいない間に何があったの?」
「あっ、マスター!お帰りなさい。あのね、ゴブリンさん達が配下にしてくれなきゃ動かないって言って、さっきからずっとこのままの状態なの…。」
しかし凛は突っ込み所満載な皆の様子を見て、何て言ったら良いか分からないと思い、ひとまずそう尋ねる事にした。
美羽は凛の存在に気付いて凛の元へと駆け寄り、困った様子でそう言った後に凛へ説明をし始める。
美羽の説明は今回ゴブリンキング達から被害に遭ったゴブリン達に関する事なのだが、彼らは狩猟や略奪や暴行と言った行為を行わない珍しい種族で、農耕や集落の周りにある自然の恵みを採集する事で生計を立てると言う大人しい性格の者が多かった。
そしてこの集落は他とは違い、何故か雄が2体いたら雌が1体はいると言う割合で存在していた為、集落内での繁殖が可能と言う事もあって、これまではのんびりとした生活を送って来た。
そんな中、集落に『姫』と呼ばれる珍しい存在が生まれた。
最近になってたまたま(先程のゴブリンキングとの戦闘の際にちょこまかと逃げて火燐を苛立たせていた)グレーターゴブリンが何気なく外から集落の様子を見ていたのだが、何やら今までとは雰囲気が変わったと怪しんだ事がきっかけで姫の情報がゴブリンキングの耳に入る。
ゴブリンキングは姫を自分の側に置く事で、所属しているオーガの群れの中での地位を上げようとしたのか、半ば強引に姫を集落から連れて行ってしまう。
そしてゴブリンキングは姫さえ自分の住み処へと連れて行けば、集落のゴブリン達は用済みだと判断した様だ。
姫ゴブリンを住み処にある檻の付いた部屋に閉じ込めた後、姫以外のゴブリン達は邪魔だからと言う理由で集落を攻める事を決める。
やがて集落のゴブリン達は武器を構えてこちらへ攻めて来ようとするゴブリンキング達に気付き、(姫の父親で)集落の代表が自分達は非力な為見逃して欲しいと頼むのだが、ゴブリンキングはこれを鼻で笑った後に持っている武器で代表を斬り伏せた。
その様子を見た集落のゴブリン達は、言葉ではなく刃を返された為に代表が倒された事を見て絶句したものの、それでも皆を守る為にとゴブリンキングへ向けて攻撃を止めて欲しい事を伝える。
しかしゴブリンキングは部下達へ集落を攻める様に伝えた後に自身も斬り込むだけで、ゴブリン達の話を全く聞こうとはしなかった。
その為側近のホブゴブリンや部下のゴブリンを含む大人や兵達は、仲間が斬られては倒れて行くと言う様子を見ている事しか出来ないでいた。
その後、集落のゴブリン達はゴブリンキングに助けを求めても殺されるだけだと判断したのか、集落から散り散りに逃げる事にした様だ。
側近のゴブリンは仲間達を逃がそうとして動き回った際に、崩れた建物に押し潰された事で身動きが取れなくなってしまう。
ホブゴブリンは脱出しようとしてもがいてる様子をゴブリンキングに見られるのだが、ゴブリンキングは必死に建物を出ようとするものの全く出れそうに無いホブゴブリンに興味を失ったのか、鼻で笑った後にその場から離れて行った。
部下のゴブリンは仲間を逃がしている間に何体も殺されるのを見て怖くなったのかその場から逃げ出し、集落内にある家の地下部分に隠れてゴブリンキング達をやり過ごす。
しかしゴブリンキング達が暴れた事で家の地上部分が壊されてしまい、建物から出れなくなって閉じ込められてしまう。
ゴブリンの姉妹は両親からここに隠れていなさいと言われた事で自宅の地下部分に隠れるのだが、新米のゴブリンと同様に閉じ込められてしまった様だ。
集落のゴブリンは以前は100体以上いたのだが、結果的に生き残ったのは4体だけとなってしまい、外に逃げた仲間達も戦闘慣れしていない為か無事で済んだ者はいなかった。(後で確認したが、亡骸ばかりで生きている者はいなかった)
その後、姫と目を覚ました4体とで話し合い、2度とこのような理不尽な事で同胞を傷付けられてなるものかと言う結論に至り、戦う事を決めたそうだ。
しかしそう決意をしたものの、側近のホブゴブリン以外は今までにほとんど戦闘をした事が無かった。
その為お互いがお互いをカバー出来ず、すぐにやられてしまうのではないかと言う事になり、ゴブリンキング達を簡単に殲滅した凛達に助けを求めたとの事。
以上の事を美羽が凛に説明していたのだが、その間姫ゴブリンや(普通のゴブリンよりも少し大きい、身長が150センチ位で姫の側近と言う役職に就いている)ホブゴブリンや、側近の部下で新米のゴブリン、それと一般的な家庭に生まれた雌のゴブリンの姉妹の5体が、正座したまま凛達の事をじっと見ていた。
「(成程…。手を貸すのは僕は勿論構わないんだけど、与えられた力に溺れないって事を約束出来る?)」
「(それは…どう言った意味でございましょうか?)」
「(貴方達を見てると復讐…とまでは行かないんだろうけど、ただ仲間を守りたいって言う風には見えなかったんだ。特に…貴方の隣にいるホブゴブリンさんが危なっかしい感じがするんだよね。)」
「(左様でございましたか…。)」
美羽は凛に一通り説明を終えた後、凛から一旦離れて火燐達の所へと向かう。
ゴブリン達はまだ土下座している状態だった為、凛はひとまず頭を起こして貰った。
そして話をするのは用意したスープを飲んでからと伝え、まずは持って来たスープをゴブリン達へ飲ませる事に。
姫を含めたゴブリン達は(凛からスープを渡された際に言われた通り)スープを味わいながらゆっくりと飲むのだが、その様子を火燐達4人は生唾を飲む等して羨ましそうに見ていた。
やがて凛がゴブリン達がスープ飲み終えたのを確認した後、姫と呼ばれるゴブリンにそう尋ねる。
姫ゴブリンは凛の言葉の意味が分からないと言いたそうな表情で答える。
凛はゴブリン達の目を見た後にホブゴブリンの目をじっと見て、将来何らかの形で負の感情が抑えられずに暴走するのでは、と感じた様だ。
(ホブゴブリンは凛にじっと見られていた事を不思議に思っていたが)凛が姫ゴブリンにそう念話で伝えると、姫ゴブリンは返事をした後に隣のホブゴブリンへ説明を行う。
ホブゴブリンは姫ゴブリンから説明を受けた後に正座のままで俯き、両手の拳をぐっと握り締めていた。
そして5秒程経って頭を上げ、姫ゴブリンへ話をし始める。
「(申し訳ありません。仲間が殺されるのを目の当たりにした事で、ゴブリンキング様達に対して憎い等の負の感情が出てしまっていたそうです。これからは考えを改めるので、仲間を守る為に尽力させては頂けないでしょうか、と申しております。)」
「(…分かった、貴方の言葉を信じよう。…そう言えばなんだけど、貴方達は何て呼べば良いのかな?名前とかある?)」
「(いえ…、私達に名前はございません。私の姫やこちらの側近の様に、役職名で呼ばれる事がほとんどでございます。それに、今までは名前が無くても不便と言った事は特にございませんでしたし…。)」
「(名前がないと呼ぶのがなぁ…ゴブリンさんって呼んで5体同時に振り向かれでもしたら、僕だけじゃなく美羽達も困ると思うんだよね。)(…そうなんだ。良ければなんだけど、僕がひとまず貴方達の名前を考えても良いかな?)」
「(…宜しいのでしょうか?)」
「(? 勿論だよ。今から考えるから少し待っててね…。)」
「(畏まりました…!)」
凛は姫と呼ばれるゴブリンから申し訳無さそうな表情で説明を受けた後、改めてホブゴブリンを見ると先程までの暗い瞳とは違い、やる気のある真っ直ぐな目をしていた。
凛は3秒程目を閉じて姫ゴブリンにそう言った後、そう言えば名前を聞いていなかったと思ったのか念話で尋ねる。
姫ゴブリンが困った表情で答えると、凛はペットに名前を付ける様な感覚だと思いながら念話でそう言い、姫ゴブリンはそう答えながら驚いた様子で両手を口の前に持っていった。
凛は姫ゴブリンが驚いた事を疑問に思いながらも念話でそう答えた後に考え始め、姫ゴブリンは嬉しそうに答える。
1分後
「…よし、決めた。ホブゴブリンさんは『暁』って名前にするよ。これは夜明けって意味でもあるんだけど、仲間を守るという願いを実現させて欲しいって意味も込めて付けさせて貰うね。もう1体のゴブリンさんは同じ位の時間でって事で『旭』。ゴブリンのお姉さんは雌だし、太陽の反対の月って事で『月夜』、妹さんは『小夜』かな。そして姫ゴブリンさんは進化したら鬼姫とかになるのかなって思ったから、僕の世界に昔いたとされる鬼女で『紅葉』って名前を考えた…ん……。」
『………。(ばたっ)』
「マスターっ!!」
「凛っ!」
「凛…!」
「凛くん!」
「凛君…!」
「「凛さん!」」
「…大丈夫。」
凛は念話ではなく口頭でゴブリン達を暁、旭、月夜、小夜と名付けた後、姫ゴブリン改め紅葉の名付けをした直後から力が一気に抜けた様だ。
凛は言い終える事が出来ず、途中で少し苦しそうな表情で右膝を地面に突いた。
その直後、紅葉、暁、旭、月夜、小夜の5体は気を失ったのか、正座した状態から前や横や後ろの方向へと倒れてしまう。
美羽達はいきなり凛が辛そうに片膝を突いた事で心配になり、急いで凛の元へ駆け寄ろうとする。
それを凛は右膝を突きながら右手を上げ、苦しそうな表情のままそう言って美羽達を制した。
「…ナビ。魔物に名前を付けると、何か変化が起きたりするのかな?」
《はい。まず、魔物に名付けを行うとその場で主従関係が構築されます。そして名付けた側と名付けられた側の間に、私達の物とは異なりますがリンクが発生致します。その後、従者にはその証として主から魔素を分け与えられるのですが、分け与える魔素の量は名付けを行った時点での主側の魔素量、及び従者側の潜在能力に応じて異なります。》
「つまり…今回のは潜在能力が高い誰か(恐らくは紅葉だろうけど)がいたから与えた魔素の量が多くなったって事?」
《はい。この様な事があろうかと、予め無限収納に入れておいた(回復した事で余った)魔素を使用致しました。ですが、私が想定していたよりも流れ込む魔素の量が多かった為、マスターの倦怠感へと繋がってしまいました。申し訳ありません。》
「いやいや、むしろ後で苦労するよりも今知れて良かった位だよ。ナビ、ありがとう。」
《恐悦至極。それと魔素を与えられた紅葉様達の事ですが…。》
その後凛は少し回復したのか立ち上がり、ナビと軽く話し合いを行う。
「皆ごめんね?ナビと話をして分かったんだけど、どうやら名前を付けた事で僕と紅葉達の間にリンクと言う物が生まれたんだって。それでナビがリンクを通じて僕の魔素を紅葉達へ送ろうとしたんだけど、送る量がナビの予想よりも多かったみたい。紅葉達に沢山魔素を持って行かれた影響で僕の力が抜け、紅葉達は体が与えられた魔素に適応しようとして強制的に眠っちゃったみたいなんだ。」
「えっと…?マスター、取り敢えず体は大丈夫って事で良いのかな?」
「紅葉達へ与えた魔素の消費量が多くてビックリしちゃっただけで、体自体は全然大丈夫だよ。多分だけど、リンクの幅と言うか道みたいなのが狭くて、紅葉達へ与える魔素が通りにくかったんじゃないかなって思う。それか始めての名付けだから分からないんだけど、紅葉達の方が一気に魔素を要求して来たとかね。」
「良かったー!けどマスターの体が心配だから、今日はここまでにして生活部屋で休もう?」
「んー…そうしよっか。なんだかんだで夕方近くなってきたしね。それじゃ、僕が暁を抱え…。」
「オレが運ぶ。凛はポータルの用意をしとけ。」
ナビは凛に気を利かせたのか、先程のやり取りを美羽へ聞こえない様にしていた。
凛はナビにその事を伝えられた後、美羽や火燐達の方を向いて説明を行う。
美羽は説明を受けた後に凛へそう尋ねると、凛は肩を竦めて答える。
それを聞いた美羽は説明を受けてもいまいちピンとは来ていなかったが、やはり凛の事が心配だからかそう提案した。
凛は美羽に心配させるのも悪いと思い、そう言いながら動こうとする前に火燐がそう言って素早く暁を抱える。
そして凛が紅葉達の方を向こうとする前に美羽が紅葉を、翡翠が旭を、楓が月夜を、雫が小夜の元へ既に向かっており、それぞれ抱えている状態だった。
「皆ありがとう。それじゃここにポータル出すから生活部屋へ行こうか。」
『…。(こくっ)』
「「…。(キョロキョロ)」」
「…部屋が一気に手狭になったねー。明日仮の拠点をあっちに作るとして、僕は取り敢えずこのソファーで寝るね。2つの部屋を紅葉達で使っちゃったから、残り2つの部屋を美羽、火燐、雫、翡翠、楓で1部屋、エルマとイルマで1部屋で過ごして貰って良いかな?」
『…。(こくっ)』
凛は自分に気を遣ってくれた皆に感謝の言葉を述べ、そう言って皆に頷かれた後に集落の一角に土魔法を使って小さな倉庫位の建物を建てる。
そして建物の内部にポータルを設置して皆と一緒に大部屋へ移動し、凛が先導する形で履き物の脱いで生活部屋の中へと入る。
美羽達は里香が転移魔法で空間を移動した経験があった事で急に景色が変わっても動じなかったが、エルマとイルマの2人は初めてポータルを使って空間を移動した為、少し落ち着かない様子で凛達の後ろを着いて来た。
そして生活部屋の隣に4つある6畳の部屋の内、2部屋を使って紅葉達をベッドへ寝かせた後、凛はいつも座っているソファーに座りながら美羽達にそう尋ねる。
凛は皆の了承を得た事で残り2部屋へ向かい、無限収納からベッドを追加で出す事に。
「流れで生活部屋に来ちゃったけど、今はまだ夕方5時位だから晩御飯には少し早いしな…。それじゃさ、美羽達は先にお風呂に入る?」
「あっ、ならそうさせてもらおうかな♪マスター、入浴剤使っても良い?」
「良いよー。」
「やった♪今日は何の香りにしようかなー。あっ、ボクがお風呂の準備をしてくるね!火燐ちゃん、雫ちゃん。お風呂の準備のやり方を教えるから、ボクに着いて来てー。」
「はいよー。」
「ん。」
凛が壁に掛かっている時計を見てそう言うと、美羽は嬉しそうに返事をした後に凛へ尋ねる。
凛が返事をした事で美羽は更に嬉しそうに言い、ステップしながら浴室へ向かって行った。
火燐と雫もそれぞれ返事した後、美羽の後を追う様に浴室へと向かう。
「凛さん。ここってお風呂があるんだね。あたし達の所だと個人の風呂は上級天使からしか持てないから、中級から下は大衆浴場でしか風呂に入れないんだ。イルマちゃん達悪魔族はそもそもが入りたがらないからか、お風呂そのものが珍しいんだよね?」
「うん。男性はまず入らないし、女性はたまに水浴びする位だからね。お風呂を知らない人が割といるかも。」
「そうなんだ?僕お風呂が好きだからさ、色々用意してるんだよ。エルマ達も浴室にある物を自由に使って貰って良いからね。僕は今から晩御飯に備えて人数分の椅子とか用意しとくから、2人も先に美羽達と一緒に入っておいでよ。」
「それはありがたいんだけど…凛さんは美羽さん達と一緒に入らないの?」
「入れないんだよ。僕、男だし。」
「…………………え?」
「だからー、僕はこう見えて男でー、一緒に入れないんだー。」
「「えーーーーーーっ!!」」
エルマはお風呂に関心をもったのか、凛の向かいのソファーに座ってからそう言った後、遅れてエルマの横に座ったイルマへ尋ねる。
イルマが頷いてそう言うと凛は少し不思議そうに答え、そう言いながらソファーから立ち上がる。
エルマは凛の事を女性だと思っている為、不思議そうな表情で凛へ尋ねる。
凛は普通にそう答えるのだが、エルマは凛が男だと言った事が聞き間違いだと思ったのか聞き直した。
凛が口を尖らせてやや不満そうにそう言うと、エルマとイルマは驚きの余り思いっきり叫んでしまう。
「どうかしたーーー?」
「エルマ達に僕は男だって説明してたんだー!」
「そうだったんだー!マスター可愛いし、そう思われてもしょうがないよー!」
「美羽ーーーっ!!」
「あははは、ごめんなさーい♪」
「全く…。とにかくそう言う訳だから、美羽達の用意が出来たら風呂に入っておいでよ。それじゃ僕は用意を始めるね。」
美羽はエルマ達の叫び声が聞こえた事で何事かと思ったのか、頭だけをひょこっと出して尋ねた。
凛が説明すると、美羽はにひひと笑った後に悪戯っぽく答える。
凛がそう叫んで座りながら両手を上げて怒ると、美羽は笑いながらそう言って頭を引っ込めた。
凛は納得していなかったが説明の途中だったのを思い出し、エルマ達を促してソファーから立ち上がって準備を始める。
「どうしようエルマちゃん…。普通に私達より可愛い男の人って…。」
「止めようイルマちゃん。あまり考え過ぎると、女性として色々自信無くす事になるよ…。」
エルマとイルマは互いにそう言いながら落ち込んでしまう。
「皆おまたせー!お風呂の用意が出来たから一緒に入ろー♪」
凛が万物創造で出したテーブルを重ねる等して数分経った頃に、風呂の準備を終えた美羽が一旦皆の所へ戻り、翡翠達やエルマ達を連れて再び浴室へと向かって行った。
「…あ、そうだった。ナビ、さっきの名付けや今行ってる晩御飯の準備もそうなんだけど、これからは色々な事に対しての効率化を図りたいんだ。その為に『効率化』って言うスキルを今から創造で作るから、ナビの判断で効率化スキルをやりやすい様に調整して貰ってて良いかな?」
《畏まりました。私にお任せ下さい。》
「うん、お願いねー。」
凛は皆がいなくなった後に晩御飯の料理以外の準備を終えた所で、ナビと話をし終わってから万物創造を用い、効率化スキルを作成する。
凛は安易に効率化スキルを作ってナビに託した為にこの時は分からなかったが、ただでさえ妥協を許さないナビが先程凛が苦しそうに片膝を突かせてしまうという失態を犯してしまった。
この事が切欠で主である凛が有益になる事であれば今後は自重しない事を学んでしまい、後から凛を唖然とさせる事になる…。
「はぁ~、気持ち良い~♪戦闘の後のお風呂は格別だよ~♪」
美羽は凛の影響を受けて風呂が大好きになり、今もしっかりと風呂を堪能している様だ。
因みに今日は柚子の香りとなっている。
美羽は皆が初めてボディーソープやシャンプー、コンディショナーを使うと思い、まずは知って貰おうとして実際に使いながら洗って見せる。
その様子をお風呂好きなエルマは目を輝かせて、火燐は面倒そうに、雫達は興味津々とした様子で見ていた。
火燐達は凛が呼ばれた次の日に里香や四大精霊によって生まれたのだが、里香は四大精霊に後を任せたものの、イフリート達はお風呂に入ると言う事を今まで行わなかった。
その為1日の行動が起きる、訓練する、簡単な食事を摂る、寝るしかなかった事で、火燐達も風呂に入るのはこれが初めてだったりする。
その後、美羽以外の面々は思い思いに美羽から習った通り(?)に体を洗う。
ドポォン
「ちょっ、火燐ちゃん!?いくら浴槽が広いからって、勢い良く飛び込んで入るんじゃありません!」
「(バシャバシャ)あー…別に良いじゃねぇか。美羽は細か過ぎるんだよ。」
「火燐ちゃんが大雑把過ぎるんだよ!さっきもローブを脱いだ時に(オーク達との戦闘で付いた土埃等の)汚れが凄かったからさ、せっかくの可愛いさが色々と台無しになっちゃったよ…。って言うか火燐ちゃん、これからも今のままだと綺麗好きのマスターにいつか愛想尽かされちゃうかもよ~?そしたらお昼に食べた唐揚げとかがもう食べれなくなっちゃうよ?」
「かっ、かわっ!?(ごほん)…オレはこれからも凛の傍にいたいし、唐揚げみたいに美味しいのを食べられなくなるのはイヤだ!分かったよ…美羽の言う通りにすりゃあ良いんだろ!」
「おっ、火燐ちゃんデレたね♪」
「デレ…?」
「…それにしても火燐ちゃん達、ローブの下に何も着てなかった事に驚かされたよ…。って言うか、火燐ちゃんも結構大きいけど…翡翠ちゃん。貴方、大き過ぎでしょう…。」
「んしょ、っと。ふぃ~…。」
そんな中、美羽は浴槽に大きな水しぶきが発生する位の勢いで飛んで入って来た火燐に驚き、立ち上がって火燐へそう注意する。
先程火燐は美羽から習った通りではなく、面倒くさがってパパっと体や頭を洗った後に、勢いよく浴槽へ突っ込んで来たりする。
そして火燐はおじさんみたいな仕草で顔を手でごしごしとした後、少し面倒そうな表情で濡れたタオルを畳んで頭に乗せながら答える。
美羽は最初は怒った様子を見せていたが、徐々に悪戯っぽい笑みを浮かべて火燐へそう話す。
火燐は美羽に可愛いと言われた事で慌てた様子となった後に咳払いをして答えるのだが、自棄気味にそう言いながら後ろを向く。
そして美羽が笑顔でそう言った事で、雫が美羽のデレと言う言葉にピクッと反応する。
美羽は何とも言えない表情でそう言った後、浴槽に入ってから寛いでる様子でお湯に浸かっている翡翠の胸を見ながら、まるで恐ろしい物でも見た様な表情でそう話した。
「…ん?ちょ、ちょっと皆!何で皆して一点にそこを見てるのっ!?」
「翡翠…おっぱいもいで良い?」
「ダメに決まってるでしょ!?皆助け…、って何か沈んでるぅー!?」
「これは全部貴方の胸のせい…。つまり翡翠、貴方は問答無用で有罪。」
「そんなぁーーーーーっ!?」
翡翠はお湯に浸かりながら壁に凭れる形で目を閉じて寛いでいたのだが、美羽が翡翠の胸に視線をやった事でお湯にぷかぷか浮いてる胸に皆の視線が集まってしまう。
翡翠は胸に視線が集まっている事に気付いたのか、両腕で胸を隠す様に押さえながら肩から下をお湯の中へ浸ける。
雫が肩の高さにまで手を上げた後、そう言いながらわきわきと指を動かしながら翡翠に近付いて行く。
翡翠は助けを求めて回りを見回すのだが、再び座った火燐以外は皆揃って悲しそうな表情で下を向き、自分の胸に手を当てる等していた。
雫はそう言ってズビシッと右手で翡翠を指差し、翡翠はショックの余り叫んでしまう。
「(皆元気だなー。)」
その後、凛はギャーギャーと騒いでる浴室の様子を聞きながら、少しずれた感想を抱いていた。
因みに何がとは言わないが、美羽はB、エルマとイルマはC、楓はD、火燐はE、そして翡翠は驚異のHだった。
そして翡翠のを揉みまくった雫はAなのだが、一通り済んだ後に我に返った事で虚しくなった様だ。
雫はそのまま先に風呂から上がり、脱衣場の隅で悲しそうにぶつぶつ言いながら体育座りをしていたりする。
美羽達が風呂に向かってから30分後
「ただいまー!」
「おかえりー。美羽以外皆お揃いのパジャマだねー。…美羽、雫と翡翠の2人に何かあった?」
「「………。」」
「あはは…まぁ、2人の事は大丈夫だよ。こういう事もあるかなって思って、マスターみたいに創造魔法を上手く扱えないけど、服を色々と用意してはいたんだ。それより、お風呂が空いたからマスターも入って来たらどう?」
「そう?ならそうさせて貰うね。何が食べたいかは任せるから、皆で話し合った後に美羽が無限収納から出してテーブルに並べといてねー。僕は20分位で風呂から戻るつもりだから、それから皆で晩御飯を食べようか。」
美羽が皆を連れ、そう言って右手を挙げながら笑顔で戻って来た。
美羽は凛が前に用意したピンク色のモコモコとしたパジャマを着ており、火燐達は美羽が用意した普通の白いパジャマを着用していた。
凛はそう言った後、何やら暗い表情の雫と恥ずかしそうにしている翡翠を見て不思議に思ったのか、窺う様にして美羽にそう尋ねる。
美羽は苦笑いの表情を浮かべて答えた後、笑顔で凛に風呂へ入る様に促した事で、凛そう言って浴室へと向かって行った。
20分後
ぷるぷるぷるぷる…
『おぉーーーー!』
「…何やってるの?」
「ん?あぁ、わりぃわりぃ。凛がさっき創造神様に渡してたのを見て、な。創造神様はこれを皿ごと掲げてるのに落とさないって体捌きもすげぇんだけど、それに負けない位この黄色い所もプルプルしてたのが不思議に思ってたんだよ。」
「あー…成程。半熟状態のオムレツ部分がプルプルしてたから気になってたんだね。でもこれはこうやって…縦に切れ目を入れて食べる物なんだよ。」
「あー!…何かもったいない気もするが、これはそうやって食べるもんなんだな!凛、早く食べようぜ!」
「そうだね。それじゃ僕がいただきますって言った後に皆でいただきますって言ったら食べ始めて良いよ。…それじゃ、頂きます。」
『頂きます!』
凛が美羽と色違いで灰色のパジャマを着用して戻って来ると、テーブルの上には肉、魚、野菜を使った色々な料理が既に並んでいた。
そして隣同士に座った火燐と雫を中心に、オムライスが乗っている皿ごと前後に揺らして何やら皆して感動している様だった。
オムライスはケチャップライスの上に絶妙なプルプル加減でオムレツが乗っており、前後左右に揺らしてもプルプルを維持していた。
凛はその様子を見て少し頬をひくつかせながら火燐に尋ね、火燐は笑いながらそう答える。
凛はそう言いながら無限収納から食事用のナイフを出して縦に切れ目を入れ、その切れ目からトロッとした半熟状の卵がケチャップライスへかかっていった。
火燐は切れ目から卵が流れた事で勿体ないと思ったのかそう叫んでしまうのだが、早く食べたいと思ったのかせっつく様に凛へそう言った。
凛はくすっと笑った後にそう言って椅子に座り、皆で挨拶をして食事を摂り始める。
「うまっ!ふわふわなのにトロトロとしてるとか訳分かんねぇけど…うめぇぞこれ!!」
「火燐が食べてるオムライスは里香お姉ちゃん用に作った物の試作品で、他にも幾つか作ってあるんだ。だから他のも含めてなんだけど…皆もオムライスが食べたかったら、自分の皿に取り分けて食べてねー。」
『はーい!』
火燐は昼間の唐揚げと同様に、(スプーンを変な形で掴んではいるが)オムライスも非常に早いペースで食べていた。
凛はオムライスが火燐1人で無くなってしまうと判断し、話をしながら追加のオムライスをテーブルに用意し、皆へそう伝えた事で皆から返事を返される。
20分後
「ボク、マスターの元に生まれて良かったー♪多分だけど、世界中探してもこれ以上の食事を味わう事は出来ないよねぇ…。」
「そんな大袈裟な…。」
「いや、凛、美羽の言う事は尤もだと思うぞ。」
『…。(こくこく)』
「ふふっ、火燐。その言葉はありがたいんだけど、今の状態で言われても説得力ないよ。…はい、これで口の周りを拭いてね。」
「おっ、すまねぇな。」
美羽は長ねぎをゆっくりじっくり焼いて本来の甘みを出し、そこへ醤油を少しだけかけた焼きねぎを幸せそうに食べながら、それでいてしみじみとした様子でそう言った。
凛が苦笑いの表情を浮かべてそう言うと、口の周りに卵やらケチャップやら色々なものが付いてる状態ではあるが、火燐が真面目な顔でそう言い、皆も同意しているのか一様に何度も頷く。
凛は火燐の状態を見て軽く笑った後にそう言いながら火燐にナプキンを渡し、火燐はお礼を言って凛からナプキンを受け取った後に口の周りを拭いていった。
更に10分後
「それじゃ料理も大分減った事だし、デザートと行こうか。」
「デザート…?」
「そう、デザート。昼間のフルーツも一応そうなんだけど、この…プリンみたいな物の事を言うんだ。」
「ふおぉぉぉぉぉ…!」
「えっと…雫、食べる?」
「食べる…!」
凛が食事が大分減って来た所でそう言うと、雫はデザートと言う単語にピクッと反応する。
凛は話しながら無限収納から予め作っておいたプリンを右手で取り出し、左手の人差し指を使ってプリンを指差す。
すると雫は瞬時に凛のすぐ近くまで移動し、目をキラッキラとさせながらプリンを見つめていた。
凛は苦笑いを浮かべながら雫に尋ね、雫が即答した事でプリンを渡す事に。
「凛、ぐっじょぶ…!」
「えっと…一応プリンは人数分あるんだけど、皆も食べ…。」
『(バンッ)食べる!!』
「ボクもー♪」
「はい…。」
雫は凛から受け取ったプリンを一口食べた事で、何やら感動した様だ。
凛へ向けてどや顔をし、そう言って右手の親指を立てる。
雫はプリンを気に入ったのか、それからは味わう様にして一口ずつゆっくりと食べ進めていった。
その様子を火燐達が羨ましそうに見ていた為、凛が少し引き気味で皆にそう提案する。
すると火燐達は両手でテーブルを叩く様にして立ち上がり、凛の方へ身を乗り出しながら伝えた後、美羽が笑顔で挙手しながら答える。
凛は皆の勢いに圧倒された事で次々にプリンを皆へと渡し、火燐達は受け取ったプリンを黙々と食べていた。
翌日の午前5時半頃
凛はいつもの様に午前6時…ではなく、食べる人数が増えた事を考えて5時前に起き、キッチンで料理をしていた。
「マスター、起きるのがいつもより早いよー!早く起きるって言ってくれればボク達も合わせたのにー!…あ、そうそう。今日から翡翠ちゃんと楓ちゃんも料理を手伝いたいんだって。2人共料理に興味があるみたいだよ?」
「ごめんごめん、昨晩美羽達の部屋が楽しそうだったから邪魔するのも悪いかなって思ってね。昨日から人数増えた事だし、いつもと同じだと足りなくなるかなって思って早く起きたんだ。翡翠と楓も手伝ってくれるんだ?2人共、ありがとう。」
「あたし達は凛くんが創造神様に渡したオムライスが、とても綺麗な物に見えてたんだー。訓練中に食べてた食事(?)は正直あまり美味しくなかったんだけど、オムライスを受け取った創造神様があんなに喜んでるのを見て料理をやってみたいかなって思ったんだ。実際に昨日食べたオムライスも美味しかったしね!」
「私も翡翠ちゃんと同じなんですけど…、昨日の昼食や夕食が美味しい物だらけで驚いちゃいました…。それに食事は勿論ですが、料理も皆でやれば楽しいだろうなぁって思いまして…。凛君…、これから宜しくお願いしますね…。」
「ボクもまだ簡単な下準備とか片付けしか出来なくてほとんどマスター任せだから、実は翡翠ちゃんや楓ちゃんとあまり変わらないんだよね…。」
「充分だよ。3人共、宜しくね?」
「「「はい!」」」
凛が料理を始めてから30分程経った頃に美羽が翡翠と楓を連れ、バタバタとした様子でキッチンへとやって来た。
美羽は最初不満そうに話していたのだが、少し恥ずかしそうにしている翡翠と楓を右手で指し示しながら凛にそう伝える。
凛は少しだけ申し訳無さそうにした後に笑顔で答えると、翡翠と楓は恥ずかしそうにしたままそう話し、楓が言葉の最後にお辞儀をした事で翡翠も釣られる様にして頭を下げる。
翡翠の言っていた食事と言うのは、塩気の多い保存食や(決して美味しいとは言えない)干した肉等の事だ。
これは里香が料理が壊滅的に苦手な事(本人はあくまでも多少苦手なだけと言い張っている)や加工技術が発展していない事が原因なのだが、里香が創造で用意した食事は里香の苦手な部分が反映された様だ。
いずれも臭い・固い・不味いの3拍子となっており、作った本人も一口食べて渋い顔となっていた。
イフリート達は一応食事は摂れるものの食事自体は不要な為に食べる事はなかったが、火燐達は凛と一緒に行動する事を前提として用意した為、人間に近い形の精霊となっている。
その為火燐達にはイフリート達にはない空腹感と言うものが存在し、(一応里香が用意したのだが、随分前に用意した物を無限収納へ入れっぱなしだった事で味を忘れていた)保存食を火燐達はしょっぱいや固い等と言いながらもそもそと食べ、途中からは訓練の1つだと思う様になったのか無表情で食事を摂っていた。
そして美羽は苦笑いの表情でそう言った後、たははと言いながら右の頬を指で掻く。
凛が笑顔でそう言うと美羽達はキリッとした様子で返事を行い、凛が美羽達に教えながら料理を作っていった。
それから1時間後
「皆で作ったからか思ったよりも早く終わっちゃったね。それじゃ…僕は大部屋で素振りでもしてこようかな。」
「あっ、じゃあボクと手合わせをお願い!昨日はすぐにゴブリンキングとの戦闘が終わっちゃったから、物足りなく思ってたんだ。それに、ゴブリンキングが嫌な笑い方をしてたから余計に鬱憤が溜まってるんだよねー…。」
「そう言えばそうだったね。出来上がった料理も無限収納へ直した事だし皆で大部屋に行くとして、翡翠と楓はどうする?」
「あたしは普段、凛くん達がどんな訓練してるのかを見てみたいかな。」
「私もです…。」
「分かった。それじゃこのまま行こうか。」
「はーい♪」
「「はい!」」
凛は料理だけでなく片付けまで済んだ為、そう独り言ちていた。
その言葉を聞いた美羽が凛にそう言った後、少しどんよりとした様子でそう話す。
凛は苦笑いを浮かべて返事した後に翡翠と楓に尋ねると、翡翠と楓は顔を見合わせ、それぞれそう答える。
凛は頷いてそう言うと美羽は嬉しそうに、翡翠と楓は元気良く返事を返して大部屋へ向かって行った。
「…。」
それから暫くの間、大部屋へと移動した凛と美羽が手合わせを行うのだが、その様子を1人の女性がじっと見ていた。
その女性は眉毛の少し上辺りを真横に切り揃え、腰までの長さの黒髪を真っ直ぐに伸ばした髪型をしており、額には2本の角を生やしていたのだった。