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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
辺境都市サルーンを取り巻く者達編
138/594

134話

カーヴァン伯爵小飼の商業ギルド員…マルクトは、今も外套がいとうを深くかぶり護衛と称した、10人の暗殺者(アサシン)と共にサルーンへとやって来た。


マルクト自身はこれと言って特徴のある容姿では無いし、かと言って誰かに誇れる様な特技がある訳でも無い普通の商業ギルド員だ。

ただ、昔から少し悪い事をしてお金を稼ぐのが趣味で、商品を横流ししたり裏で捌いたりしていた。

やがてそれが縁となってカーヴァン伯爵から可愛がられる様になる。


マルクト達は北側の門から入り商業ギルドに馬等を預けた後、現在はサルーンの中心部である冒険者ギルドの近くにいる。


マルクトの護衛兼暗殺者達は裏の組織の者達で、金銭次第でどの様な汚い仕事でも請け負う。

今回はカーヴァン伯爵からの依頼でマルクトに従う様にとの事で、マルクトを護衛しつつ共に王都からやって来た。




「ここがあの辺境田舎のサルーンだと?数年前に来た時に比べて随分活気が増しているじゃないか!先程の北門も周りの様子が以前と違っていたし、入って直ぐの所で大工達が同時に複数の家を立てている最中だったな。つまりは、サルーンの土地が以前よりも広くなり栄えている…と考えるべきなのか?おい、お前。商店で1度買い物をしたら、直ぐにサルーンから出て伯爵閣下の元へ戻るのだ。」


「はっ。」


「俺達は少しの間サルーンに滞在し、周りの様子を見るぞ。」


『はっ。』


マルクトはそこで以前とは違う人の多さに驚き、ここに来る迄の事を思い出していた。

その後マルクトは護衛の1人に目当ての物を購入したら王都へ戻る様に伝え、商店を探そうと辺りを見回す。


「マルクト様。あちらが目的の商店の様です。」


「そんな事は分かっている!ただ先程の商店と違って人が沢山並んでいると思っただけだ!!と言うか、これに並ぶのか…。」


「はっ、失礼しました!(ふん、伯爵の腰巾着風情が偉そうに。悪事と取り入る事しか能がない奴に何故我らが従わねばならないのか…。)」


そこへ護衛の隊長の男性が商店の方向を向いて言うのだが、部下に出し抜かれたと感じたマルクトは顔を真っ赤にして憤った後にそう叫んだ。

サルーンの北側にある2号店も勿論行列はあったのだが、目の前に広がる様な何百人と言う程では無かった為、マルクトは商店に並ぶ長い行列を見てうんざりした様な表情になり、続けてそう言った。


護衛の隊長の男性はマルクトから理不尽な怒られ方をした為、マルクトへ謝罪しつつ内心悪態をつく。

しかも王都からここに来る迄の間、マルクトが上で自分達が下だとやたら強調する様な物言いをして来る。

隊長は既にマルクトに対して辟易へきえきとしており、早く仕事を終えて帰りたいと考えていた。


その後2時間並んでマルクト達は買い物を終える。


「これが前に王都で見たのと同じ『アイテム袋』と言う物か。…1人1個迄しか使えないと書かれていたが本当の様だな。伯爵閣下にどう説明したものか…。」


マルクトは商店の入口横で販売しているアイテム袋を、護衛達の分を含めた複数個を購入して使用しようとするが、()()()袋の入口から先に進めないアイテム袋を見ながらそう言った。

その為、直ぐに護衛の1人をこのまま王都へと向かわせるには早いと感じたマルクトは、暫く思案するのだった。




この日から喫茶店では豆腐やおから、豆乳、蒸し大豆と言った大豆を使ったメニューを加え、商店ではアクリルの様なコップとアルミの様に軽いが頑丈な片手鍋と小さなフライパンに着火剤、それと空間収納機能付きの巾着袋…通称アイテム袋を販売する事になった。


大豆を使ったメニューは女性に人気の様で、開店してから今迄かなりの割合で豆乳ラテを中心に注文が入っている。

アクリルの様なコップは商業関係者や家族で来る者達に人気の様だ。

落としても割れにくいし見た目も綺麗なので次々に売れている。


片手鍋とフライパンはレトルト食品やインスタント食品にと用意した物で、この世界には手頃な大きさの鍋とフライパンが無かった為か、外では食べにくいとの要望が上がった。

片手鍋とフライパンだけでは足りないと思い、魔法が使えない人でも火をおこせる様に着火剤も併せて販売する事にした。

既にライターを販売しているので、セットで持っておけば夜営がしやすくなる。

着火剤はライターと同様に少し取り扱いに注意しないといけないので、会計時に説明をする様にしている。




だがそれ以上にアイテム袋は凄まじかった。


アイテム袋は白、黒、赤の3色を用意して、客と従業員のどちらにも目に付く様にと最初は商店内の真ん中の会計から少し手前の所に、見本と共に並べて販売をしていた。

見本のアイテム袋は、中にこれだけの量が入ってると言う事で清涼飲料系、缶詰めを含む保存食系、インスタント食品系、レトルト食品系の計100点程と一緒に、3色のアイテム袋と共に展示している。


しかし会計の際に()()()()()()()、カウンターの下に埋め込まれている機器で信号を送り、自動的に買った人が持ち主として認定されて登録を行う仕様だ。

自分が購入した物を他の人が出し入れする事は勿論不可能にしているし、2個目からは購入したい人が既に登録済みのアイテム袋を持っている場合は持ち主認定機能を停止してある。

その為、仮に購入しても袋の入口に障壁みたいな物が張られて先に進めないと言う仕様だ。


信号は超音波の様な物で、休憩スペースの一角で商店の会計の後ろの壁に隣接する形でスーパーコンピューターの様な装置を設置した。

その装置に購入者のDNAの様な物を登録する事で複数登録を防止する。

その為、転売はおろか複数所持も出来ない様な不正防止の案内を商品が乗っているテーブルの前に貼付してある。


アイテム袋を含めた全商品に万引き等の不正防止の為、最近では商品に時間制限機能を施している。

これは会計のカウンターの上に商品を乗せない状態で店外に商品を持ち出すと、その購入しないで持ち出した物が1時間程で消滅する仕様となっている。


それでもアイテム袋は金貨1枚と高価なのにも関わらず、開店して直ぐに人気過ぎた為会計の前がパニックになる事態に発展してしまい、会計が進まなくなってしまった。




「(凛様、やはり商店内でアイテム袋を販売するのは無理だった。今も会計前が混雑してとんでもない事になっているぞ…。)」


「(あー、やっぱり駄目だったか…。分かった、直ぐに向かうね。)」


その様子を見てトーマスは不味いと思い、念話で凛に助けを求める。

凛は連絡を受けて直ぐに駆け付け、アイテム袋の見本を台ごと無限収納へと直してそのまま外に移動し、外に見本と即席の会計を設けた。

トーマスは元々誰かのフォローをするフリーな状態にあるので、アイテム袋があった所にいた人達にアイテム袋を購入するかを尋ね、購入したい人にそれぞれ手渡して行った。


商店内での販売が困難となった為、急遽外の丁度商店と喫茶店の間の休憩スペースの前で販売する事にした。


この事によりとどこおっていた会計が回り出したので、トーマスを始めとした従業員はあのまま会計が進まない事で苦情を言われずに済みそうだ、と内心安堵するのだった。

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