132話 37日目
それから4日経った37日目
4日前の夕食の後、凛は直ぐにサルーンの酒場へと移動した。
そしてそこでもはや日課となっているガイウス、ゴーガン、ロイド、ルルの4人、そして先程王都に帰って来たロイドの息子でありルルの父親であるドワーフのルークを含めた5人(厳密に言えばライアンを含めた6人)での酒盛りにお邪魔していた。
ルークはロイド程ではないが、少しだけ伸ばした髭を持っているナイスミドルと言った風貌をしている。
「初めまして、僕は凛と言います。いつもロイドさんやルルにはお世話になってます。」
「こちらこそ初めまして、俺はルークと言う。いつも父と娘が騒がしい上に面倒を見て貰っている様で済まない…。しかし先程から参加させて貰っているが、ここの酒は実に美味い!」
凛とルークは初対面の為、互いに自己紹介から始めた。
そして凛は自己紹介の後トーマスとニーナの件について、参考も兼ねてガイウス達へ相談を行う。
それまでガイウス達は楽しい気分だったが、凛が自己紹介の後に少し困った表情になった事で佇まいを正す。
そして凛から一通り話を聞いて皆一様にして怒りを露にする。
しかし凛にまあまあと宥められた事もあって一旦怒りを静め、一緒に話を聞いていた酒場のマスターも交えて話し合いを始める。
結論を言えばまとめ買いについては商会へと向かって貰い個別に取引を行う事、
持ち帰りについては受付の一角に専用の受付を設け、生物なので早目に食べる等を伝え、容器代等の追加料金込みで良ければ販売、
コーヒー等に使う砂糖やミルク等は単品やセットで計10個入りで銅貨3枚、ドレッシングとソースも1食分入りが銅貨3枚、喫茶店のコップは現物を見せた所銀貨1枚で商店に追加と言う事になった。
それと調理時間の短縮の要求については、見た目や品質が一定に保てなくなるので断って良いと真っ先に言われた。
取り敢えず決まった後に凛はお辞儀を行い、お礼ですと言って山○の様なプレミアムなウイスキー3種類(茶、緑、黄色の瓶)をカウンターに置いて帰宅し、早速トーマスとニーナに伝えて対策を行う事にした。
ガイウス達は初めて見るそれらを少しの間観察していたが、凛から高級なウイスキーと聞いてマスターを含めた皆はごくり、と生唾を飲んだ。
そして茶色のプレミアムウイスキーをそれぞれ一口分だけ注ぎ、それを皆で恐る恐る飲んでみる。
すると今迄の物より香りも味のどちらも良かったのでガイウス達は狂喜し、その後緊張から解放されたのもあってか一斉に飲み出した為直ぐに瓶が空となった。
その後、プレミアムビール同様に高級なお酒と言う事でメニューにプレミアムウイスキーが追加される事になる。
因みにライアンは今回も強制的に飲まされて潰される迄が、こちらも日課となっている様だ。
ライアンは既に潰されていてカウンターにて力尽きている。
ライアンは暁に○メロスペシャルを喰らって紅葉に風で撫でられた後も懲りてないらしく、次の日以降も美羽を探してサルーンをさ迷っていたそうだ。
しかし美羽を含む凛達はサルーンにいる時間もあったが、冒険者ギルドや商店や喫茶店、ホズミ商会等の建物内部がほとんどだった為気付かれなかった。
一応屋外もあるにはあったのだが、こちらは数十分で済んだりする。
以前フーリガンから移住させた元住民達の事だ。
凛が屋敷を大きくした事で余裕が出来たので、ガイウス達に相談した次の次の日である3日前に彼らを屋敷へ招く事にしたのだ。
凛がガイウスにその事を伝えると、フーリガンの人達にと用意し、これから空き家となる家の扱いをどうするか尋ねられた。
「あの家は解体して更地に戻そうかなと思っています。少し前に美羽達に家のチェックを頼んだのですが、フーリガンの人達の様なこの世界の住民でも、事前に説明すれば家の中にある機器等にも対応出来る事が分かりました。それに簡単な造りとは言え、向こうの世界と似た構造にしています。なので知らない方へ残すのは少し不安ですね。」
「勿体無い!サルーンの広くなった部分に大工を呼び次々に家を建てさせてはいるが、あれ程の良い物件は他に無いぞ…。」
「サルーンには今迄ほとんど貴族がいらっしゃいませんでしたし、ありがたい事にサルーンに現在いる貴族や住民の方々も僕達に触れる事はありませんでした。しかし、サルーンが発展していくこれからは分かりません。移住して来た方々もサルーンの方々と同じとは考え難いですので、家を残した事でサルーンや僕の領地の人達に対して何らかの不満が出る事を未然に防ごうかと思いまして。」
「そうか…分かった。この間の様に凛殿の配下の負担になる位なら、最初から無い方が良いからな。」
凛が建物の解体予定の事をガイウスに伝えると、ガイウスは驚いた後に難しそうな顔をしながらそう言った。
凛は今迄に無かった物を見てしまうと、それによって期待値が上がってしまい以前あった商店や喫茶店の様なクレーマーに近い者が出て来る事を考えた。
凛はそれなら最初から期待出来ない様に、建物を残さないで解体してしまおうと判断しガイウスへ提案する。
ガイウスも凛が建てた家を見ていたので、凛が言おうとしている事を理解した様だ。
頷きながら凛へと返事をする。
「ありがとうございます。それと、これからは冒険者の方々もサルーンへと移住して来ると思うので、死滅の森に入って3キロ程進んだ僕の領地にも来る可能性が増すと思うんですよ。なので西と南の門番の人達に、森へ入る分には全然構わないので領地へは入らない様にと注意を促して貰えると助かります。」
「分かった。ただ、冒険者によっては捉え方も異なるので全部を防げるかは分からんが…。冒険者と言う者は自分に自信がある者が多いからな。」
「充分です。それでもお分かり頂けなければサルーンへとお帰り願うしかないですね…。少しでもサルーンに近い方が良いかと思い今の場所にしましたが、冒険者の方々に向けて新たに拠点を設けた方が良いかも知れませんね。」
「森はリスクが高過ぎるので、そこ迄しなくても良いと思うんだがな…。」
凛はガイウスへお礼を言った後、ガイウスへとお願いをする。
ガイウスは了承したが、それから2人は難しい顔をしながら話し合ったのだった。
取り敢えずは各門で注意喚起を行い、凛の領地に入りそうな人物が来たらこちらでもやんわりと来ない様に促すが、それでも無理に押し通す様なら捕縛すると言う事になった。
その後フーリガンの人達に用意した家は凛と美羽によって解体され、その代わりにホズミ商会支所の近くに1つの建物を建てた。
そして昨日の午後3時前になって、進化した雫と翡翠が目を覚ました様だ。
「凛、目覚めた…。とはいえまだ眠い…。目覚ましにプリンを私は所望する…。」
「凛くんおふぁよー…。あたしも何か、甘い物が食べたいかなぁ。」
「2人共おはよう。はいはい、今から用意するよ。その間に2人共顔を洗って来てね。」
「「はぁーい…。」」
見た目は変わっていないが2人共まだ眠いのかふらふらとしながらそう言い、事前にナビから2人が目覚める事が分かっていて備えていた凛は、苦笑いを浮かべながらそう言って2人を促すと、雫と翡翠はまだ眠そうにしながらそう言って洗面所へと向かうのだった。