130話
「うわー、凄い!この辺り全部凛様の領地なんだね!!スーパーとかで見た事ある様な野菜や果物が沢山実ってるよー!」
凛はステラと美羽を連れ、応接室から使い捨てのポータルを使って屋敷の前へと移動した。
ステラはポータルにもかなり反応し、恐る恐るポータルをくぐって来て移動する。
ステラは屋敷の前を端から端迄移動し、その間はずっとキョロキョロとしながらそう叫んだ。
「うん、そうだよ。どうやら魔力を込めた水で育てると、作物は早く、美味しくなるみたいだね。」
「うわっ!水に魔力を込めるとか、それって正にファンタジーだよね!」
「本当本当!」
「(うーん……。)」
それを凛が拾ってそう言うと、ステラは少し大袈裟に驚いた後にそう返事をする。
凛が頷きながらそう言うと2人は揃ってくすくすと笑う。
凛とステラは仲良くなりステラは呼び捨てに、凛は主と言う事で凛様と呼ばれはするものの普通に話す仲となった。
美羽は凛と同郷の者が現れた事で嬉しく思う反面、凛が今迄に見せた事が無い様な反応を見せるので少しもやもやしていた。
「ステラは冒険者になりたかったんだっけ?」
「ん、そうだね。とは言え住んでいる所が貧しかったのと、母親に恩返しをしたかったから手っ取り早くそうしたかっただけなんだけど…。一応少しでも早く上がろうと思って、軽くではあるけど物心が付いた頃から鍛えていたんだ。」
「それでなんだ…。早くサルーンに着いたのは鍛えていたからなんだね。見た所手ぶらだけど、使ってみたい武器はあったりするのかな?」
「使ってみたい武器…あるにはあるけど、多分この世界には苦無とかは無いと思うんだよね…。」
「苦無?あるよ、これでしょ?」
凛は話の途中でステラに尋ねる。
ステラは冒険者では無いものの物心付いた時から訓練をしていた影響からか、凛の見立てでは既に鉄級の中位の強さがある様に見えた為だ。
凛は納得し、今度は武器について尋ねてみる。
ステラはこの世界に苦無等は無いと思っていたのでダメ元で言ってみたのだが、あっさりと凛が無限収納から苦無を出して見せたので再び固まってしまう。
「え?ちょっ、え?苦無、だよね?何で苦無?…じゃなくて。凛様、どこからこの苦無?を出したのかな?まさか…。」
「そう、無限収納だよ。苦無は僕が用意したんだ。一応、苦無だけじゃなくて手裏剣もあるよ?」
「やっぱり…。僕、もう驚き過ぎて疲れたよ…。」
ステラは混乱していたからかしどろもどろになっていた。
その後一旦深呼吸をして気分を落ち着かせ、改めて凛へ尋ねる。
凛の答えを聞いたステラはがくっと項垂れてそう言うのだった。
その後も苦無と手裏剣を無限収納へと直した凛がステラに領地内を案内していたのだが、終わる頃には驚きの連続でステラはぐったりしていた。
「ステラ、疲れてしまったみたいだね?」
「誰のせいだと思ってるんだよー。疲れと同じ位楽しかったけどさー。それに凛様、エクスマキナってやり過ぎでしょー!!」
凛はくすくすと笑いながら尋ねると、凛の目の前にいるステラは恨めしそうにじとっとした目を凛へと向けた後、うがーと吼える様にしてそう言った。
凛は領地内の案内をしている時に、遠くで領地に入ろうとした鵺をゼータがビットを使って討伐している所を目撃した。
その後ゼータが鵺を無限収納に直した所で凛がゼータへ向けて手を振ると、ゼータは凛へ向けて頭を下げる。
「凛様…今のってどうやって倒したのかな?」
「ん?ゼータが使っていたビットの事?」
「ゼータ!?それにビットだって!?凛様ちょっとその辺詳しく教えて貰って良いかなぁ!?」
ステラはもしやと思い凛に尋ねると、凛はそう返事をする。
するとステラは驚いた後、凛の両肩をがしっと掴んで揺さぶりながら問い詰めた。
凛は領地内にガーディアンとして3体、街に3体、それと森を回る様にして進んで貰っている8体のエクスマキナの事を説明した後にアルファを呼んだ。
因みにイプシロンは翠達と一緒に作業をしているのが見えたので、凛は作業の邪魔をするのも悪いと思い呼ばなかった。
凛はアルファとゼータの2体にシールドソードビットとビットの操作を、軽くではあるが空中にてそれぞれ浮かせた状態でして貰う。
「凛様っていきなり何かが、見える!とかで分かったりマイスターだったりする人なのかな?」
「いや、説得力無いかも知れないけど違うからね?」
「でも、凛様が造ったって事は両方共扱えるんだよね?って事はやっぱりニュータ「ステラ、それ以上はいけない。」あ、はい。」
ステラが凛の事を得体の知れない者として認識し始めたので、凛はやんわり否定しておいた。
その後に話を聞いたら、どうやらステラも日本のアニメ等をそれなりに嗜んでいたらしく、参考にした物が分かってしまった様だ。
「まあまあ。ここに来る迄暫く風呂に入っていなかったんじゃない?取り敢えずシャワーだけでも済ませて来る?」
「風呂っ!!僕、生前ではお風呂が大好きだったんだ!村は貧しいから体を拭くしか出来なかったし、ここに来る迄は軽い水浴びしかしてなかったんだ。是非入らせて欲しい!」
凛はステラを宥めつつ、髪や尻尾はボサボサでワンピースの様な服もぼろぼろだった為、ステラにシャワーを進める。
ステラは耳と尻尾をピーンと立てて嬉しそうにする。
そして猫じゃらしに戯れる猫の様に空中を引っ掻く様にしながら、凛へと催促する様にしてそう言った。
その後凛の案内の元で屋敷の女性風呂に案内されたステラは、脱衣場にて一瞬の内に服を脱ぎ浴室へと入って行った。
その後かなり久しぶりにシャワーを見た事でテンションが上がったのか、鼻歌を交じらせて丹念に体を洗う。
「いやー、さっぱりしたー!これだけでもここ迄来た甲斐があったよ!」
にゃはー!とでも言いそうな位テンションが上がり、元気一杯の笑顔になったステラはそう言った。
「喜んで貰えて何よりだよ。元日本人なら分かるだろうけど、お風呂は大事。」
「うん、本当、大事。」
凛が頷きながらそう言うと、貧しかった為今迄碌に風呂に入れなかったステラも同意しているのか、大きく頷いてそう言ったのだった。