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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
オーク&ゴブリン編
13/594

12話

どうやらそれぞれ同じ位に戦闘が終わったらしく、全員が凛の元へ集まって来た。


「皆、怪我とかは大丈夫だった?」


「ボクは大丈夫だよー。」


「オレは一瞬ヒヤッとしちまったが、楓のサポートのおかげで無傷で済んだぜ。」


「全然余裕。」


「あたしも大丈夫だよー。」


「私もです…。」


凛は自分の周りにいる美羽達を見渡す様にしてそう尋ねると、美羽と翡翠は笑顔で、火燐はニヤリと笑い、雫は澄まし顔で、楓は穏やかな笑みを浮かべながらそれぞれそう答えた。


「そうなんだ。雫、楓、2人共グッジョブだね。」


「ぐっじょぶ?」


「よくやったねとか、頑張ったねって意味だよ。雫はオーク達へ向けてアイシクルレインを放って先制してくれていたし、楓は火燐のサポートに回ってくれてたみたいだからね。だから称賛を込めてグッジョブ…って言わせて貰ったんだ。」


「成程。」


「いえ、サポートをするのは私の役目ですから…。」


凛は右腕を肩の高さに真っ直ぐ伸ばした後、親指を立ててそう言った。

雫はグッジョブと言う言葉を初めて聞いた為、こてんと首を傾げながら凛に尋ねる。

凛は笑顔で答えると雫はそう言ってこくこくと頷き、楓は少し下を見ながら恥ずかしそうにして話す。




「さて、とりあえずオークキング達は倒した事だし、僕と美羽は…こんな感じで、オーク達の死体を回収していくね。僕達も終わったらすぐに向かうからさ、火燐達は先にエルマさん達の所に戻ってて貰って良いかな?」


「…確かに、オレ達が運ぶよりもそうやって回収した方が早そうだな。雫、翡翠、楓。先にオレ達だけでエルマの所へ行ってようぜ。」


「「「………。」」」


凛は火燐へ向けてそう言いながら直ぐ近くにあったオークキングの死体に触れ、瞬時に無限収納へと送った。

その後火燐にそうお願いすると火燐は少し苦虫を噛み潰した様な表情になり、そう言って後ろを振り返る。


火燐は里香やイフリートから凛の手助けをする様にと頼まれていた為、後始末で凛の手を煩わせる事が従者としても、そしてこれから一緒に行動する仲間としても申し訳ないと思った様だ。

そしてそれは雫、翡翠、楓も同じだったのか、3人共少し悲しそうに下を向いていた。


「うん、お願いね。急いで終わらせるよ。」


そして凛はそう言い終わると、走って別のオークの元へ向かって行った。


「(こそこそ)(…火燐ちゃん、大丈夫だよ。エルマさん達を助けるって決まった時から、ボクがマスターよりも多くのオークを回収するつもりだったんだ。)」


「(…!そうなのか!)」


「(マスターのお役に立ちたいのは皆一緒だもんね。後でナビ様に、火燐ちゃん達も収納が出来るかを聞いてみるよ。)」


「(ああ、すまねぇが是非頼むよ!)」


「(うん、分かった。)」


美羽は火燐達に元気がなくなった事を何となく察したのか、凛とは反対方向である火燐の元へササッと向かった後、ニコッと笑いながら小声でそう言った。


火燐は美羽が自分と同じ様な想いを抱いていた事に驚いた表情となるのだが、すぐに軽く笑顔へ変えて小声で美羽にそう話すと、美羽はウインクしながら小声で答える。

火燐は美羽の言葉を聞いて嬉しくなったのか、小声のままだがやる気になった表情でそう言い、美羽は笑顔で頷いて答える。




「…?美羽ー?どうかしたー?オークの回収を始めるよー?」


「マスターごめんなさーい、すぐ行きまーす!それじゃあ、ボクもマスターの所に行ってくるね。」


凛は先程のオークキングから少し離れたオークジェネラルの死体をしゃがんで回収していた所だったのだが、まだ美羽が来ていない事を不思議に思ったのか、何故か火燐達と一緒にいる美羽へ向けてそう言った。

美羽は凛に返事をした後に火燐の方を向いてそう言い、左手を上げて手を振りながら凛の元へ向かって行った。


「…火燐、美羽は何て言ってた?」


「美羽も凛の役に立ちたいからか、オレ達が回収の役に立てない事が分かったみたいなんだよ。後で凛達がやってる収納ってのが俺達にも出来るか、ナビ様…?に聞いてみるってさ。」


「そう…。」


「ひとまずここで立ち話もなんだし、オレ達はエルマ達の所に向かわないとだな。」


「「「(こくっ)」」」


雫が火燐の後ろから近付きながらそう尋ねた為火燐が雫の方を向いて答えると、雫はそう言って少しだけ微笑んだ。

火燐がそう言った後に雫達が頷いた事で、火燐が先頭になってエルマ達がいる方へと歩いて向かう事に。


雫はあまり感情が表に出ないタイプなのだが、どうやら美羽が自分達を気遣ってくれた事が嬉しかった様だ。




「すぅ…すぅ…。」


「エルマ…は、やっぱり寝てるか。イルマを庇いながら戦ってたから、疲れてたんだな。」


「ふふっ。」


「そうだね。」


「ですね…。お二人共、結果的に無事に済んで良かったです…。」


「取り敢えず…オレ達も凛達が来るまで、座って待つ事にするか。」


火燐達がエルマ達の所へ戻ると、エルマは木を背もたれにして寝ていた。

そしてエルマは膝枕をする様にイルマの頭を自身の膝の上に乗せ、イルマの左肩の上に左手を、イルマの頭に右手を乗せている状態だった。


火燐は安心した様子で寝ているエルマを見て、優しく微笑みながらそう話した。

雫は軽く笑い、翡翠と楓は笑顔で答える。

そして火燐はそう言ってその場に座り、雫達も釣られる様にしてその場に座る。


「ん…?あれ…ここは?」


イルマは話し声が聞こえたからか、横になったままそう言ってパチッと目を覚ました。


「悪い…起こしちまったか?」


「いえ…貴方達は?」


「オレは火燐。イルマ達がオークキングに襲われてるってのが分かったんで、助けに来たんだよ。」


「そうだった!エルマちゃん大丈夫!?」


火燐は申し訳なさそうな表情になってイルマに尋ねると、イルマは寝起きでまだ上手く頭が働いていない様だ。

火燐の方をを向いたままのそのそと起き上がり、正座をしながらボーッとした感じで答えた。


火燐はイルマにそう説明すると、イルマは火燐からの説明を聞いてそう言いながら勢い良く立ち上がる。

そしてエルマの正面に向かい合う様にしてしゃがみ、そう叫びながらエルマの両腕をがしっと掴んだ。


「ひゃうっ!!あっ、イルマちゃん!目が覚めたんだね。」


「うん、ごめんねエルマちゃん。こんなにぼろぼろになるまで戦わせちゃって…。」


「ううん、あたしは大丈夫。それよりも、イルマちゃんが無事でいてくれて良かったよ。頭に石をぶつけられて血は出るし、そのまま気を失うから焦っちゃった。」


エルマは寝ている所へ腕を掴まれた事に驚き、悲鳴を上げて目を覚ます。

しかし目の前にいるのが目を覚ましたイルマだった為か、そう言って喜びを露にしていた。

イルマはエルマの着ている服がぼろぼろだと思った為か、そう言ってエルマの腕を掴んだまましゅんとなった。

しかしエルマは目を閉じて首を左右に振った後、苦笑いを浮かべながらそう説明する。


「皆ー、お待たせー!」


「えっ!?(…エルマちゃん。手を振りながらこっちに向かって来る子…可愛過ぎない?)」


「(うん、実はあたしも助けて貰った時、そう思ってたんだよね…。)」


するとそこへ凛がオーク達の死体を回収し終え、右手を左右にぶんぶんと振りながらエルマ達へ向けてそう叫んだ。

凛達はエルマ達から30メートル位離れた地点におり、現在もエルマ達の方へ走っている所だ。


イルマはこちらに近付いて来る凛を姿を見て、エルマと小声でそう話していた。


そして凛の後ろにいた美羽は笑顔で火燐達にVサインを送り、火燐達はそれを見て頷きながら内心安堵する。




「「改めまして、皆さん助けて頂きありがとうございます。」」


木の根元でエルマとイルマは左右に並んだ後に声を揃えてお礼を言い、両手を前にして凛達へ深くお辞儀をして頭を上げた。


2人が並んでみてよく分かったのだが、種族と髪色こそ違うものの、エルマが若干つり目でイルマが若干たれ目と言う位しか差がなかった。

そして髪型はそれぞれ反対のサイドテールで身長はどちらも155センチ程と、ほぼ鏡に映しただけの同一人物の様に見えた。


「無事に間に合って良かったよ。それにしても、2人共よく似てるよね。まるで双子みたいだよ!」


「そうなんですよ!私は天使でイルマちゃんは悪魔だからか、種族同士は凄く仲が悪いです。けどあたし達はあまりにも似ているからか、全然他人に思えないんですよ…。あたしは元々中級の強さだったんですが、イルマちゃんと待ち合わせをしては里から抜け出して会いに行ってるってのが、つい最近バレちゃいまして…。上司から位を下級に落とされただけじゃなく、そのまま集落から追放されちゃったんですよねー。」


凛はエルマ達へ向けてそう話すと、エルマはそう言って最初嬉しそうにしていたのだが、段々と困った様子を見せる。

そして言葉の最後にあははーと言いながら、右手を後頭部にやって苦笑いを浮かべていた。


「イルマちゃんは戦うのが苦手だし、あたしも力を落とされてまだ日が浅いからか不慣れだったんですよ。だから2人で、一緒にオークから逃げようとしたんですけど…。」


「それでさっきの状態って事だったんだね。」


「恥ずかしながら…。」


エルマは一旦手を前に置いて凛に説明すると凛は苦笑いで返事を返す。

その為エルマも凛に釣られる様にして苦笑いとなり、ポリポリと右手の人差し指で頬を掻いた。




「そう言えば、そろそろお昼の時間みたいだね。2人が良ければなんだけど、ここで一緒にお昼ご飯食べない?」


「えっ、良いんですか?実はあたし達、昨晩から何も食べてなくてお腹ペコペコだったんですよ…。」


「なら丁度良かった。火燐達も一緒にお昼にしよう。美羽、今日のお昼は何にする?」


「あ、ああ…。」


「そだねー…昨日までと違って人数が多い事だし、好みもあるだろうから色々出してみると良いかも。」


「それもそうだね。それじゃあ…。」


凛は場の空気を変えようとしてエルマとイルマに尋ねると、エルマがお腹に手を当てて答える。

凛はそう言いながら無限収納から2メートル四方のブルーシートを出して地面に広げ、靴を脱いでブルーシートの上を歩きながら、同じく後ろから付いて来た美羽と話をして何を出すかを決める事に。


火燐は困った様子で返事をするのだが、その後2人は話をしながらてきぱきと作業を行っていた。

やがて2人はブルーシートの中央部分に、容器に入った状態のサンドイッチやおにぎり、鳥の唐揚げ、フライドポテト、林檎やオレンジ等をカットしたフルーツを並べ終える。


そしてその間、エルマとイルマは凛と美羽が行っている事に付いていけずに固まっており、火燐達は料理が気になるのか並べられた物をじっと見ていた。


「皆ー、準備が出来たよ。皆も履き物を脱いで、こっちに来て一緒に食べよ。」


「えー…っと凛、さっきも思ってたんだが…今のは何なんだ?」


「その辺の事も含めて説明するからさ、まずは食べてからで良いかな?僕もお腹も空いちゃった。」


「あー…分かったよ。」


凛にそう言われた事で、一同は我に返った。

その後火燐達4人は互いに目配せを行い、代表として火燐が凛に尋ねる。

凛はそう言いながら並べた料理の前を左手で指し示すと火燐は不安な表情になり、そう言った後に凛に指し示された場所へと向かう。




凛が自分達の説明を行う前に、先程までの様にエルマ達の事をさん付けで呼ぼうとしたのだが、エルマ達から(自分達が助けられた側の為)反対に呼び捨てにして下さいと必死な顔で言われてしまう。

その為凛は渋々了承した後、改めて自分達の説明を行う事に。


「つまり凛様は創造神様の弟様で、あたし達よりも全然強くて凄い御方(おかた)なんですね!」


「2人共、畏まらないで普通にしてくれて大丈…。」


「無理です!」


そしてエルマとイルマは凛からの説明を一通り聞いた後、畏れ多いと思ったのかブルーシートの端でひれ伏してしまった。


凛は一度に伝え過ぎた事で強いショックを与えてしまったかと心配になり、そう言って2人を宥めようとする。

しかしエルマはひれ伏したまま、凛の言葉を遮る様にしてきっぱりと断った。


「…そしたら命令って事にするよ。2人共、畏まらないで普通に僕達と接して欲しいな。」


「…その言い方はズルいと思います。分かったよ…凛さん。」


「本当だよ凛さん…。」


凛はいたたまれなくなったのか2人の元へ向かい、それぞれの肩に手を置いて優しく話し掛けた。


エルマとイルマは少しだけ頭を上げて互いに顔を見合わせた後、エルマは頭を上げて少しだけ不服そうに話す。

しかしすぐにエルマは微笑んでそう言い、同じく頭を上げたイルマは苦笑いでそう言った。


「まだ少し固いけど…まぁ良いか。それで2人はこれからどうする?旅を続けるとかかな?」


「あたし達、普通の冒険者よりも少し下位の強さの下級の天使と悪魔だから弱くてさ。今の所行く当てって言うのは特にないんだよね…。」


「だったらさ、僕達と一緒に行動しない?」


「えっ…良いの?あたし達、沢山凛さん達の足を引っ張ると思うんだけど…。」


凛は苦笑いで答えた後、エルマとイルマにそう尋ねた。

エルマは少し悲しそうに答えると凛がそう提案し、エルマは困った様子で返事をする。


「強さは気にしていないから大丈夫だよ。それより僕は2人と友達になりたいから一緒にいたいって思ったんだ。…どうかな?」


「友達かぁ…集落にいた時、いつも皆ニコニコとしてるのを見ていたんだけど、何だかその笑顔に裏があるんじゃないかと思って避けてたんだよなぁ。だからあたしは付き合いが浅かったと言うか、知人以上になりたいって人が集落にはいなかったな…。けど、エルマちゃんの所は別な意味で酷いんだよね?」


「そうなんだよ…。私達の所は殺伐としてると言うか、他人を蹴落とて自分が上に行くって人が多いんだ。私はそれが嫌で、里からよく出てたの…。」


凛は笑顔でそう言った後、少し心配そうな表情でエルマ達へ尋ねる。

エルマは考え込む様にして言った後、そう言ってイルマの方向を向く。

イルマはそう言って悲しそうな表情で俯いた後、首を左右に振って答えた。




「凛さん達さえ良ければなんだけど、これから一緒について行きたいかなぁ、なんて…。」


「勿論だよ!2人共、これから宜しくね。」


「「宜しくお願いします。」」


エルマとイルマは目配せをして頷き合った後、エルマが真っ直ぐ凛を見てそう言った。


凛は立ち上がって1歩下がり、そう言いながらそれぞれに手を差し出す。

エルマとイルマは返事を行い、それぞれ凛と握手をした。


これ(鳥の唐揚げ)うんめーーっ!」


「…!(もっもっもっ)」


因みに、凛達が握手等のやり取りをしている間、火燐は鳥の唐揚げが、雫はカットフルーツが気に入った様だ。


火燐は嬉しそうにそう言いながら山盛りの唐揚げをばくばくと食べており、雫は栗鼠(りす)の様に頬張りながら黙ってフルーツを食べ続けていたりする。




「この世界で初めて会ったのがエルマ達で緊張したんだけど、一緒に来てくれるって事で安心したよ。…それじゃ次は、ゴブリンの集落に向かおうと思う。ナビによると、今は無事みたいだけど捕らわれてる人がいるらしいんだ。」


「マスター、捕らわれてるのは人じゃないみたいだよ!」


「あれ、そうなんだ?捕らわれてるって聞いたから、てっきり女の人だと思ってたよ。ナビ、捕らわれてると言うのは一体…?」


《はい。どうやら、捕らわれてるのはゴブリン族の雌の様です。》


凛は安堵の表情でそう言った後、皆を見渡しながらそう伝えた。

名前が挙がったエルマとイルマは嬉しかったのか、少し照れくさそうにしている。


しかし美羽が右手で挙手をしながらそう言った事で、凛は不思議に思った様だ。

凛は少し上を向いてナビにそう尋ねる。


そしてナビは凛からの問い掛けに対し、そう答えたのだった。

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