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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画編
123/594

120話

「お願いします!私にも、私にも名前を下さい!!」


「んーでもなぁ…、君はちょっと自由過ぎるんだよね。さっきも皆で浴室へと向かっていたのに、誰からも声を掛けられないって…相当だと思うよ?」


「!? それで…周りに誰も…。(ぐすっ)私、行動を改めまずがら"ぁ"…。(ずずっ)どうかお願いします…。」


「…本当に改められる?かつて部下だった者やライバルと思っていた者が自分よりも上の立場になっちゃったんだよ?それに反発したり「絶対にしませんから!!」…分かった、その言葉を信じるよ。けど、周りにいる人達の貴女に対しての評価は相当悪いと思うんだ。暫くしても改善されていないって周りから判断されたら、その時は悪いけどここを出て行って貰う事になると思う。それでも良い?」


「………。正直、周りに誰もいない事に気が付いた時はショックだったわ。けど、それは今迄自分が行っていた事に対する周りの結果よね…。かなり今更だけど、ようやく気が付いた…。」


ドライアド改め翠、ベラドンナ改め金花、銀花がテーブルに上半身を乗せる形で気を失ったので、凛はこう言う事もあろうかとダイニングの横に新たに設けた休憩室の様な部屋へと運んで休ませようとした。

しかしそのタイミングでようやく我に返った元シーサーペント代表の女性が、わたわたとしながら凛の元へと向かい土下座をして名付けを頼み込んだ。

どうやら女性はアーサーとトルテから出遅れたと思い、このままでは自分の立場が危ういと感じた様だ。




しかし凛は名付けを躊躇ためらい、誰からも声を掛けられずにポツンと残された事を女性に伝える。

女性は相当ショックで悲しかったのか涙や鼻水を流しながら話し、鼻をすすった後に再度土下座を行い頼み込んだ。


凛は恐らくこのまま名付けたとしてもまた自分勝手に振る舞う様に戻るだけで、領地にいる者達にとってダメな気がしたのでアーサーとトルテの事を話題に出してみた。

すると女性は叫びながら否定し、ガバッと上体を起こして真面目な顔で凛を見る。


凛は少し辛そうな表情をしながらも、女性に最悪出て行って貰う事を伝える。

凛としては勿論出て行って欲しくないのだが、目の前の女性がいる事で皆のやる気が減ってしまったり、不満が溜まる事を避ける為に敢えてその様な言い方をした。


女性は今迄自分が好き勝手に振る舞っていた事で、周りが自分に対して関心を持たれなくなりつつある事を今になって気付いた様だ。

女性はその事が悲しくなったのかうつむき、太ももの上に乗せた手をぎゅっと握りながら声を震わせながらポロポロと涙を流し、凛ではなく自分へと向けてそう言った。




「…ごめんなさい、やっぱり良いわ。皆に会わせる顔がないから、私ここを出て「大丈夫だよ。」…え?あっ…。」


「このまま皆と分かり合えないまま出て行ったら、きっと後悔するよ。それに今からでも遅くない。今の君…いや、今の『なぎさ』なら皆と分かり合う事が出来る。だから渚、逃げないで皆と向き合って欲しい。」


「!? 私…私、頑…張……。」


女性は俯いたままそう言った所へ凛が女性の頭にそっと左手を乗せ、女性へ向けて説得を行いながら名付けを行う。

女性は驚いて顔を上げた後、最後迄言い終える事無く気を失い前方へと倒れる。


「…おっと。渚も翠達の所へ運んで…って、皆戻って来たね。」


「お、凛殿。その者にも名前を与えたのか?」


「はい。どうやら今迄の行いを振り返り、それで皆に悪い事をしたと反省した様です。しかし皆に会わせる顔が無いと言ってここを出ようとしたので、引き留めて名前を与え休んで貰いました。アーサー、トルテ、それに皆さん、この子…渚も反省している様ですので、面倒かも知れませんが構ってあげて下さいね?」


「その子…渚は構うと直ぐに調子に乗るので、段々面倒になって行きました。最近は構う事無く放置していたのですが、まさか思い詰めるとは思いませんでしたわ…。」


「全くです。今迄湖でもこちらでも好き勝手にしといて今更か、と同族として怒鳴りたくはあります。しかしやはり同族だからか出て行かれるとこたえますね。凛様、渚を引き留めて頂きありがとうございます。」


『ありがとうございます。』


そこを凛が支え、抱き抱える様にした所で皆が浴室から出て来てこちらへと戻って来た。

ガイウスは凛が気絶している女性を抱き抱えているのを見てそう言った。


凛は元シーサーペント代表の女性…渚を見ながらそう言った後、アーサー、トルテ、それ以外の皆を見回す様にして伝える。

トルテがそう言った後にアーサーがそれを引き継ぐ様にして言った後、凛に向かってお辞儀をする。

他のシーサーペント達もアーサーに続いてお辞儀をするのだった。




その後渚をダイニング横の休憩室に休ませて各々の仕事へと向かう。

その際に凛は雫へと渚を預かる様に伝えると、雫は溜め息をつく。

しかしそこまで嫌では無い様で、その後ふふっと軽く笑ってから分かった…とだけ言った。


それと翠、金花、銀花、渚の起きる時間にばらつきがあるかも知れないので、凛はナビに夕食の前に揃って起きる様にと調整を頼んだ。


それまでの間、凛は自室で作業を行っていた。

美羽、楓、紅葉、それと紅葉にべったりのクロエの4人はサルーンにて、既に撤去してある元々あった外壁の後片付けや整地を行っていた。

そんな中、ライアンが早速サルーンに来てしまい一悶着あったそうだ。


一通り外壁があった所の整地を終えた後美羽、楓、紅葉、クロエの4人は、サルーンの北側にあるフーリガンの人達に用意した家のチェックを行っていた。

凛と美羽が用意した家は既にあるサルーンの造りと異なり、少しだけ現代風になっている為美羽と楓、紅葉とクロエに分かれ、住んでる人達に住んでみた感想や何か要望がないか等を聞いて回っていた。


そこへ王都から馬を飛ばして来たのか、まだそこまで日が経っていないのに早速ライアンがサルーンへとやって来た。

どうやら北門から来た様で、サルーンに入って少しした所で聞き取りをしている美羽と楓に気が付いた様だ。


「そこの可愛らしいお嬢さん方、良ければ僕と付き合っては貰えないでしょうか?」


「ボク達の事?んー、ありがたい申し出だけど、ボクはマスターのお嫁さんになる予定だからダメかなー。」


「オウッ!…マスター?」


ライアンは馬から降りて美羽達の元へと行き、ひざまずきながら口説いた。

しかし美羽にあっさり断られた事でライアンは叫びながらのけるのだが、マスターと言う単語が聞き慣れないのか元の跪いた状態に戻してから口に出してしまう。




「…凛様の事ですよ、ライアン様。もう王都からこちらにいらしたのですね…。」


「えっ、紅葉ちゃん!?…と言う事はこちらのお嬢さんも?」


「ええ、私も勿論凛君が好きですのでお断りさせて頂きます…。」


「ノオゥッ!!」


「(クスクス)ライアンさんって面白い人なんだね♪」


「!! (…かっ、可愛い!さっき凛殿の嫁になると言っていたけど、今の様子からしてひょっとしたら押したら僕にもチャンスがあるんじゃないか?)」


「………。((じー))」


すると少し遠目から様子を見ていた紅葉が近付いてライアンへ教えると、ライアンはまさか本当にサルーンに紅葉がいると思わなかったのか、驚きのあまり立ち上がってしまう。

その後恐る恐る楓の方向を指差しながら尋ねる。


楓は明確に拒絶と言う表情になりながら答えると、ライアンは両手を後頭部で組みながら両膝をついて再び叫びながらのけ反るのだった。


その様子を見た美羽はライアンを面白い人だと思ったのかクスクスと笑っていたのだが、楓も紅葉達同様にライアンを要警戒人物だと判断した様だ。


ライアンは美羽が笑っている様子を見て見惚みとれていたのだが、自分に少し脈があると勘違いをして少し押せば美羽が自分の彼女になってくれるのでは、と思った様だ。

だがその事を察した紅葉は楓とクロエに目配せをし、これ以上ライアンが美羽に惚れ込んだり隙を与えない様に楓、紅葉、クロエの3人で美羽のガードをしながら適当にライアンの相手をしつつチェックを続ける。


昼前にチェックが終わったので屋敷に帰って昼食を取ろうと移動を開始すると、ライアンが何事も無い様に直ぐ後ろを付いて来た。

先頭を歩いている紅葉が歩くのを一旦止め、後ろにいるライアンへ昼食を食べに戻るので付いて来ない様にと伝えるが、ライアンは(主に美羽と)親睦を深める為に皆で一緒に食べようと言って話を聞こうとしなかった。


これに紅葉は話が進まない上に時間だけ過ぎてしまうと言う悪循環になると判断し、紅葉は自身の右手で美羽の左手を握りながら急いで商店へと向かい、楓とクロエ、そしてライアンも続いて行った。

そして店の前でライアンに関係者以外立ち入り禁止の言葉を突き付けてへと中へと逃げ込み、疲れた顔をしながら店の中にあるポータルをくぐって屋敷へと帰って来た。

そして紅葉はポータルで移動する前にトーマスへ、今外にいる人は相手をせずそのまま放っておいて欲しい事、向こうが何かしらで実力行使に出たら直ぐに呼ぶ様にと言う事を伝えた。




その後トーマスやニーナから変な人が店の前でうろうろしていると念話で連絡があったので、凛が対応しようとライアンの元へ向かおうとしたが、楓、紅葉、クロエの3人からライアンに構わず放っておいて作業を続けて欲しいと言われた。

凛は微妙に納得していなかったが3人が少し必死になりながら伝えたので、昼食後再び作業に戻る事にした。


「紅葉ちゃん、どうしてさっきは急に手を掴んで早歩きする様にしたの?」


「美羽様、先程は申し訳ありませんでした。ライアン様が美羽様の事を諦めていない上に話を聞こうとしていなかった様でしたので、一旦離した方が宜しいかと判断致しまして…。」


「そうなんだ?ボク、気付かなかったよ…、ごめんね嫌な役回りをさせてしまって。」


「いえ、お気になさらず。」


美羽が紅葉に尋ね、紅葉が理由を話すと美羽は紅葉に気を遣わせてしまった事で少しだけ落ち込んでしまった。

しかし紅葉としては凛の次に美羽の事が大事だと思っているので、当然の事をしたまでと言った感じで美羽へと返事を行った。


因みにライアンはそのまま行動を起こす事は無く、夕方まで店の前でうろうろするだけだった様だ。




「皆!…あの、私、今迄好き勝手にやってごめんなさい!!こんな私だけど、嫌いにならないで…下さい。」


夕食の前、ダイニングには既に皆が集まり賑わっていた。


そんな中、翠、金花、銀花、渚の4人は同時に目を覚ました。4人は寝起きな為か少しぼーっとしていたが、真っ先に渚がはっと我に返り休憩室からダイニングへと移動した。

そして渚が叫んだ事で、一斉にダイニングが静まり少しの間沈黙が流れる。


渚は両手を前にやりながら謝った後、皆へ向かって思い切り頭を下げた。

頭を上げた後、耐えられなくなったのか渚は顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら皆へそう言った。




「渚、良く言えたね。」


「その通りだ。渚が最初からそれだけ素直だったら、俺もそこまで苦労しなかったんだがな…。」


「まあまあ。でも私はどのみちアーサーが代表で良いと思うわよ?少なくともそのまま代表でいるよりも、自由に動かして戦わせた方が渚本人にとっても良いだろうしね。」


『(こくこく)』


「え………?」


凛が渚へとねぎらう様にして言うと、アーサーが同意しながらも少し愚痴った所をトルテがフォローした。

他のシーサーペント達もアーサーとトルテの意見に同意しているのかうなずいていた。

他の皆も似た様な感じなのか頷いている者や苦笑いを浮かべている者がほとんどだった。


渚は皆が自分に対して愛想を尽かしていなかった事にどう表現して良いのか分からず、少し困った表情になっていた。


「そんな訳で渚、君が思っている程深刻ではなかったみたいだね。だけどまた前みたいに戻る様なら…。」


「自分のせいだったとは言えあんな辛い思いをするのはもうりよ…。けど、皆ありがとう!」


凛が真面目な顔をしながら渚へ言うと渚は項垂れながら言った後、笑顔で周りを見回して再び深く頭を下げるのだった。




その後ずっと渚の後ろで大人しくしていた翠と金花、銀花の紹介を凛が行う。

翠は名付けにより銀級のドライアドから金級のハイ・ドライアドへと進化し、金花と銀花は銅級のベラドンナから銀級のマンドラゴラに進化した事をそれぞれ皆へ伝える。


そして凛は翠、金花、銀花の3人を楓の元に、渚を雫の元に付いて貰う事を皆へ伝えた後、少しだけ遅くなってしまった夕食を始める事にした。


夕食後に凛は皆へ、翠達は作物の質を少し上げる事が可能らしいと伝える。

ここにいる者のほとんどは果樹園に実っている果物がより甘くなると思い、

ルルは同じく果樹園に植えたワイン用の品種の葡萄ぶどうがより芳醇ほうじゅんになって美味しくなるんだろうなと思い、夕食が済んだばかりなのにごくり、と皆が喉を鳴らすのだった。

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