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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
オーク&ゴブリン編
11/594

10話

オークとは二足歩行が行える様になった豚の魔物の事で、ほとんどのオークは理性がなく、本能のおもむくままに行動しているとされる。

そしてオークは太った見た目をしてはいるが、内側はぶ厚い筋肉で構成されており、見た目に反して素早い所がある。

その為か、それなりに熟練である銅級冒険者からでないと倒せないと言われる程に強い。


しかし強いだけあって肉の部分は美味く、高級食材として高い値段で取引されているのもあってか、良くも悪くも見付け次第すぐに討伐される事が推奨されている。




「はぁっ、はぁっ…。(意識が…。あたし達、ここで終わっちゃうのかな。けど、せめてイルマちゃんだけでも逃がさないと…。)」


「ブゥッ!」


「あ…。」


「危ないっ!!」


「ブヒィーッ!?」


凛が急いで目的地に辿り着くと、そこでは少し先で身長180センチ位のオークが持っている棍棒で天使の少女に攻撃しようとして構えている所だった。

少女はオークに対して武器を構えてはいるが、意識が朦朧(もうろう)として来たのもあってか、肩で息をしながらその様な事を考えていた。


そしてオークの1体が掛け声と共に、持っている棍棒を少女へ向けて振りかぶる。

しかし少女はそれまで攻撃を防いでいた影響で疲労困憊となり、反応が遅れただけでなく上手く体を動かせずにいる様だ。


凛はそう言ってそれまで走ってきた勢いから更に速度を増し、オークの左側へ向けて体当たりを行った。

それはまるで速度を出したトラックにでも跳ねられたかの様に、オークは悲鳴を上げながらかなりの勢いで斜め上へと吹き飛ばされ、近くにあった別な木の高さ5メートルの所にグシャッと叩きつけられてしまう。




「うぅ…今の体当たりでこちらにダメージらしいものはなかったけど、固くて重い物にでもぶつかった様な衝撃で少しくらくらするな…。もう少し強めに身体強化をしておけば良かったよ…。ナビ、オークの強さってどれ位なのかな?」


《はい。一般的なオーク族は銅級の強さとされております。オーク族は厚い皮下脂肪の下に引き締まった筋肉がある為、重い上に物理攻撃が効きにくくなっております。尚、近くのオーク族の集落にはオークの派生であるオークアーチャーやオークメイジ、オークの上位個体であるオークジェネラル、それらを統括するオークキングがいる様です。マスターがオーク族を弾いた事による叫びで、オークキングが気付いた模様。オークジェネラル以下の20体の配下を連れ、こちらへ向かって来ております。》


「あ~…やっぱりオークって重いんだ。それに、今のオークの悲鳴でオークキングに気付かれちゃったか…。実際に戦うのは初めてだから、人型の魔物に対する心構えとかしておきたかったんだけどなぁ…。けどそうも言ってられないか。…そこの君、怪我は大丈夫?それと僕とぶつかったオークはどこに行ったのかな?」


凛は体当たりの反動で少しふらふらしながらも、周りの様子を伺いながらナビに尋ねた。

凛はナビの返答を受けて苦笑いの表情となるが、直ぐに真面目な表情となって少女へ尋ねる。


オーク2体と少女は、かなりの速度で人間が走ってきたと思ったら体当たりでオークを弾き、激しい勢いで木にぶつけるのを目の当たりにしてしまう。

その為か、凛に尋ねられても驚きのあまり硬直したままだったりする。




「…はっ!?はいっ!助けて頂きありがとうございます!あたしは大丈夫ですが、その…体当たりをしたオークはあっちに…。」


「あ、あれか。けど、もしかして…。」


「多分…死んじゃってるかと…。」


「ですよねー…。」


少女は凛に話し掛けられた事で体をビクッと強張らせて返事を行った後、話の途中で女の子はオークが凛によって弾き飛ばされたであろう方向を向く。

凛も少女に釣られて視線を動かすと、そこには木にめり込んで動かないオークがいた。


凛が表情を引きらせながらそう言うと、女の子も何とも言えない表情で答える。

凛はそう言った後に右手で目を覆い、少しの間天を仰いだ。


「まさかこんな形で、初めて命を奪う事になるとは思わなかったよ。けど、普通に倒すよりもこの方がかえって良かったのかも知れないな。…よし!オークキング達がもうすぐ来る事だし、その前に他のオーク2体も倒してしまおう!」


「「…!」」


凛は初めて命を奪った事で心身共に複雑になったのか、そう独りちる。

しかし凛は少しして立ち直ったのか、そう言って残ったオーク2体の方を向く。

オーク達は凛がこちらを向いた事で恐れをなしたのか、ビクッと体を強張らせてしまう。

そしてオーク達は凛が無限収納から刀を出してから斬り伏せられるまで、驚きと恐怖で最期まで動けずにいた。




「ふう…。」


「(はわわっ。この子、良く見たら物凄く可愛いんだけどー!?)…危ない所を助けて頂き、ありがとうございます!…あの、顔色が優れないみたいですが…大丈夫ですか?」


「あー、ごめんね。魔物とは言え、命を奪ったのが初めてだったから、ちょっと思う所があって…。けど、もう大丈夫だよ。」


凛はオークの討伐を終え、刀を鞘に戻した後にそう呟いた。

少女はそう思いながらも佇まいを正し、お礼を言った後に勢い良くお辞儀をする。

しかし少々が再び顔を上げても凛の顔色が悪かった為、心配になったのか申し訳なさそうな表情で凛へ尋ねる。


凛は少々に尋ねられるまで顔色を悪くしていたが、少女に心配させるのは悪いと思った様だ。

刀を握っていない右手をぐっと握り、立ち直った風に見せて答える。


「僕の名前は凛。君達がオークに襲われてるのが分かったから、助けに来たんだよ。取り敢えず事情を聞きたい所なんだけど…身体中のあちこちに傷を負ってるみたいだね。話をしやすくする為にも、まずは回復しようか…ハイヒール。」


「(えっ、ハイヒール!?この人強いだけじゃなく、光に適性が…それも上級以上はあるんだ!少し前までのあたしよりも上じゃない。)…回復ありがとうございます、あたしはエルマって言います。凛様と仰るのですね。あたしはあそこの木の根元で倒れているイルマって子と旅をしているんですけど、あの木の根元で休んでいたらいきなりオークに襲われたんですよ!」


凛は軽く自分の説明を終えた後に光系上級回復魔法ハイヒールを使い、少女ことエルマの全身至る所にあった傷を回復する。


エルマは()()初級までしか光属性魔法を扱えない為、凛から上級回復魔法であるハイヒールを受けて内心驚いていた。

そして凛と話をし始めるのだが、話している内に怒りがこみ上げて来たのか内側が熱くなってきた様だ。


リルアースでは、闇と無属性以外の炎・水・風・土・光の5属性に回復魔法がある。

中級回復魔法ヒールは擦り傷や軽度の斬り傷を回復し、上級回復魔法ハイヒールは斬り傷や骨折を回復出来る。

そして超級回復魔法エクストラヒールは傷全般に加え、内臓の損傷や部位欠損等の回復までを行う事が出来る。


しかしエクストラヒールを扱えるのは光だけとなっており、炎・水・風・土の4属性はハイヒールまでしか扱う事が出来ない。

凛はエルマの傷の具合から、ヒールではなく念の為にハイヒールで回復を行った様だ。




「あたしは天使でイルマちゃんは悪魔ですので、見ての通り背中に翼が生えています。それで翼を使って飛んで逃げようとしたんですけど、オーク達が落ちてる石を使って、空にいるあたし達へ向けて投げて来たんですよ!あたし達は飛んで来た石を避けながら逃げていたのですが、その内の1つがイルマちゃんの頭に当たっちゃって…。当たり所が少し悪かったからか気を失っちゃったみたいで、イルマちゃんが落ち始めてしまったんですよ。」


「…それは危なかったね。」


「そうなんですよ。そこをあたしが気付いて体を支えながら降りましたので、どうにかイルマちゃんが大事に至らずに済みました。それからは襲って来たオーク達からイルマちゃんを守りながら戦っていたのですが、そろそろあたしも持っている剣や盾も限界だったんですよ…。本当、助かりました!」


「…だね、間に合って良かったよ。あのままだったら、多分エルマさんはオーク達に気絶させられてたもんね…。」


「はい…。そしてあたし達は2人共、オーク達に乱暴されてたと思います…。」


エルマは未だに起きないイルマを心配そうに見つめながら言った後、そう言って再び凛に深くお辞儀をする。

どうやらエルマ自身だけではなく、武器と盾もぼろぼろだった様だ。


凛は困った表情で言うとエルマは顔を青ざめさせ、体を震わせながらそう答えた。




「イルマさんだったね、この子を起こし…。」


「マスターっ!」


「皆お疲れ様。どうにかギリギリ助ける事が出来たよ。あっちで倒れているのが悪魔族のイルマさんで、こちらが天使族のエルマさんだよ。」


「初めまして、ボクは美羽って言います!」


「あたしはエルマです!」


凛がエルマから倒れているイルマの方を向き、話をしている所で美羽達が追い付いた様だ。

美羽が凛の事を呼びながら近付き、凛は美羽達へ向けて労った後にエルマ達の紹介を行う。

美羽はエルマの前に立って自己紹介を行い、エルマも美羽に釣られて自己紹介を行うのだが、2人共勢い良くお辞儀をしていた。


「(2人共元気だなー。)皆でゆっくり自己紹介したい所なんだけど、そろそろオークキング達がこっちに来る頃なんだ。誰か、倒れているイルマさんに回復をお願い。その間に僕はアクティベーション(有効化)でエルマさんの剣と盾を作るね。」


「回復なら私が…アースハイヒール。」


「今回は時間がないからさ、剣と盾は間に合わせになっちゃうんだ。ごめんね…。」


「いえっ、わざわざありがとうございます!(今、何もない所から剣と盾を出したけど、どうやって出したんだろう…?)」


「これで大丈夫だと思います。」


凛は内心そう思いながらも美羽達をぐるっと見回した後、エルマの方を向いてそう言った。

楓が杖を両手で斜めに持った状態でそう言い、倒れているイルマの元へと向かう。

そして楓はイルマのいる所でしゃがみ、杖の先端を血が出ている頭の近くへ持って行く。


そして楓が土系上級回復魔法アースハイヒールを唱えると、杖の先から直径10センチ位の光が現れ、イルマの頭にある傷の周辺を包み込んで回復を始める。

凛は楓が回復をしている間にエルマへそう言いながら、鈍色にびいろの剣と盾をアクティベーションで用意した物を渡していた。

エルマは笑顔で凛から剣と盾を受け取ったものの、凛がどうやって用意したのか分からなかった為、内心不思議に思っていたりする。


やがて楓がイルマの回復を始めてから20秒程経つと、杖の先端の光が収まっていった。

回復を終えた楓は杖をイルマの頭から離し、立ち上がった後にそう言う。




「何とか間に合ったね…。」


凛はイルマの回復まで出来た為か、安堵した様な表情でそう言った後に後ろを振り向く。


そこにはどどどど…と足音を立て、オークの集団が森の中から凛達から500メートル程先にまで近付いていた。


その集団は身長180センチ前後で棍棒や切れ味の悪そうなぼろぼろの剣を持っているオークや、

オークと同じ様な姿でローブを羽織って杖を持ったオークメイジ、

同じく弓と矢筒を携えたオークアーチャーがいた。


更に身長2メートル程の重そうな全身鎧プレートアーマー姿のオークジェネラルが2体おり、一方は身長と同じ位の長さの槍を、もう一方は全長1メートル程のブロードソードと80センチ程の丸盾を持っていた。


そしてオークジェネラルより更に大きく、先頭を走るオークキングは身長2メートル50センチ程もあった。

オークキングはオークジェネラルの鎧よりも質の良さそうな軽装を纏っており、武器は刀身だけでも凛の身長はある肉厚の黒い大剣を右手に持っていた。


どうやら先頭を走るオークキングのすぐ後ろに、2体のオークジェネラルが付いており、そのオークジェネラル達の後ろにオーク達が付いて来る、と言った感じの集団の様だ。


「よし、皆行くよ!エルマさんはそこでイルマさんを守っててね!火燐、雫、翡翠、楓はオーク達を、美羽は片方のオークジェネラルをお願い。余裕の出来た方が、もう片方のオークジェネラルをって事で頼むね。僕は…先頭にいるオークキングの相手をさせて貰うよ!」


凛はそう言って、オークキングへ向け駆け出したのだった。

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