102話
前話のあらすじ
紅葉達「実績のない亜人だから王都に入れなかった…。(しょぼん)」
ライアン「やべっ、あの子超可愛いんですけど!?(トゥンク)」
紅葉「………?(何故か背筋が寒く)」
大体合ってる←ぇ
ライアンは右手で髪をかきあげながらキメ顔でそう言っていたのだが、紅葉達一行はライアンに全く関心が向かなかった様だ。
何事もなかったかの様にしてライアンの前を素通りした為、周りからはちょっとした笑いが起きていたりする。
しかしオズワルドと商人の2人は、ライアンがアウドニア王国唯一の魔銀級冒険者である事を知っている(ただし、チャラい性格である事は知らなかった様だ)為、ライアンの前を普通に素通りして行った紅葉達を見て驚いた様子となる。
その後、2人はこのままでは置いていかれる事に気付いたのか、慌てて紅葉達を追って行った。
「ちょ、ちょっと君!僕の事を無視しないでくれるかな!?」
「…私達に何か御用でしょうか?」
「途中から君達の事を見させて貰っていたけど、王都に用事があるのにも関わらず、中へ入る事が出来なかったのだろう?」
「今の所は仰る通りですね。ですが、しばらく待てば入れると思いますので、どうぞ私達の事はお気遣いなく。」
ライアンはまさか自分の事を無視して進むとは思っていなかったらしく、慌てた様子で紅葉の前に移動し、再度紅葉に対してだけ声を掛けた。
紅葉はこれに少しだけ面倒臭そうな表情となるのだがすぐに軽く笑顔を浮かべ、ライアンに返事を返す。
その後ライアンは得意げな様子でふふんと言いながら紅葉に尋ねると、紅葉は笑顔の仮面を貼り付けたまま返事を行い、その後軽く頭を下げた。
「………。」
尚、月夜は少しイライラした様子でライアンを睨んでいるのだが、ライアンは完全に紅葉の事ををロックオンしており、月夜の視線に全く気付いていない様だ。
「ライアン様、僭越ながらこちらの方々は…。」
「…あのさ、僕はこちらの女性と話がしたいんだ。男の君は黙っててくれないかな?」
オズワルドがライアンへと説明を行おうとするのだが、ライアンは男なんぞに興味はないと言わんばかりに不機嫌な様子となり、オズワルドを睨み付けながらそう言った。
「…いえ、そう言う訳には参りません。クロエ様を除いたこちらの方々は、貴方様と同格、或いはそれ以上の強さになると思われます。ですので、礼を持って接して頂きたく…。」
「は?彼女『達』が僕と同じ位か、それ以上に強いだって?魔銀級冒険者であるこの僕と?」
「ええ。信じ難いとは思いますが、事実でございます。」
これにオズワルドは少し怯んだ様子を見せるのだが、毎朝紅葉達が一生懸命に訓練を行っている様子を見ており、初めて来る紅葉達の代わりに自分が防波堤としての役目を果たさねばと思った様だ。
気を強く持ち、ライアンの視線を遮る様にして紅葉達の説明を行った。
その後、ライアンがオズワルドに尋ねるのだが、オズワルドが紅葉達もライアンと同じ位に強いと断定した様子で言った為、周りにいた大勢の人達がざわつき始めるのだが、ライアンはオズワルドの言った言葉が信じられなかった様だ。
一通り紅葉達を見た後、(月夜程ではないが)こちらの事を睨んでいる暁へと視線を移した。
因みに、ライアンが一通り紅葉達の事を見た際、未だにライアンの事をギロッと睨んでいる月夜と目が合ったのだが、その勢いに一瞬だけたじろいだ様子を見せる。
しかしライアンはそれをなかった事にしたかったのか、こほんと咳払いをしてから佇まいを正し、なるべく月夜の事を見ない様にしていた。
「…良いだろう。本当に僕と同じ位強いのか、そこの君で試してあげるよ。」
「そうか…だが断る。」
「なっ!?…君達、いい加減にしてくれないかな?流石の僕も我慢の限界だよ。」
「我慢も何も、勝手にそちらから声を掛けて来たんじゃないか。それでそちらの都合をこちらに押し付け、断られたら癇癪を起こす。…まるで子供だな。」
「貴様っ!!」
ライアンは自分の方が格上だと思っており、オズワルドが言っていた事はでたらめだろうと判断していた。
その為、軽く暁を相手して自分が有利だと言う事を見せれば、目の前にいる女性がこちらに靡くと考える。
しかしライアンは軽い調子でそう言うも、格下だと思っている相手から簡単にあしらわれた事で頭に来た様だ。
ライアンは左の腰に下げていた細剣を右手で抜いた後、周りに大勢の人達がいるのをお構いなしとばかりに、暁へ向けて一直線に突っ込んで行くのだった。




