99話
午後3時になり、一通り終わったのか店内に客が誰もいなくなったので、商店と喫茶店の営業は終了とした。
店の外にはまた何をやっているのか興味を持っている人達が結構いたのだが、凛が今日は従業員の練習に、限定された人達にだけ開けただけでもう終わった事を伝える。
それを聞いた人達は残念そうにしながら帰って行った。
その後片付けをしてニーナ達従業員を店の中にあるポータルで屋敷へと返した。
凛は美羽以外の応援に来てくれた4人…特に翡翠を労う。
その後店の外側から施錠してから美羽と2人で酒場へと向かった。
「「マスター。お疲れ様です。」」
「うん、ガンマ、デルタもお疲れ様。マスター、この子達はどうですか?」
「凄く助かってるよ。どちらも酒だけじゃ無く、酒に合うつまみを用意出来るしな。少し控え目だが接客もそつなくこなすし、動きも早いから俺達の負担が大分軽くなったよ。凛君、ありがとうね。」
「それは良かったです。明日面接を行おうと思うのですが大丈夫そうですか?不安でしたらベータをここに残しますよ。」
「そうか…それなら俺が行かないとな。」
凛と美羽が酒場へ行くとガンマとデルタが、揃って凛達に向け軽く会釈しながら挨拶する。
凛は2体に挨拶を返して酒場のマスターに明日面接が出来るかを尋ね、マスターは了承する。
ガンマとデルタの2体は、どちらもお酒やノンアルコール飲料、ソフトドリンクだけでなく枝豆、冷奴、少し塩分を少な目にしたチーズ等の冷たいおつまみを用意出来る様にしている。
冷たいおつまみはマスターが加熱したおつまみを用意する迄の繋ぎだったり、少しでも客の健康を配慮した為だ。
その後凛は軽く酒場のマスター、ガンマ、デルタと話した凛は冒険者ギルドを出る。
酒場のマスターは凛とのやり取りが終わった後、ウェイトレスの1人に明日面接で少しの間抜けるから宜しくと伝えると、そのウェイトレスはその分忙しくなると思いがくっと項垂れるのだった。
凛達は冒険者ギルドを出た後に街の北門を出て外へと出る。
凛は美羽と協力して2時間程かけてサルーンから1キロ程先迄をぐるっと囲む様にして、高さ10メートル程の土魔法で出来た外壁を作った。
因みにだが、サルーンは元々3ヵ所の門がある。
王都方面へと繋がる北門、
平原と死滅の森への対処(凛達が来る迄は心許なかったが…)に充てた南門、
王都方面や平原、それと商業国家ミョルソド方面へと繋がっている西門があるのだが、東門は無い。
東門が無いのはサルーンの割と直ぐ近くにダライド帝国との国境線があるからだ。
帝国は今でも領土を広げようと国境付近の街や村等にちょっかいを出している。
サルーンでもわざわざ帝国からの侵略をしやすくする為の侵入経路を用意する必要は無いと判断され、東門は設けなかった。
凛は作った外壁の北、南、西にサルーンの物と同じ様なデザインで門を設けた。
今回凛達が外壁を設けたのはフーリガンから逃げて来た人達の家を建てる為でもあったが、今後サルーンは発展すると見越したガイウスに街を拡げるので外壁を新たに設置して欲しいと頼まれていたからである。
ガイウスからの依頼はまだ余裕があったので後からでも良かったのだが、フーリガンの人達の事を考えて急遽行う事にした。
凛は外壁を設けた事をガイウスに報告し、ガイウスは直ぐに門番を外側の外壁へ向かう様にと指示を出す。
門番達はガイウスからの指示で新たな門を守る事になったのだが、新しい門の近くに何も建物が無かった為か居心地が悪く感じ、そわそわしながら仕事をするのだった。
凛達はガイウスに報告した後、元々あった北門を出て直ぐの所にフーリガンの人達用にと言う事で、簡単な造りではあるが3、4人で住むには充分な家を土魔法で次々に建てていく。
凛達は1時間程で一定の間隔を空けて凛は20軒、美羽は12軒の家を建てた。
そして冒険者ギルドにいるフーリガンの人達の元へ向かい、彼らを新しい家へと案内する。
彼らはフーリガンから逃げて来たものの、負い目を感じているのか客として喫茶店や商店にいる時以外は俯いている事が多かった。
「こちらがこれから貴方達が暮らす、新しい家になります。」
しかし凛が家々を右手で指し示しながらそう言うと、彼らはその家を見てこれから頑張ろうと思える様になったのか、やる気になった者が出て来た。
「明日街の中心辺りに皆で風呂に入る公衆浴場を用意しますので、今日の所はすみませんが清浄で我慢して下さいね。」
『ありがとうございます。』
凛はそう言った後1人1人に清浄を掛けて行き、美羽も手伝う。
人々は清浄を掛けて貰った後、凛と美羽にお礼を言う。
一通り清浄を掛け終わり、凛が3、4人で固まって好きな家を選ぶ様に伝える。
そして各自が家に入るのを見届けた後、凛と美羽はそれぞれの家に赴いて簡単な食事を提供した。
その後、2人は使い捨てポータルを使い屋敷へと帰るのだった。