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亜人の王  作者: ヒロティー
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第3話 決意の日

俺が照れながら話していると、一番年老いた長老が話しかけてきた。

「英様とお呼びしてもかまいませんかな?」

様付けで呼ばれたので、俺は慌てて「様はいいですよ!俺は若輩者ですから」

と謙遜した。

「おお!なんと謙虚な!私どもを助けていただきながら、威張らないとはなんと心の広い。ではせめて英殿と呼ばせてください」

長老はえらく感動しながら迫ってきたので思わず「はい」と答えた。

「おお!ありがとうございます!それでなのですが、アリサから話を聞くところによるとまだ異世界から来たばかりだというのは本当でしょうか?」

「はい!そうです!さっきというか30分前くらいに龍の石像に飲み込まれてこの世界に来たばかりです」

長老は30分という言葉はわからなかったようだが、どうにかおれがこの世界に来たばかりだというのはわかってくれたようであった。

「この世界に来たばかりだということですので、私から簡単にお話しましょう」

この世界のことは何一つ知らない無知なのでぜひ聞いてみることにした。

「よろしくお願いいたします」

「ではまずこの世界の成り立ちからお話ししましょう。簡単に言えば、この世界は竜神様がお造りになった世界で正式名はユグドラシルと呼ばれています。竜神様は世界をお造りになった後、最初に人間、二番目にエルフ、三番目にドワーフ、四番目に私たち獣人、いわゆる亜人をお造りになりました。人間とエルフには魔法を、ドワーフには建築や高度な

工芸技能を持っており、亜人には高い身体能力を与えてくださいました。長く平和を保っていたこの世界でした。しかし、人間の王とエルフの王が魔法を使えるこの二つの種族こそ至高の種族だと言い出し、ドワーフと亜人である獣人を差別し始めたのです。ドワーフは工芸品や建築技術があるのでまだ身分を保証されていますが、亜人は次々と捕まえられ、重労働を毎日させられ、まるで奴隷のような生活をさせられてきました」

俺と同じ人間がそのようなことをしたと聞き、俺は非常にショックを受けた。

「なぜ亜人たちは立ち上がらなかったんだ?」

当然とも言える異世界人の発言に亜人たちはため息をついて答えてくれた。

「立ち上がり、抗おうとする亜人たちもいました。しかし、身体能力が人間やエルフより高いからと言って、魔法には抗えないほどの力の差があるのです」

この世界に来て、さっきの魔法騎士団の下っ端のファイアーボールのような魔法をみたが、彼らが言うには、そんなのは序の口で上位の人間とエルフが使う魔法はたった一人でも想像絶する威力だと言う。

続けて長老が言う。

「今までは重労働をしても多少の賃金が支払われてきたので我慢する者も多かったのですが、エルフの王が人間の王と連盟で悪魔のような法律とも呼べる法律を制定したのです」

「悪魔のような法律!?」

「そうです。その悪魔のような法律とは亜人つまり、獣人には人権がなく、誰でも自由に奴隷として捕まえてもよく、どんな嫌なことでも従わせることのできる首輪を亜人のみ付けさせることができるという法律です」

俺はその言葉を聞き絶句した。

普通の、しかも平和な日本で暮らしてきた俺にとって自分の耳を疑いたくなるような法律であった。

一瞬、嘘かと思ったが先ほど俺が助けなければ、彼らはどこぞの魔法騎士団たちに捕らわれ死ぬまで重労働をさせられて死んでいったであろう。

なんという世界に来てしまったんだろう。

俺は龍の祠に行ったことを酷く後悔した。

しかし、龍の神はどうして俺に獣に変身できる能力を与えたのだろうか。

亜人を捕まえるため!?

だからこの世界に来て一人逃げ延びたアリサと出会わせた!?

否、違う!

きっと龍の神は俺に人間とエルフの行き過ぎたこの現状を!世界を!変えて欲しかったに違いない!

日本ではただの高校生であった俺こと結城英ゆうき すぐるはこの時、自分にはこの世界に来たのは運命に違いない!

なぜかはわからないけれど、自然とそう思った。

長老はまだ年端もいかない人間の少年がそれを聞いてどんな反応をするか正直怖かった。

自分たちを軽蔑し、人間側につき、今度は自分たちを捕まえに来るかもしれない。

しかし、異なる世界で純粋に生きてきたであろうこの少年の目は真っ直ぐだった。

そして、長老は少年の困って泣いている少女が助けを求めてきたんだ!男が命を懸けるには十分過ぎる理由だという言葉にかけた。

「英殿は私どもの話を聞いてどうなさるおつもりですか?もし人間の里に行きたいのであれば、道案内をする一人の亜人が捕まるかもしれませんが、英殿のために案内をさせましょう」

俺は最後にその言葉を聞き、決心した。

「道案内をさせるつもりはありません。俺は人間ですが、あなたたちの力になりたい。間違っているのはあなたたちではありません。間違っているのは、この世界です。もしよかったらあなたたちの旅の仲間に入れてもらえませんか?」

俺の言葉に長老は泣き崩れながらも、頭を下げた。

「人間の少年にまさかそんなことを言ってもらえる日が来るとは!こんな私どもですがよろしくお願いします」

こうして俺は亜人たちの仲間になった。

これは後に亜人の王と呼ばれる少年と亜人たちの出会いの日であった。

この日を境に俺たちは人間とエルフに反旗を翻すこととなる・・・


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